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日本マイクロソフト、教育現場におけるテクノロジーの役割とヒューマンスキルの重要性を解説

 日本マイクロソフト株式会社は13日、同社の教育分野における取り組みについて記者説明会を開催した。

 来日中の米Microsoft ワールドワイドエデュケーション担当 バイスプレジデント アンソニー・サルシト(Anthony Salcito)氏は、現在デジタルトランスフォーメーション(DX)の真っただ中にいるにも関わらず、「重要なのは人間的スキルで、それこそ学校で学ぶべきことだ」と述べ、教育における人間性の重要度を強調した。

米Microsoft ワールドワイドエデュケーション担当 バイスプレジデント アンソニー・サルシト氏

企業はヒューマンスキルを求めている

 サルシト氏がこのように主張しているのは、企業がヒューマンスキルを求めているためだ。経済界は、これまでのように製造が中心だった世界から、人間同士がコラボレーションして創造力や問題解決のスキルを使い、ソリューションを構築していく世界に移行している。つまり、これらの社会的なスキルがあることが、仕事での成功につながるという。

 「人間同士が良い関係を築くためのスキルが最も重要だ。そのスキルによってリーダーシップが生まれ、問題解決にもつながる。テクノロジーが中心ではなく、人が中心であるというマインドにシフトしていかなくてはならない」(サルシト氏)。

 同時にサルシト氏は、「デジタルテクノロジーが普及したからといって教育者の需要が減ることはない。教育はよりパーソナライズされていくため、今こそ教育者の役目が重要になる」と話す。

 「教育で大切なのは、学んでいることと未来につながりがあること。子どもたちが学習の意味を見失わないよう、今学んでいることが世界を変えることにつながると感じてもらえるようにすること。そして、幸福感を感じてもらうようにすることが重要だ」とも述べている。

 ここでサルシト氏が“幸福感”を取り上げたのには意味がある。Microsoftが調査したところ、子どもの幸福度と成績に関連性があったためだ。サルシト氏によると、質の高い教育制度で有名なフィンランドでは、教育において子どもたちが幸福であることを最優先とした取り組みを進めているという。

教育分野の可能性を高めている具体例を紹介

 こうして人間的な要素を強調するサルシト氏だが、Microsoftとしてできることは、やはり技術の提供だ。そこでサルシト氏は、これまでに同社が買収してきたさまざまな企業やサービスで、教育分野の可能性を高めている具体例を紹介した。

Microsoftが買収し、教育現場で活用しているサービス

 まずそのひとつは、2014年に買収したゲームの「Minecraft」だ。Microsoftでは、同ゲームの教育バージョンを提供しており、「教育現場にMinecraftを取り入れることで、遊びながら問題解決し、創造し、仲間とコラボレーションできる」とサルシト氏は話す。

 また、2016年にはビジネス向けSNSのLinkedInも買収している。同サービスにより、「学生が将来職場で必要となるスキルを把握し、就職活動に活用できる」とサルシト氏は説明する。

 さらに同社は、2018年にソフトウェア開発プラットフォームのGitHubと、ソーシャル学習プラットフォームのFlipgridを買収している。GitHubについてサルシト氏は、「トランスフォーメーションに必要なテクノロジーの力を活用するためだ」と説明。一方のFlipgridについては、「学生が学んだことを共有し、意見を自由に書き込むことができる。教室で意見が言えなくても、こうした場を提供することで多くの意見が集まる」と述べた。

日本においてもさまざまな事例が存在

 国内では、すでに教育現場でマイクロソフトの技術が採用されたさまざまな事例が存在する。

 例えば佐賀県多久市では、小中一貫校3校にて学習系および校務系のすべてをパブリッククラウドで構築。指導方法や教材を教師が共有できる仕組みを整えた。また、東海大学では、ソーラーカープロジェクト用のハイパフォーマンスコンピューティング環境としてMicrosoft Azureを採用。空気の渦を消すために200ケースもの解析を実施し、空気抵抗を33%以上低減させたという。

佐賀県多久市の事例
東海大学の事例

 さらに、近畿大学の水産研究所では、養殖マダイの稚魚の選別にマイクロソフトの画像解析と機械学習を活用。人手による作業の負担軽減と効率アップにより、第一次産業の働き方改革を目指している。

近畿大学の事例

 日本マイクロソフト 業務執行役員 パブリックセクター事業本部 文教営業統括本部 統括本部長の中井陽子氏は、「教育機関の働き方改革においては、クラウドが画期的ソリューションとなる。この分野には今後も注力していきたい」と話す。

 また、研究機関や大学でのクラウド採用も引き続き推進していくほか、最終的には学び方改革として、「ITを活用したコラボレーションやコミュニケーションスキルの向上を目指し、日本の人材開発に貢献したい」と述べた。

日本マイクロソフト 業務執行役員 パブリックセクター事業本部 文教営業統括本部 統括本部長 中井陽子氏