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クラウドと最新デバイスで働く環境をアップデートしよう――、マイクロソフトがWindows 7からの移行を呼びかけ

「中小企業お助け隊」の公式アンバサダーに稲村亜美さんを起用

 日本マイクロソフト株式会社は17日、2020年1月14日にWindows 7の、2020年10月13日にOffice 2010のサポートが終了することを受け、ユーザーの新たな環境への移行状況や、最新の移行支援策などを説明する記者会見を開催した。

 日本マイクロソフト 業務執行役員 Microsoft 365 ビジネス本部長の三上智子氏は、「Windows 7のサポート終了時には、Windows 10の利用率を90%にまで高め、中小企業におけるOffice 365の利用を今後2年で10倍に増やしたい。特に、中小企業でサポート終了の認知が遅れている問題がある。移行支援策などを通じて、日本の中小企業を元気にするために役に立ちたい」とした。

日本マイクロソフト 業務執行役員 Microsoft 365 ビジネス本部長の三上智子氏

キャッシュバックや“お助け隊”などにより移行を促進

 日本マイクロソフトでは、新たに2つの施策を開始する。

 1つは、早期導入企業キャッシュバックキャンペーンである。

 10月17日~12月21日までにMicrosoft 365 Businessを購入したユーザーに対して、1シートあたり1万円をキャッシュバック。また、Office 365 Business Premiumを購入したユーザーには、1シートあたり3000円をキャッシュバックする。

 「仕事環境の最新化を進めることを支援する。背中を押す意味もある。ぜひこのキャンペーンを使ってもらいたい」とする。

キャッシュバックキャンペーンを実施

 さらに、全国10都市キャラバンwith「中小企業お助け隊」として、11月9日の札幌開催を皮切りに、仙台、金沢、名古屋、大阪、広島、香川、福岡、熊本、沖縄の全国10カ所でキャラバンを実施。参加無料の「クラウド活用による経営力強化セミナー」を開催するほか、人材不足対策や働き方改革、営業力強化、財務・コンプライアンスなどをテーマにしたセッションを開催する。

全国10都市キャラバンwith「中小企業お助け隊」

 なお「中小企業お助け隊」の公式アンバサダーとしては、タレントの稲村亜美さんを起用。札幌、大阪、福岡でのイベントには稲村さん自身も参加する予定だという。稲村さんは会見にも登場し、任命状を三上業務執行役員から手渡された。

 「日本の中小企業を元気にし、変革の新しい風を吹かせてくれることに期待しています」とのコメントを受けた稲村さんは、「気合が入った、がんばります」と答えている。

三上業務執行役員から任命状を受け取るタレントの稲村亜美さん
神スイングを披露する稲村さん

 また日本マイクロソフトでは、2018年中に、新たな環境への移行や導入に向けたイベントやセミナーを年間1000回開催する計画を掲げているが、2018年9月時点で705回を開催し、約2万1000人が参加。「1000回の開催に向けて順調に進んでいる。2018年中には、1000回以上、3万人を対象に実施できると考えている」と述べた。

セミナーの開催は目標達成に向けて順調とした

中小企業におけるWindows 7サポート終了の認知度はまだ低い

 また三上業務執行役員は、日本におけるITの最新化状況について説明。

 Windows 10への移行に向けた活動を開始した大企業の割合は95%、マイクロソフトのクラウドを利用している日本の主要企業(日経225銘柄企業)は92%となり、大企業での新たな環境への移行が進んでいること、自治体においても、今年1月から移行に関する告知を積極的に開始した結果、県におけるWindows 7のサポート終了時期の認知は97%に達し、市および特別区におけるWindows 7のサポート終了時期の認知は95%に達していることを示した。

 だがその一方で、中小企業におけるWindows 7のサポート終了時期の認知度はまだまだ低く、前回調査に比べて8ポイント上昇したものの57%にとどまっていること、また中小企業のうち、グループウェアを活用できている企業も12%にとどまっていることに触れたほか、「中小企業のクラウド利用の状況は、東京以外の地域では東京の半分にとどまり、20ポイント以上の差がある」とのデータを示し、「これは、まだまだ伸びしろがあるともいえるが、われわれの認知を高めるための活動が弱いという課題がある」と、現在の活動を総括した。

大企業や自治体に比べ、中小企業での認知度はまだまだ低いという

中小企業の課題解決をクラウドで支援

 マイクロソフトがアピールポイントとしているのは、クラウドとモダンデバイスの2つだ。

 三上業務執行役員は、「調査によると、デジタルスキルのギャップ解消に経営者がコミットしている会社や、フレキシブルに働くために会社が支援している会社、職場でのデジタル化に向けて会社が準備できている会社が、アジア各国の企業に比べても少ないのが日本の現状である」と指摘。

 「中小企業が直面しているのは、人材不足、売上拡大、セキュリティという問題である。ビジネスの調子がいいが、人が雇えないために、ビジネスを畳むことを検討したり、46%の中小企業に対して、攻撃の被害があり、16%の中小企業で実際の被害が出ているという実態も浮き彫りになった。2%の企業だけがモバイルデバイスの管理を実現しており、リスクと現実にギャップがある。これらは、可及的速やかに解決しなくてはならない。それを実現するのがOffice 365になる」と、クラウドサービスのOffice 365をアピールする。

