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富士通、崩落前の石材位置を特定する画像処理技術の実証実験を熊本城で実施

 富士通株式会社と株式会社富士通アドバンストエンジニアリングは11日、2016年4月発生の熊本地震で崩落した熊本城飯田丸五階櫓において、画像処理技術を用いた石垣石材の崩落前の位置を特定する実証実験を実施したと発表した。2018年11月から約1カ月間行われ、80%以上の精度を実現するとともに、作業時間を大幅に短縮できることを確認したという。

 熊本城は、2016年4月に発生した熊本地震で大きな被害を受けたが、中でも石垣は最も被害が大きく、約3万個の石材が崩落している。その修復にあたっては、従来、図面化した崩落石材と、崩落前に撮影された石垣の画像を専門家が目視で比較し、崩落した石材の位置特定を行っていたため、膨大な時間を要してしまっていたという。

崩落後の熊本城飯田丸五階櫓(熊本城総合事務所提供)

 そこで富士通と富士通アドバンストエンジニアリングは、熊本城復旧現場の作業時間を短縮すべく、熊本市 経済観光局 熊本城調査研究センターが保有する崩落前の石垣画像と、崩落後に撮影した石材画像を活用し、石材の崩落前の正確な位置を把握可能な石材位置特定システムを開発。2018年11月5日~同年12月14日まで、実証実験を行った。

 このシステムは、富士通研究所が開発した高速部分画像検索技術と、富士通アドバンストエンジニアリングが富士通研究所と共同開発した画像最適化技術をベースとする。

 具体的には、画像から石材の部分のみの切り出しや、石材や石垣の表面の明るさなどの特徴を際立たせる画像最適化技術を適用して検索の精度を高め、その後、1つの石材全体もしくは部分的に一致する画像を抽出する高速部分画像検索技術によって、崩落後の石材が崩落前の石垣のどの位置のものか、より類似度の高い画像を特定する一連の流れを繰り返し行い、精度の向上および検索時間の短縮に取り組んだ。

実証実験のイメージ

 実証実験は、実際に崩落があった熊本城飯田丸五階櫓の石垣において、すでに熊本市が特定した123個の石材を対象に行われ、最終的には1日で101個の石材の正確な位置を特定し、82.1%の高い精度が得られたとのこと。あわせて、作業時間も大幅に削減できることが確認できたとした。

 富士通と富士通アドバンストエンジニアリングは、熊本城復旧作業の効率化支援に向けて。この技術の精度をさらに高めるとともに、ほかの文化財復旧支援への適用も進める考えで、文化財復旧支援ソリューションとして2019年度中の商品化を目指すとしている。