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JINS、デジタルの良さをフル活用したリアル店舗をオープン AIによるメガネの“似合い度判定”サービスも提供
2019年1月28日 06:00
1月25日、JINSはメガネのショールーム型店舗「JINS BRAIN Lab.エキュート上野店」をオープンした。
通常のJINSの店舗には欠かせないメガネの在庫、フレームにレンズをセットする際に必要な加工機がないが、その代わりに店内には、AIによるメガネの似合い度判定サービス「JINS BRAIN」を搭載した、通称“BRAINミラー”を店内に3台設置。来店者はその判定結果などを踏まえ、気に入ったメガネを選ぶ。さらに店内で視力度数を測定してもらった後は、店舗ではなく、アプリ経由で商品を注文する。
支払いもアプリ経由で行い、メガネは後日、自分が指定した場所に配送してもらう仕組みとなっている。この購入ステップによって、店舗には加工機や在庫が不要となった。
JINS BRAIN Lab.事業推進責任者の松浦亮介氏は、「この店舗をオープンしたことで売上が爆発的に伸びるようになるとは考えていない。が、在庫レスかつ加工機を置く必要がないことから、省スペース、少人数による運営が可能。ROIの高い店舗となる可能性がある」と説明している。
上野駅構内にオープンした新店舗
JINSの新店舗は、上野駅構内にある店舗などが並ぶエキュートの中にある。店舗面積は9.6坪と小型店舗。常時、2~3人のスタッフで運営していく計画だ。
店内に3台のJINS BRAINを搭載したミラーを設置したことで、「AIを活用した店舗」という点がセールスポイントとして挙がっている。確かにその点もセールスポイントだが、この店舗の最大の特色は、「ECビジネスが拡大する時代のリアル店舗のあり方」を追求した点にあるのではないか。
この店舗を出す以前、JINSでは2016年からオンラインショップでAIを活用したメガネレコメンドサービス「JINS BRAIN」を提供していた。面白いのは、このサービスが同社のECサイト運営チームによって立ち上がったサービスだということだ。
オンラインショップではメガネをかけて試すことができない。そこで利用者は自分の写真をアップロードし、似合うメガネを探すことができる。バーチャルな世界において、自らに似合うメガネを探し出せる、まさにECの発想で生まれたサービスだ。
AIのベースとなっている評価データは、当初は3000人にスタッフと6000人の利用者によるものだったが、年月を重ねたことで30万人の利用者の評価へと成長。精度も向上しているという。
しかし残念ながら、バーチャルな世界のメガネ販売には限界もある。視力矯正目的でメガネをかける場合、最新の視力を測らなければならないが、現時点ではオンラインで視力を測ることはできない。
さらにメガネの場合、素材などのパーツの具合によって、かけ心地が異なる。顔の大きさも人それぞれなので、自分にフィットしたかけ心地となるよう店舗で調整してもらうことも必要だ。
松浦氏は調査や店舗を訪れる顧客の声として、「オンラインでメガネを買うことができることは便利という人であっても、やはり実際にかけて試したいという声は根強い。当社の場合、すべてオンラインにシフトすることはほぼ不可能ではないかと思います」とリアル店舗の必要性を説明する。
新店舗はこうした現状を受けてJINS BRAINを運営してきたECチーム、店舗運営スタッフ、経営企画室など複数の部署のスタッフが横断的にかかわって開発した。ECのメリット、実店舗のメリットを生かすことで、これまでにないショールーム型店舗として運営する。
実際にメガネをかけて試すことができる、視力検査を行うことができるリアル店舗の強みを生かしながら、ECを利用する際のユーザーメリットである、「欲しい場所で受け取ることができる」、「自分の都合の良いタイミングで買い物ができる」を追求。
さらに店舗を運営するJINSにとってのメリットとなる、「在庫レス店舗」、「似合うメガネをAIによるアドバイスで行うことで接客スタッフ数の削減」、「アプリに選んだ目メガネ、視力検査の結果などを記録することで、事務作業の軽減」なども実現することができる。
また、駅構内という場所柄、「JINSに行くことを目的とされたお客さまばかりでなく、偶然通りかかってメガネを試すといった、『ついで購入』という新しい需要を喚起できるのではないか」と新たな顧客掘り起こしにもつながることに期待しているという。
当初は、3か月現在のスタイルで運営し、業績や利用者の声を見ながら、今後の運営方針を決定していく計画だ。