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Box、クラウドストレージと連携したカスタムアプリを開発を支援する「Box Platform」

 株式会社Box Japanは12日、Boxと連携したカスタムアプリケーションを開発する「Box Platform」の国内提供を、4月1日から開始すると発表した。

 Box Japanの古市克典社長は、「エンタープライズコンテンツ管理(ECM)に関しては、日本の企業の多くがオンプレミス環境で活用し、独自にカスタマイズして現場に最適化させていた。しかし、開発スピードが早く低コストであるという、グローバルスタンダードのクラウドのメリットを享受できない点が課題とされていた」と指摘。

 その上で、「Box Platformにより迅速にカスタマイズアプリが開発でき、ベストオブブリードの観点から、さまざまなクラウドサービスを活用することができる。グループウェア、電子署名/印鑑、文書管理、社内ポータル、複合機/スキャナ、ワークフロー、コミュニケーション、遠隔会議、メールなど、日本では140以上のサービスと連携。機能ごとに自在にサービスを組み合わせでき、業務に最適化したカスタマイズが可能になる」と、新サービスを紹介した。

Box Japan 代表取締役社長の古市克典氏

 このBox Platformでは、Box向けのカスタムアプリを開発するために必要なBox APIとツールを提供。Boxを活用したクラウドコンテンツ管理(CCM)を導入できるのが特徴だ。米国では2015年から提供を開始しており、すでに、全世界で10万人以上の開発者が使用しているという。

 Box Platformにより、すべてのビジネス上のやり取りを単一のセキュアなコンテンツプラットフォームに集約でき、コンテンツへの安全なアクセスとコンテンツの共有、コラボレーションが可能になると。

 また、Boxをビジネス全体のコンテンツ管理プラットフォームとして使用できるほか、APIを利用することで、Boxをほかのアプリやシステムに統合することも可能。さらに、Boxのコンテンツ、ユーザー、設定をプログラムで管理するスクリプトを実行したり、カスタムのワークフローやプロセスの一環としてBox上のコンテンツとのやり取りを行ったりすることも可能になるとした。

 米国においては、ビジネスアプリケーションやCRM、HCM、ERPなど各種システムとの統合による業務の革新のほか、ローン申請や口座開設、保険請求、建設プロジェクト管理、貿易文書管理をはじめとするB2Bアプリケーション、研修ポータルサイトやマニュアル管理などの社員向けアプリ、資産運用コンサルティング、納税申告代行、医療ポータルといったクラウドサービスなどに活用されているという。

 なおBoxでは、Javascriptライブラリを使用することで、ドキュメント、画像、ビデオ、3Dモデル、DICOMなど、70種類以上のさまざまなファイルタイプを表示でき、ファイルにはコメントや注釈をファイルに追加できるため、メールや添付ファイルの必要がないアピールした。

 また、Box Platformでのアプリ開発を促進するために、APIやSDK、UIライブラリ、ガイド、サンプルコードも用意されている。

アプリ側はロジックと画面だけを開発すればよい

 Box Japan Box Platform担当部長の浅見顕祐氏は、「Boxアカウントを持たないユーザーも、アプリ経由でBoxにアクセスが可能になるため、顧客やパートナー、テンポラリスタッフとの情報連携が可能になる。さらに、Boxが持つ強力なコンテンツ管理を簡単にカスタムアプリに組み込めるようになる。Restful APIによってさまざまな機能と連携でき、サービスアカウントまたはApp Userを使って、API経由でBoxにアクセスできるほか、Box SDKを利用し、さまざまな言語を利用した開発が可能である。また、Box UI Elementを活用してUI部品をカスタムアプリに組み込めるのみならず、Box Mobile UI Kitにより、モバイルネイティブのアプリ開発にも適した環境を提供できる。クイックなアプリケーション開発を可能にできる」とした。

Box Japan Box Platform担当部長の浅見顕祐氏

 このほか、Box Japan 執行役員 アライアンス・事業開発部長の安達徹也氏は、「デジタルビジネスとデジタルワークプレイスを連携させ、これまでは不可能だと考えられていた非構造化データの一元管理がBox Platformによって実現できる」と主張。さらに浅見氏は、「ファイル共有のCCP(コンテンツ・コラボレーション・プラットフォーム)と、コンテンツ管理のCSP(コンテンツ・サービス・プラットフォーム)を単一サービスで提供できる企業は、Boxしかない。競合製品はない」との見解を示している。

Box Japan 執行役員 アライアンス・事業開発部長の安達徹也氏

 Box Platformのライセンスは、月間APIコール数、月間データ転送量、ストレージ容量、月間アクティブユーザー数による新たな課金体系を採用。最小ライセンスは、Box Platform Enterpriseの1ライセンスからで、17万5000回の月間APIコール、125GBの月間データ転送、125GBのストレージ、100の月間アクティブユーザーの利用が可能になる。Box Japanの代理店を通じて販売する。

