ニュース
日本IBMがRed Hatとのシナジーについて説明、ミドルウェア製品群「IBM Cloud Paks」の解説も
2019年11月28日 06:00
日本アイ・ビー・エム株式会社(以下、日本IBM)は27日、米IBMが買収した米Red Hatとのシナジーについて解説する説明会を開催した。その中では、コンテナに対応したミドルウェア製品群「IBM Cloud Paks」に関する説明も行っている。
日本IBM 取締役専務執行役員 事業開発担当兼ハイブリッド・クラウド・リードの三澤智光氏は、「IBMとRed Hatは、コンテナコンピューティングのリーディングプロバイダーを目指す」とした上で、「Red HatはOpenShiftによって、アプリケーションをあらゆる場所で動かせる環境を提供し、ハイブリッドクラウド環境を実現する。Red HatにとってIBMは重要なパートナーだが、その1社にすぎないという位置づけは変わらない」と話す。
一方で「IBMは、パブリッククラウドやハイブリッドクラウドのクラウドネイティブエンジンとして、OpenShiftを活用することにコミットし、デジタルトランスフォーメーション(DX)を支援できる。そして、オープンソースコミュニティの中に入ることで、よりよいサービスの提供や品質の向上を図ることもできる。これもRed Hatの買収において重要な意味がある」などと述べた。
さらに三澤氏は、「ITはもともと、ビジネスを支えるという役割だったが、今はテクノロジーでビジネスそのものを作る時代になっている。同時にソフトウェアが重要になり、その比重が高まっているが、優れたソフトウェアは、いまやオープンソースからしか生まれない。これを一般の企業にも使いやすい環境として提供することでDXを支援するのが、Red Hatの買収につながっている」とも説明。
またコンテナについて、「ソフトウェアの実行環境としてコンテナテクノロジーが注目を集めており、俊敏性、改変性が高く、ベンダーロックインが起こりにくいというメリットが生まれている。Red Hatの買収はその点でも重要である」とする。
このように、Red Hatの買収はさまざまな観点で意味を持つというのだ。
ミドルウェアをクラウドネイティブ化、マイクロサービス化できるIBM Cloud Paks
IBM Cloud Paksについては、「既存ワークロードのモダナイゼーションを手伝う上で重要な役割を果たすのがIBM Cloud Paks。既存のIBMのミドルウェア、オープンソースのミドルウェアをクラウドネイティブ化、マイクロサービス化でき、Red Hatの買収の効果を100%発揮することにつながる」と述べた。
そのIBM Cloud Paksは、ソフトウェアポートフォリオをクラウドネイティブに刷新し、Red Hat OpenShift上で動作するように最適化した統合済みソリューション。
共通のオペレーティングモデルと、ID管理、セキュリティ、モニタリング、ロギングなどの共通サービスを、IBMが保証する形で提供。使用量に基づく従量課金モデルも用意する予定となっている。
これを利用するメリットは、統合したダッシュボードによってクラウド全体の可視性と管理を向上させられる点。さらに、ミッションクリティカルなアプリケーションを一度構築すれば、Amazon Web Services(AWS)、Microsoft Azure、Google Cloud Platform(GCP)、Alibaba、IBM Cloudなどの主要なパブリッククラウド、あるいはプライベートクラウド上でアプリケーションを実行できるようになるという。
同社では、開発時間を最大84%、運用経費を最大75%削減できるとしている。
具体的なラインアップとして、データの収集、編成、解析を行う「Cloud Pak for Data」、アプリケーションのビルド、デプロイ、実行を行う「Cloud Pak for Applications」、アプリケーションやデータ、クラウドサービス、APIの統合を行う「Cloud Pak for Integration」などを提供。
さらに、ビジネスプロセスや意思決定、コンテンツの変革を担う「Cloud Pak for Automation」、マルチクラウドの可視性やガバナンス、自動化を行う「Cloud Pak for Multicloud Management」に加えて、新たに追加したセキュリティのデータ、ツール、ワークフローを結びつける「Cloud Pak for Security」も用意されている。
これらにより、ハードウェアからアプリケーションまでを保護し、クラウド上のミッションクリティカルなアプリケーションの迅速な移行、統合、モダナイズを支援することができるとした。
