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シスコが2020年度戦略と中長期戦略を発表――、日本でも「カントリーデジタイゼーション」を展開

 シスコシステムズ合同会社(以下、シスコ)は8日、2020年度の国内事業戦略について説明会を開催した。

 2019年度には、「日本のお客さま、パートナー、社会とともにデジタルイノベーションを共創する」ことを重点戦略としていたが、2020年度は「次世代デジタルインフラストラクチャと日本の持続的成長との架け橋となることを目指す」と、同社 代表執行役員社長のデイヴ・ウェスト氏は語った。

シスコ 代表執行役員社長 デイヴ・ウェスト氏

 まずウェスト氏は、戦略を策定するにあたり「市場トレンドと顧客の課題を理解する必要がある」と述べ、高齢化社会と人口減少、地政学的懸念、デジタルトランスフォーメーション(DX)といった、市場トレンドを考慮した戦略の重要性を主張。その上で、顧客が主な課題として挙げているITインフラの複雑化や働き方改革、サイバーセキュリティに対応していかなくてはならないとした。

市場トレンドと顧客の課題

 冒頭に挙げた「次世代デジタルインフラストラクチャと日本の持続的成長との架け橋となる」という同社の戦略は、こうしたトレンドや課題を考慮した上で策定したものだ。これにより、「顧客の競争力が向上してイノベーションが促進され、さらには市場全体の成長にもつながる」とウェスト氏は話す。

 この戦略を実行するにあたっては、3つの柱があるという。まずひとつ目は、顧客やパートナーとの関係性を深めることだ。情報通信事業やエンタープライズ事業、公共事業など、顧客のセグメント化を進め、それぞれのセグメントに特化した事業モデルを支援していく。

 2点目は、日本のデジタル化を促進すること。シスコは2020年東京五輪のオフィシャルパートナーとなっており、同イベントをネットワーク面で支える役目を担っている。ウェスト氏は「東京2020は、史上、最もデジタル化されたオリンピックになる」と前置き。

 これを機に「ソサエティ5.0」として、ツーリズム、トラベル&トランスポーテーション(TT&T)、インダストリー4.0、デジタルワークプレイス、パブリックセーフティといった分野も支援する。さらに、5Gの分野でもリーダーシップを発揮し「東京2020以降も日本の成長に貢献していく」(ウェスト氏)と述べている。

 3点目は、ライフサイクル全体のエクスペリエンスを向上させること。シスコの製品を顧客により理解してもらい、製品の価値を最大限活用してもらうよう、「エンドツーエンドのカスタマーエクスペリエンスを支援する」という。

 これらすべてを、「統合されたマルチドメインアーキテクチャとして提供する」(ウェスト氏)――これがシスコの考えだ。

2020年度の重点戦略

中長期的戦略の要は「カントリーデジタイゼーション」

 2020年度の戦略に引き続き、同社の中長期戦略についてはシスコ 代表執行役員会長の鈴木和洋氏が説明した。同氏によると、中長期的な成長戦略は、グローバルで展開している「カントリーデジタイゼーションアクセラレーション」というイニシアチブの下で進めるという。

シスコ 代表執行役員会長 鈴木和洋氏

 この取り組みは、政府、教育機関、民間企業と協業しながら、デジタイゼーションによってシスコが事業展開する国の課題解決や経済成長に積極的に関与していくプログラムだ。取り組むテーマは各国で異なるが、本年度より日本でもこの取り組みを始める。

 国内でのカントリーデジタイゼーションに向けては、2018年に内閣府が発表した「未来投資戦略 2018」を元に注力分野を策定。それが、2020年度のデジタル化戦略でも支援分野として掲げていた「TT&T」「インダストリー4.0」「デジタルワークプレイス」「パブリックセーフティ」の4つとなる。

日本のカントリーデジタイゼーション

 TT&Tについては、「日本政府では、2020年に4000万人のインバウンド観光客と8兆円ビジネス、2030年に6000万人のインバウンド観光客と15兆円ビジネスを目指すとしており、この目標達成を支援したい」と鈴木氏。この分野では、すでに京都府と観光復興や安全な街づくりといった面で協力しているほか、三井不動産と東京日本橋での防災高度化に向けた取り組みを進めるといった実績があるという。

 インダストリー4.0については、コネクテッドマシンやスマートファクトリー、IoTリファレンスアーキテクチャの構築を推進する。この分野でも、ファナックと工場の自動化に向け取り組んでいるほか、THKには予防保守などのサービスをすでに展開しているとした。

 デジタルワークプレイスに関しては、「大企業では働き方改革が進んでいるものの、中堅中小企業にまで浸透しないと真の働き方改革は実現しない」と鈴木氏。そのため、中堅中小企業の働き方改革を推進するソリューションとして、2018年にはソニーのカメラを採用したビデオ会議ソリューションを用意、教育機関や公共機関への販売活動を進めているほか、10月7日には、リコーの複合機とシスコのネットワーク機器を連携させるソリューションを共同開発したことも発表している。

 パブリックセーフティの分野では、内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)と協力し、脅威情報を共有する仕組みを構築したほか、セキュリティ人材の育成を進めるプログラムも展開していくという。

 こうしたこれまでの活動を、カントリーデジタイゼーション戦略の下、さらに加速させていく。「国家の成長戦略に貢献しつつ、新たな市場を作り出すことで、国民とともにシスコも成長を目指す」と鈴木氏は述べている。