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シャープ社内のニーズを背景に開発された日本発のコミュニケーションサービス「LINC Biz」

シャープ子会社が提供、ビジネスチャットやビデオ会議などの機能を搭載

 シャープの子会社である株式会社AIoTクラウドは28日、クラウドソリューション事業の第1弾として、ビジネスチャットおよびビデオ会議機能を搭載したビジネスコミュニケーションサービス「LINC Biz(リンクビズ)」の提供を開始する。まずは無料で提供し、2020年1月中旬以降、月額350円の有料プランも別途提供するという。

 今回はこのサービスについて、AIoTクラウドの赤羽良介社長と、同社 クラウドソリューション事業部 ソリューション事業統括部長兼クラウド開発部長の音川英之氏に聞いた。

AIoTクラウドの赤羽良介社長(右)と、クラウドソリューション事業部 ソリューション事業統括部長兼クラウド開発部長の音川英之氏(左)

チャットからワンクリックで音声/ビデオ会議に切り替えが可能

 LINC Bizでは、音声会議/ビデオ会議機能と、PCやタブレット、スマートフォンなどを活用して、テキストによるメッセージのやりとりを行うビジネスチャット機能に加え、資料や静止画、動画などの各種資料をドラッグ&ドロップの操作で簡単に共有できる機能を提供する。

ビデオ会議を行っている様子

 またビジネスチャットの議論の途中でも、ワンクリックで音声会議やビデオ会議に移行でき、さらにビジネスチャット上で共有している資料を、音声/ビデオ会議上でも使用しながら、議論を進めることも可能とした。

チャットをしている画面からボタンを押すだけでビデオ会議をはじめられる

 「ビジネスチャットを行っている際に、直接会話して内容を確認したいといったことが発生した場合にも、画面上のボタンを押すだけで、すぐにビデオ会議が行える。これがLINC Bizの最大の特徴になる」(音川事業統括部長)とする。

 さらにホワイトボード機能を用意しているため、会議の参加者はペン機能やテキスト入力機能を活用して、各自の端末から、メモやアイデアを自由に書き込むことができる。会議終了後には、参加者が追記した資料を再びビジネスチャット上で共有することも可能だ。

共有しているファイルには自由に書き込みができ、保存することができる

 そのほか、LINC Bizを利用していない取引先や協力企業との打ち合わせにも利用できるよう、音声会議やビデオ会議ではゲスト招待機能を提供する。この機能では、通知されたURLにアクセスするだけで、Webブラウザを通じて会議に参加できるとのこと。

 また、暗号化通信と、DockerおよびKubernetesによるコンテナ型仮想技術を活用。クラウド上のデータも暗号化して格納することから、ビジネスユースで求められるセキュアなコミュニケーション環境も実現できるとしている。

 「業務コミュニケーションに課題を感じている中小企業やスタートアップ企業、部門ごとの小グループでのコミュニケーション手段として利用できるようにしている」(音川事業統括部長)。

 大手企業などでの大規模活用も可能だが、これからの企業にはすでにビジネスチャットツールやビデオ会議システムが導入されていることから、まずは手軽にツールを導入したいという中小企業などへの導入を図ることになる。

 さらに今後は、シャープのスマートフォン、ダイナブックのPCやタブレットにプレインストールして提供することも検討する。

 赤羽社長は、「AIoTクラウドのミッションは、パートナーのIoT化を支援し、パートナーとともに一緒に社会問題を解決し、真のスマートライフを実現すること。このスマートライフのなかには、家庭やオフィスでの働き方も含まれる。LINC Bizはそこをとらえた製品であり、AIoTで培ったプラットフォーム、社内向け業務システムを内製化することで蓄積したインフラ変革の知見、オープンソースを活用した効率的なシステム開発体制、自社で運営しているデータセンターの組み合わせによって提供することができる新たなサービスになる」とアピールする。