また、今後もCloud Pakの製品群は広がっていくことになり、同時にすでに発表した6つの製品も継続的にアップデートされるという。
日本IBM 常務執行役員 クラウド&コグニティブ・ソフトウェア事業本部長の伊藤昇氏は、「企業における情報システムのうち、20%しかクラウドに移行できていない。今まで構築されてきたITシステムが重荷になっており、これをいかにモダナイゼーションするかといった問い合わせが増えている。これが日本の企業の実態であり、モダナイゼーションを支援できるのが、IBM Cloud Paksとなる」と前置き。
「IBMは2年半以上をかけて、戦略的に100以上のソフトをコンテナ化しており、OpenShiftに最適化させた。Kubernetesベースのコンテナプラットフォームであり、IBM Cloudに対して、すぐにデプロイが可能になる。オンプレミスからクラウドまで一貫性がある管理を実現できるのが特徴だ」と説明した。
加えて、「アプリケーション、データ、AIサービスが完全にモジュール化され、利用が容易であること、IBMが認定済みのソフトウェアをフルスタックでサポートし、継続的なセキュリティアップデートが提供され、コンプライアンス対応も可能になることもメリット。さらに、OpenShiftの特長を生かして、オンプレミス、プライベートクラウド、パブリッククラウド、統合型システムのどこでも稼働させることができる」などとしている。
IBM Cloud Pak for Securityの特徴
新たに追加したIBM Cloud Pak for Securityについては、日本IBM 執行役員 IBMセキュリティー事業本部長の纐纈昌嗣氏が説明。「IBM Cloud Pak for Securityは、従来のIBM Security Connectを、OpenShiftをプラットフォームとし、コンテナテクノロジーを活用して製品化したものである」とする。
その特徴については、「IBMのユーザーでは、平均で65個のセキュリティツールを活用していることからもわかるように、セキュリティの分断化が進んでおり、管理が煩雑化している。IBM Cloud Pak for Securityは、セキュリティデータは元の場所に置いたまま、既存のセキュリティツールへの統合アクセスを実現し、脅威インサイトを効率的に獲得できる。また具体的なアクションに落とし込み、対応を自動化するインシデントレスポンスソリューションを実現可能だ」と説明した。
このほか、「調査のためのフェデレーション検索が可能なData Explorerと、インシデント対応のケース管理を半自動化できるResilient SOAR Platformによって、ひとつのクエリで複数のデータソースにわたって調査を実行し、マルチクラウド環境においても容易に管理ができるようになる。効率性は8割も向上する」とアピールしている。
日本IBMでは、IBM Cloud Paksの販売強化に向けて、10月1日付けで顧客向け支援体制を変更。営業部門では、セールス、テクニカルセールス、チャネルセールスを統合したほか、GBSおよびGTSの統合により、ソリューション開発やデリバリー支援を強化した。
また、個々の顧客向けにDXやモダナイゼーションを提案するため、顧客ごとにアーキテクトを配置。プリセールスから提案、ソリューション開発、デリバリー支援まで、One IBMとしてITモダナイゼーションを支援することになるという。
さらに、パートナー向け組織のなかに、デジタルイノベーション事業開発チームを新設。IBM Cloud PaksをベースにしたITモダナイゼーション プラットフォームをパートナーに提供する。
また、パートナーがDXスキルを取得するための「Cloud道場」を開催するほか、定期的に、クラウド、DX、コンテナ技術のセミナーや、システムインテグレータ向けのDXセミナーも開催していく。
なお、顧客向けプログラムとしては「Try Cloud Paks」が発表された。勉強会やコンサルテーションなどを組み合わせ、コンテナやKubernetesを活用した新たなアプリ開発のやり方やクラウド環境を試行できるようにする。
12月には、Try Cloud Paksにさらに付加価値をつけたApplication Modernization with Cloud Paksを提供する予定だという。
そのほか、利用期間に応じて選択可能なライセンス形態として、Committed Term Licensesを発表。1年以上の期間で、ソフトウェアライセンスとソフトウェアサブスクリプション、サポートを包含して提供。導入費用の低下を可能にするほか、永久ライセンスに比べて高い柔軟性を提供できるとしている。