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富士通、児童の保育所割り当てをAIで効率化する自治体向け新製品 選考の経緯も提示可能

 富士通株式会社は12日、自社のAI技術「FUJITSU Human Centric AI Zinrai」を搭載した自治体職員向け保育業務支援ソリューション「MICJET MISAIO 保育所AI入所選考」の提供を開始すると発表した。従来は、システムから出力した資料を使って人間が行っていた選考作業にAIを活用し、選考にかかっていた時間や手間を削減するという。

 「選考にかかる時間を短縮することで、選考に漏れた場合は別な保育所の利用検討を早期に行えるなど、結果的に保育所に入所できない人を少なくすることにつながるのではないかと考える」(富士通 公共・地域営業グループ 行政ビジネス推進統括部 行政第三ビジネス推進部 河野大輔シニアマネージャー)とのことで、富士通では、保育所入所にかかわる住民サービス向上につながるとアピールしている。

富士通 公共・地域営業グループ 行政ビジネス推進統括部 行政第三ビジネス推進部 河野大輔シニアマネージャー

 なお製品化前には、滋賀県大津市など30以上の自治体で実証実験を行い、システム面での課題、導入における課題などを検証した上でリリースした。この実験では、富士通製の既存システムとの連携、他社システムとの連携なども検証している。

 富士通では今回発表の新システムも含め、2020年度末(2021年3月末)までに、関連ビジネスで20億円の売上を目標としていく。

選考の是非を早期に通知、住民サービス向上の取り組みを実現

MICJET MISAIO 保育所AI入所選考

 MICJET MISAIO 保育所AI入所選考は、保育所をより必要とする人を優先するために、各自治体が個別に定めた保育所利用調整指数、保育所の空き定員情報など、入所選考に必要な情報を、子育て支援システムから保育所AI入所専攻に取り込む。

 データの抽出元となる子育て支援システムとしては、実証実験段階において、富士通のものはもちろん、他社製システムでも連携を試しており、富士通製・他社製のどちらでも連携できることを確認したという。

 データを取り込んだあとは実行ボタンを押すだけで選考を実施する。従来は、子育て支援システムからデータをプリントアウトし、人が協議して選考してきたが、中核市の場合、約1000時間かけて数千人規模の選考を行っていたのこと。ある自治体では10日以上かかっていた選考時間が、製品の利用によって数十秒になることから、申し込みを行った住民への通達時間を、大幅に短縮することが見込める。

入所選考事務の概要
AIによって選考時間を劇的に短縮できる

 「選考の是非を早期に通知できるようになることで、住民サービス向上につなげていくことができる。選考の経緯についても、AIはブラックボックスと言われているが、このシステムでは希望の施設に入所できなかった理由を説明できる支援機能を提供。選考プロセスを明確に説明できるようになる。住民からの問い合わせや窓口対応を円滑に行うことにより、透明性の高い選考を実現できるようになる」(河野シニアマネージャー)。

 なお、導入価格は自治体ごとの個別見積もりとなる。

AIやRPAなどの最新技術を織り交ぜて提供し業務改善を支援

 富士通では今回の新システム導入の前提として、多くの自治体のさまざまな業務用にAIやRPAを提供してきたが、これらを単品で提供するだけでなく、トータルな業務ソリューションの中に織り交ぜて提供し、業務改善を実現するケースが多いという。

 「富士通の強みは、行政・自治体向けに幅広い業務ソリューションを提供している点にある。デジタルコンサルティングを活用し、業務ソリューションとデジタル技術を組み合わせたシステムを提供しているが、事例を紹介してもほかのお客さまにぴったりはまるというケースはほとんどない。統合的なサービスを提供していく中で、業務改善が実現するという点が現実的」(富士通 パブリックサービスビジネスグループ 第二行政ソリューション事業本部 岡田英人本部長)。

富士通 パブリックサービスビジネスグループ 第二行政ソリューション事業本部 岡田英人本部長

 これまで自治体向けに提供してきたAIやRPAの事例としては、東京都北区において、介護給付費市況の適正化のためにAIを活用した例がある。北区の過去の指導監督記録を機械学習し、AIが出したチェックリストと実際の記録を照合して、有効性を検証した。

 「今後、介護を受ける人がさらに増加することが想定される中で、請求の間違いなどを是正し、職員負担を軽減することにつながる。現在は実証実験段階ではあるものの、現場からの評価は高く、今後の製品化を検討している」(岡田本部長)。

 大阪市では、戸籍業務においてAIを使った職員判断支援サービスを提供している。

 「この案件は、実証実験ではなく受託によってシステム化を行った例。富士通戸籍システムでのFAQデータをAIに取り込むことで、審査や判断のための該当法令、先例調査にかかわっていた時間を短縮できる。やってみてわかったのは、戸籍にかかわるすべての業務に答えられる仕組みでなければ、『この件は入っていないの?』という声が現場から上がってくること。ただし戸籍に特化していることから、『これならば現場で使える』という声が挙がるサービスとなる」(岡田本部長)。

 また、とある市に導入された例として、特別徴収移動届出書の入力効率化のためにRPAを使い、OCRで読み込んだシステムの入力作業を自動化した例がある。従業員の退職、転勤などの際、事業所から市民税課に郵送される「特別徴収移動届出書」をスキャナでOCRデータ化し、システム登録を行う処理を自動化した。

 「このシステムでは、記入枠の形式によって、OCR認識率に大きな差があることが明らかになった。既存のレイアウトを改変し、フリー記入欄を固定枠に追記する形式としたところ、認識率が62.5%から90.0%に上昇。さらに、固定枠の文字サイズを大きくしたところ、認識率は96.4%にまで上昇した。テクノロジー導入だけで終わりではなく、経験に基づいた修正によって効率化が進む」(岡田本部長)。

特別徴収移動届出書の入力効率化事例

 富士通ではこうした経験をもとに、2018年10月、公共工事の設計・積算業務を支援する「ESTIMA」にAIを搭載したシステムをリリース。工事費総額の積算結果の品質向上、結果確認にかかる作業負荷の軽減を実現することをアピールしている。

AIを搭載した「FUJITSU 公共ソリューション SuperCALS ESTIMA V6」

 今回のMICJET MISALIO子ども・子育て支援 V1 保育所AI選考は、ESTIMAに続く最新テクノロジーを、公共機関向け業務システムに組み込んだ第2弾となる。富士通では、今後も実証実験などで現場の声を反映しながらm最新テクノロジーの公共業務への活用を進めていく方針だ。