課金体系および国内販売について

国内での先行導入事例を紹介

 Box Platformを先行導入したエムスリーデジタルコミュニケーションズは、ライブ配信を軸としたメディアカルマーケティング向けのソリューションプロバイダーで、製薬メーカーや医療機器メーカー、医療機関、医療従事者向けに事業を展開している。

 今回、Box Platformを活用して、MR(メディカル・レプリゼンタティブ、営業担当)向けのアプリケーションを新たに開発。Boxで管理されているファイルを使って、遠隔地にいる医師などに対し、リモートでプレゼンテーションを行えるサービスを提供するという。

 エムスリーデジタルコミュニケーションズ 事業開発室アライアンス推進の倉内彰氏は、「MRの数が減少する一方、病院の8割がMR訪問規制を導入しており、医師との面談時間を取ることが難しくなっている。また、厚生労働省は、MRの業務記録を残すように指導している」との現状に触れ、「離れた場所から医師と接続して、プレゼンテーションを行うことが求められている」とする。

 すでにデジタルによって情報を提供する仕組みはあるというが、「従来は、ローカルのPCに保存することが必要だったり、利用実態が把握できなかったり、ソフトウェアをインストールする必要があった」と倉内氏。

 そして、「Box Platformを利用することで、Boxのファイルデータをそのまま利用でき、ローカルPCにデータを保存しないで済む。医師側はアカウントがなくても利用でき、Webブラウザで閲覧できるというメリットもある。さらに、ファイルへのアクセスログを残すことができる」と述べ、効果的なソリューションだと説明していた。

 なお「将来的には、MRと医師の対話データを記録してAIで音声解析を行い、MRへの評価につなげるほか、ウェブ講演会でのデータ活用や、医師向けサービスの強化を図りたい」と語った。

エムスリーデジタルコミュニケーションズ 事業開発室アライアンス推進の倉内彰氏
エムスリーデジタルコミュニケーションズが開発したMR向けアプリの画面

 そのほか、旭化成ホームズおよびもう1社が、Box Platformを先行導入しているという。旭化成ホームズでは、AJSとの連携で、Box Platformを利用して、ヘーベルハウスに関連する図面面など、機密性の高い文書を管理するシステムを開発。業務効率の向上を促進し、働き方改革を推進するという。

 もう1社は企業名を公表しなかったが、Box Platformを利用した自社会員サイトで、電子締結した契約書などの機密性の高い文書を含むコンテンツを顧客と共有することで、カスタマーエクスペリエンスと利便性の向上を図るという。

国内での先行導入事例

2020年度の事業戦略、5つの重点目標を掲げる

 一方、Box Japanの古市克典社長は、2019年2月からスタートした同社2020年度の事業戦略について説明した。

 古市社長は、「CCM」および「ベストオブブリード」を事業戦略のコンセプトに掲げ、「Box Platform」「ワークフロー」「メタデータ」「セキュリティ&ガバナンス」「より完璧なシステム安定性」の5つに力を注ぐ方針を明らかにした。

2020年度の注力分野

 「個人の生産性向上にとどまらず、チームコラボレーション、コラボラティブビジネスプロセス、インテリジェントエンタープライズという形で、CCMの価値を高め、デジタル変革を支援する。これらをベストオブブリードのパートナーとともに加速していくことになる」と述べた。

 また、「業界のリーダー企業への導入により関連企業へと伝搬させることに加え、東京と大阪のデータセンターを通じてBoxのサービスが提供できるようになったことを受け、官公庁や自治体、金融、病院などの新市場を開拓する。さらに、他社とは異なる、パートナーを通じた販売が100%である体制を生かし、パートナーとの協業によるベストオブブリードの提供で、顧客ベースの拡大を目指す」とした。

 現在、Boxの全世界での顧客数は9万2000社以上となっており、フォーチュン500企業の70%に導入されている。また、日本では4200社以上に導入。日経225の44%の企業、「攻めのIT経営銘柄 2018」の75%を占めているという。

 「日本においては、上場企業のほか、早稲田大学や慶応義塾大学などへの導入実績もある。また、一括導入が多いという特徴があるほか、セキュリティを重視する傾向がある」とした。

 「ECMは全世界で約1兆円の市場規模があり、利用している企業の3社に1社がクラウドに移行しようとしている。Boxの前には、CCMという巨大なマーケットが広がろうとしている。日本でも、まだまだ成長の余地がある」(Boxの古市社長)。

パートナーとともに、CCMへの顧客のステップアップを支援するという