 なおLINC Bizの名称は、「Link」と「Communication」、「Business」を組み合わせたもの。「人と人をつなぐツールであること、コミュニケーションツール同士をつなぐツールであることを意味している。今後、ほかのコミュニケーションツールやストレージサービスなどとの連携も図っていくことになる」(赤羽社長)とした。

AIoTクラウド 代表取締役社長の赤羽良介氏

シャープ社内でのコミュニケーションに対する要望を反映

 実は、LINC Bizは、シャープ社内のニーズを背景に開発した経緯がある。

 「メールでのやりとりでは、断片的な情報になったり、断続的な議論ができない、経緯が追えないという課題があり、それを解決するためにビジネスチャットの可能性に着目した。SlackおよびZoomを試験導入してみたものの、2万人の社員を対象に導入を想定した場合、膨大なコストがかかること、チャットでの議論とビデオ会議とで分断される使い勝手の悪さがネックとなった。そこで約1年前から、自らが使いやすく、コストが低く、そして、ビジネスチャットとビデオ会議がシームレスにつながるツールの開発に取り組んだ」(赤羽社長)。

 このように、シャープ社内で利用し、その際の要望を反映して改良を加え、今回の製品化につなげたという。

 「社内で利用した結果、部門横断のコミュニケーションの活発化と、フラットに形での情報共有が可能になった。また、資料共有による効率化やビデオ会議活用の促進による拠点間移動の削減とそれに伴うコスト削減も実現した」(音川事業統括部長)。

 さらに、LINC Bizでは、ビジネスチャット機能と、各企業内のITシステムや外部クラウドサービスと連携させることで、個別の業務に応じた効率的な拡張機能を提供する計画も明らかにしたが、これらも社内での活用をもとに提供するものだ。

 具体的には、業務報告をチャットで提出できる「業務報告集計」、チャット上での書類回付と承認を行える「ワークフロー」、リアルタイムでの報告、指示が可能な「スタッフ管理業務」、チャットボットで対応する「社内問い合わせの自動応答」を用意する。

 例えばチャットボットの活用では、2018年12月から、コールセンターにおけるテレビに関するチャットでの問い合わせに対して、この仕組みを利用。現在、白物家電製品にまで幅を広げている。

 「チャットボットを利用することで、それに対応する人を減らすことができたほか、24時間対応により、深夜でも問い合わせに対応できるといった効果が生まれている」(音川事業統括部長)。

 チャットボットサービスには自社開発のエンジンを採用しており、ユーザーは、Excelシートを使って、既存のQ&Aをアップロードするだけで利用開始可能。さらに、利用履歴をもとにして改善ポイントを提案し、簡単に追加、修正を行えるという。

 AIoTクラウドでは、チャットボットサービス機能をLINC Biz botとして、月額5万円で提供を開始する。

チャットボットサービスを「LINC Biz bot」として提供

 また同社では、社内で活用した実績をもとに、さらなる拡張機能を提供していくほか、APIの公開により、サードパーティーが拡張機能を提供する仕組みも用意する考えだ。

無料プランでも最大3拠点での接続が可能

 なお、LINC Bizを無料で利用できるフリープランは、最大15チャンネル、ストレージ容量は2GB、同時ビデオ会議数は1で、最大3拠点の接続が可能。「主要なビデオ会議ツールは2拠点までを無償で利用できる場合が多いが、LINC Bizでは、ビデオ会議のメリットを感じられるように3拠点まで無償で利用できるようにした」という。また、機能そのものの制限はないとのこと。

 さらに、2020年1月から追加で用意するスタンダードプランは、1ユーザーあたり月額350円で、チャンネル数の制限はなく、ストレージ容量はユーザーごとに1GBを用意する。また、同時ビデオ会議数も2つ以上に対応している。

 LINC Bizは、ビジネスチャットツールおよびビデオ会議システムとしては後発となるが、「欧米ではチャットツールやビデオ会議はかなり導入されているが、日本では、チャットツールの普及率が23.6%、ビデオ会議が32.6%にとどまっており、これから伸びしろがある。決して出遅れているとは考えていない」(同)としており、2020年度までに1万社への導入を目指す考えだ。