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DX・マルチクラウドにより機密データの漏えいリスクが高まる、まずはデータの暗号化対策を~タレスジャパンが国内事業戦略を説明

 タレスジャパン株式会社は21日、セキュリティ部門の国内事業戦略に関する説明会を開催した。説明会では日本の機密情報暗号化の動向に関する調査結果を紹介し、日本の企業はデジタルトランスフォーメーション(DX)への需要が高まる中で、クラウドの複雑化に苦しんでおり、ほぼ半数の組織がデータ侵害を経験しているものの、データの暗号化を適用している組織は依然として少ないままだとした。

 仏Thales Group(タレスグループ)は、交通システム、民間航空、宇宙、防衛、サイバーセキュリティの各事業分野におけるソリューションを展開する企業。2019年4月には、ICカードやSIMカード、金融・政府向けデジタルセキュリティソリューションなどを手がけるオランダのGemalto(ジェムアルト)を買収し、ジェムアルトの事業をタレスグループのデジタル・アイデンティティ&セキュリティ事業として統合した。

 タレス・ジャパン代表取締役社長のシリル・デュポン氏は、タレスは日本に進出してから49年目になり、これまでのビジネスモデルは防衛が中心となっていたが、ジェムアルトの買収によりデジタルアイデンティティ&セキュリティが中心になる予定だとした。

タレス・ジャパン代表取締役社長のシリル・デュポン氏
タレスジャパンの概要

 タレスグループのクラウドプロテクション&ライセンシング(CPL)事業本部本部長を務めるジェムアルト株式会社の中村久春氏は、デジタル・アイデンティティとデータ保護の2つのソリューションをワンストップで提供できるのが、タレスの特徴だと説明。暗号化、鍵管理および保護、IDおよびアクセス管理の各ソリューションを、オンプレミスだけでなくクラウド上にも展開することで、企業が保護すべきものを守っていくとした。

 また、企業の現状としては、オンプレミスや複数のクラウドなどでデータセキュリティが分断化されているが、鍵やポリシーを集中管理することで、一元化された戦略的なデータセキュリティを実現することが、目指すべきゴールだとした。

タレスグループのCPL事業本部本部長を務めるジェムアルトの中村久春氏
CPLのソリューションポートフォリオ

 タレスジャパンの畑瀬宏一氏は、機密情報暗号化の動向に関する調査結果「2019 Thales Data Threat Report - 日本版」を紹介。調査は、ITセキュリティ部門の上級経営幹部1200人以上を対象に全世界で実施したもので、日本の対象者は100人。

 調査では、企業のDXへの取り組みが進む中、92%の企業がDXテクノロジーで機密データを使用していると回答しており、58%が自社のDX導入環境は安全だと考えているが、一方でデータを暗号化しているのは33%にとどまっていると指摘。また、24%がデータへの驚異に対する企業の脆弱性は「きわめて脆弱」「非常に脆弱」だと感じているとした。

 実際の被害としても、45%が過去にデータ漏えいの経験があり、21%は昨年にデータ漏えいが発生していると回答しており、データ漏えいが複数回発生したという回答も12%に上っている。

 また、IaaSやSaaS、PaaSなど複数のクラウドサービスを利用することが企業にとっては当たり前となってきており、マルチクラウドの利用が進むほどリスクは高まると指摘。こうした新たなIT環境を保護するには、新たなデータセキュリティ手法が必要だとして、最初に行うべきはデータの暗号化だと呼びかけた。

タレスジャパンの畑瀬宏一氏
92%がDXで機密データを使用
45%が過去にデータ漏えいの経験あり
DXには暗号化が必須だと訴えた

 キヤノンマーケティングジャパン株式会社マーケティング統括部門セキュリティソリューション事業企画本部本部長の山本昇氏は、キヤノンが手がけるセキュリティビジネスの中でも、データセキュリティは重要な位置付けであり、暗号化の導入が進んでいないという調査結果に対して、データに鍵をかけておくことが重要だということを市場にアピールしていきたいと語った。

 キヤノンではタレスの「Vormetric」を販売しており、ファイルサーバーの暗号化、トークナイゼーション、データベースの暗号化、他社暗号化製品の鍵管理など、さまざまな暗号化へのニーズに応えられるソリューションがVormetricだと説明。暗号化/鍵管理市場の分野で、2018年のシェア3.5%を2022年には10%に伸ばしていきたいとした。

キヤノンマーケティングジャパン株式会社マーケティング統括部門セキュリティソリューション事業企画本部本部長の山本昇氏