アジア各国と比べて、経営者のマインド、会社の支援は遅れているという
中小企業が直面している課題

 さらに、その利用シーンについて、「複数のデバイス利用が一般化するなかで、(クラウドサービスの)Office 365によって、スマートフォンとPCがシームレスに連携できる。また、新たなビジネスアイデアを実現するためにはコラボレーションが必要であり、Microsoft Teamsを利用すれば、PCおよびスマホを使いながら、チャットもオンライン会議もファイル共有も、1つのツールで実現できる」などと説明。

 「Office 365には、AI機能が組み込まれており、スライドのデザインをAIが提案したり、自動翻訳の精度が高まったりしている。紙ベースの資料も画像から直接Excelに変換し、デジタルデータとして取り込むといったこともできる。特別な投資をしなくても中小企業でもAIが利用でき、利便性を高めることができる」とも述べている。

PCとスマートフォンとのスムーズな連携
Microsoft Teamsによる新しいコラボレーション

 なお、クラウド活用で懸念されるセキュリティについては、「当社ではセキュリティに対して多くの投資を行い、クラウドで利用されている大量のデータとAIを活用して、セキュリティを強化しているし、ウイルス対策ソフトのWindows Defenderは、法人ユーザーの50%以上で利用されている。これからもクラウドの力でセキュリティを強化できる」などと述べた。

クラウドとAIを利用してセキュリティを強化している

 さらに、「クラウドサービスは難しいのではないかという誤解もある。こうした誤解を解くためには、とにかく情報を出し、わかりやすく伝える必要がある。移行を促進するための簡単な方程式はない。地道な活動が必要である」と述べ、今後もさまざまな取り組みを行っていく考えを示している。

デバイスを長く使い続けることは得策ではない

 一方で、日本マイクロソフト 執行役員 コンシューマー&デバイス事業本部 デバイスパートナー営業統括本部長の梅田成二氏は、経営者が率先して、新たな環境に移行する意識を持つ必要があると指摘した。

日本マイクロソフト 執行役員 コンシューマー&デバイス事業本部 デバイスパートナー営業統括本部長の梅田成二氏

 その1つがPCなどのデバイスの更新サイクルだ。梅田執行役員によれば、「PCの修理率は、1年目には1%未満だが、3年目には20%まで上昇する。さらに、4年目になると67%と一気に3倍以上に跳ね上がる。バッテリの持ちが悪い、動きが遅くなるといったことが起こる。だが日本ではPCの更新サイクルの平均が5.4年であり、米国の4.5年、グローバルの4.3年に比べても長い。日本では、85%以上の中堅・中小来企業で4年以上経過したPCを所有しており、故障が発生してから修理を行い、その後に『結局は買い換えた方がいい』という結果になっている。4年以上を経過すると故障したときの修理金額が1.5倍になる」という。

経年によるPCの修理率
諸外国と比べて更新サイクルも長い

 さらに、「起動に時間がかかったり、修理に時間がかかったりして、仕事に利用できない時間が年間129時間分に達し、生産的損失が発生している。これは、年間34万9983円の損失になる。結果として買い換えた方が安いということになる。また、優秀な人材は働く環境を重視する。人材確保が難しいなか、PCが古いと離職のリスクも上がることになる」とも指摘。長く使い続けることが実はマイナスに働くとのメッセージを強く打ち出した。

マイクロソフトは、購入から4年以上経過したPCは1台あたり年間35万円弱の損失を出していると主張する

 梅田執行役員はまた、「ITを運用する点でも、(最新技術を搭載した)モダンデバイスに置き換えた方がいい」と指摘する。

 「中堅・中小企業の51.2%が、PCの社内持ち出しに制限をかけている。PCが会社にあるため、台風などの自然災害が起きても2~3時間かけて出社するといったことが起こっている。もちろん、大事なPCを持ち出し、置き忘れなどによって大切な情報が漏えいするリスクもある。だがモダンデバイスでは、中身の暗号化やクラウドやセキュリティツールの利用などによって、課題を解決できる」と提言。

 「4年前のPCに比べて起動時間は2倍も早くなっている。また、700g台の軽量ノートPCも日本にはある。15型ディスプレイを搭載しHDDおよびDVDを搭載した、安いPCではないモダンデバイスがあることを経営者にも知ってもらいたい。価格は若干高いが、社員の生産性とモチベーションを上げ、それが会社の競争力につながることになる」などと述べた。

モダンデバイスの価値
モダンデバイスを手にアピールする梅田執行役員

 なお、モダンデバイスの販売拡大に向けては、大塚商会、シネックス、ソフトバンクC&S、ダイワボウ情報システムの4社との協業を強化。各社を通じた全国2万社以上のリセラーネットワークを通じて、トレーニングプログラムやキャンペーンなどを通じた販売支援を強化する。

 「持ち歩きやすく、セキュリティ強度が高いモダンデバイスが、すでに国内法人向けPC出荷の25%を占めている。また4社のパートナーとの連携によって、日本の法人向けPC市場の600万台のうち75%をカバーできるようになる。さらに57社のモダンデバイスパートナーとともに、Microsoft 365の普及も促進したい」(梅田執行役員)とした。

パートナーとの協業も進めている

 「日本の企業は、デバイスを投資と考えずコストと考える傾向が高い。そのため、まだ使えるので使っていたいというケースが目立つ。生産性を高めるために新たな環境へ移行することを訴えていく必要がある」(三上業務執行役員)。