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日本マイクロソフトはクラウドとモダンPCへの移行を推進――、2019年はIT環境最新化の必要性をあらためてアピール

 日本マイクロソフト株式会社は15日、2019年度上半期(2018年7月~12月)の振り返りと、2019年の事業展望を説明する記者説明会を開催。代表取締役社長の平野拓也氏は、「日本法人の業績について具体的にお話しすることはできないが、本社から飛んでくるチャレンジングな予算を無事達成することができた」と述べ、上半期の業績が好調であることを明らかにした。

 その上で2019年の展望として、「今年度(2018年7月~2019年6月)の方針として掲げた、2020年に向けた日本の社会変革に貢献するために、『インダストリーイノベーション』『ワークスタイルイノベーション』『ライフスタイルイノベーション』という3つのイノベーションを進める方針は変わらない。その実現には、(新しい)テクノロジーが鍵となる。古いテクノロジーから新しい世界へと進むためには、IT環境を最新化することが必要となることをあらためて訴えていきたい」と強調した。

代表取締役社長の平野拓也氏
3つのイノベーションを引き続き推進

安心し、信頼されるTech intensityソサエティーを作っていく

 会見で平野社長は、米本社のCEOであるサティア・ナデラ氏が最近多用している「Tech intensity」という言葉を挙げ、「いろいろなイノベーションが登場しているが、1つで完結するのではなく、次に出てくるものとつながり、連鎖しているという意味を持った言葉だ。企業はテクノロジーを経営の柱としてどう提起し、組織文化として有効活用していくことを考えないといけない時代になってきている」と話した。

 そしてテクノロジーを推進するマイクロソフト自身が、「安心し、信頼されるTech intensityソサエティーを作っていかなければならないということだと考える」とも話す。

 それを具現化するために、2019年度に掲げた3つのイノベーションの中で、「さまざまな業種、業務のビジネスソリューションを支援してきたが、その中でもSAPアプリケーションのクラウドへのマイグレーションでは大きな成果が出ている。政府・自治体への提案についても増加し、順調に成果が出てきている」と、具体的な成果を明らかにした。

 日本法人への影響が大きいと考えられる、政府が進める「Society5.0」への対応としては、「掲げられているテーマの中にデジタル化があることから、われわれも大きな貢献ができると考えている。3つのイノベーションにも合致しており、なおかつセキュリティを高めることで、安全、安心に仕事、暮らしが進められる社会という点でも貢献できる」と説明。

 この中で重要なファクターとなる、オリンピックのような国際的なイベントに対しては、「安心・安全の実現は観光、ビジネスといった点も含めて大きな影響をもたらす」と述べ、サイバーセキュリティにおける安心・安全実現に貢献していく姿勢を強調した。

 また、2019年のトピックとして4月に発表になる新元号への対応は、「ITシステムへの対応が必須になることから、改元されることが明らかになった段階で、米国本社の開発部門と連携し対応する体制をとっている。政府のガイドラインにのっとって対応作業を進めていく」とし、準備を行っていることをアピールした。

企業における“モダン化”推進への取り組み

 日本マイクロソフトが掲げる3つのイノベーションを進める上で重要な鍵となる、「2020年に向けたIT環境の最新化」では、データセンターモダナイゼーションの推進と、クライアント機を含めたモダンワーク/モダンライフの推進が必要となる。

 具体的には、2019年7月9日でSQL Server2008が延長サポートを終了し、2020年1月14日にはWindows 7、Windows Server 2008、Exchange Server 2010の延長サポートが、2020年10月13日にはOffice 2010、SharePoint Server2010、Project Server2010の延長サポートが終了する。

 「古いテクノロジーを使い続けることで、(サイバー)セキュリティ的には無防備な状態となることをきちんと理解していただきたい」(平野社長)と訴えた。

 サポート終了が間近に迫っているものの、Windows Server 2008の現在の稼働台数は48万台、Windows 7は法人市場で1600万台、コンシューマ市場で1100万台が稼働中と推測する。

サポート終了とは
依然として、多くのEOS(サポート終了)対象製品が稼働している

 「データセンターモダナイゼーションを実現するMicrosoft Azure利用促進については、戦略パートナーとともに設立した移行支援センターや、エンジニア育成支援として7000人にセミナーを実施するなどの作業を進めた。その結果、AWSから首位を奪ってMicrosoft Azureがトップシェアを獲得することができた。コストメリットとしても、Windows Server、SQL Serverからの移行の場合、AWSに比べて5分の1と、大幅に低コストで移行が実現できる」(平野社長)と述べ、AWSに対する優位性を訴えた。

 また、ファイルサーバー、業務で利用するサーバーそれぞれの移行に関する課題を解決する新施策として、大容量データの移行を支援する「Azure Data Box」、低帯域/遅延時間対応の移行を支援する「Azure File Sync」を、2019年第1四半期中に日本で提供開始するという。

Microsoft Azureの実績
提供予定の新サービス

 一方でクライアント機の移行については、95%の大企業ではWindows 10移行のための活動を開始しているほか、日本の主要企業のうち92%の企業がマイクロソフトのクラウドをすでに利用しているという。また自治体でも、97%の県がWindows 7サポート終了時期を認識するなど、マイクロソフトのメッセージが十分に届いているとする。

 ところが中小企業では、Windows 7のサポート終了を認知している企業が63%、グループウェアを活用できている企業が12%など、依然として変革は進んでいない。

Windows 7からの移行状況

 そこで中小企業向けに、パートナーから月額でハードウェアとMicrosoft 365を利用できるサービスを提供する。すでにオリックスレンテック、大塚商会、パシフィックネット、横河レンタリース、富士通、VAIOの6社から提供されているが、さらに提供会社を増やしていく計画だ。

中堅・中小企業向けに、月額料金でハードウェアとMicrosoft 365を利用できるサービスを提供

 また、2018年から進めている全国キャラバンを引き続き展開し、全国7都市で地元メディアと連携した告知活動を進める。

 デバイス事業を担当する執行役員常務の檜山太郎氏は、「2020年度頭までに、春商戦、夏商戦、10月の消費税増税と3つの商戦がある。これらすべての商戦を包括的に管理して買い換えを促進していきたい」と説明した。

 パソコンの品不足の原因となっているインテル製品の供給不足に関しても、「商戦期前後などで需給バランスが変動しているので、短期的・中長期的な対応の両方を行っている。これまでは行っていなかった、『モデル別に供給が足りないのはどれか』という情報についても、インテルと共有しながら各メーカーと話し合い、対応している」と語り、これまでにない情報共有をインテルと行っていることを明らかにした。

 なお、Windows 10への移行が推進されている中で、Windows 10のアップデートを行った際に、ファイルが消去される、アプリケーションが動かなくなるといったトラブルが、このところ続いている。

 これについて平野社長は、「ご迷惑をかけた企業にはおわびしたい。1つでもトラブルを経験すると信頼感が崩れる。安心・安全な環境実現に向け、あらためて確認するプロセスを行った。また、ご迷惑(をおかけしたこと)に対して、どれだけ速く、真摯(しんし)に対応するのかも重要。一層の安心、安全に向けた取り組みを進める」と話している。