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ファーウェイ、32TB容量のSSD、AIチップ搭載ストレージサーバーなどを披露

インテルと協業した次世代卓球も

アクセラレータチップを搭載した32TB容量のSSD

 10月10日~12日の3日間の日程で、中国・上海においてファーウェイ主催のカンファレンス「HUAWEI CONNECT 2018」が開催された。

 HUAWEI CONNECTは、同社が手がける製品・ソリューションなどを発表する場として毎年開かれているメーカー単独イベント。同社CEOらによるキーノートスピーチをはじめとする多数のセッション、広大な会場フロアに設けたブース展示で最新のテクノロジーを紹介している。

 このイベントに出展されていたもののうち、特に目を引いたサーバー向けソリューションをお伝えしよう。

上海で開催された「HUAWEI CONNECT 2018」の会場前のオブジェ
広大なフロアでブース展示

利用状況を学習して最適化するAIチップ搭載ストレージソリューション

上が32TB SSDのサンプル。下はSSDをストレージシステム用のブレードに収めたもの

 昨今のトレンドでもあるビッグデータの活用をはじめ、大量のデータ処理やトランザクションが必要なエンタープライズ用途においては、さらなるストレージの高速化が求められているようだ。現状、そうしたシステムに用いられる大規模ストレージソリューションでは、ストレージ部分についてはHDDの代わりにSSDを用いたAll Flash Arrayとすることで高速化を図っている。インターフェース部分はSATAやSASが多く、ストレージの制御部分にはNVMeを採用するメーカーも増えてきた。

 ファーウェイでは、このストレージとインターフェースの両方を強化することで、大幅な高速化を達成させようとしている。まず、ストレージ部分ではこれまでの約10倍の容量となる32TBのSSDをリリースする。コントローラには同社の子会社であるハイシリコンが独自開発したアクセラレータチップを搭載し、従来比30%性能を向上。データ読み込みのレイテンシは80マイクロ秒で、この数値は他社競合製品と比較して約10%高速だという。2019年第3四半期に出荷予定だ。

SSDのレイテンシは80マイクロ秒で、他社より10%高速

 この32TB SSDの搭載も可能な同社のストレージシステム「OceanStor Dorado」シリーズの新型も2020年前半に出荷を開始する。CPUとストレージ群は、これまでのコントローラを介したSAS接続ではなく、PCIeによって並列で直結したうえで、ストレージ(SSD)はNVMeで制御する。これにより、CPU・ストレージ間のレイテンシは従来の562マイクロ秒から315マイクロ秒へと約45%高速化。ストレージ性能は他社競合製品と比較して25~30%向上する。

新型「OceanStor Dorado」
32TB SSDを25個搭載可能
PCIeでCPUとストレージを直結し、45%のレイテンシ削減
代表的な競合製品との比較で25~30%性能向上

 また、新しいOceanStor Doradoは、10月10日にファーウェイが発表したAI処理用チップ「Ascend」シリーズも搭載する。業務用基幹アプリケーションなどにおける使用状況を学習してリソース配分を最適化することで、複数アプリケーション使用時のパフォーマンスを大きく引き上げるという。

 Ascendシリーズにはエントリー・ミドルクラス向けのAscend 310と、ハイエンド向けのAscend 910の2つがあり、前者のAscend 310の採用は決定済み。より高い処理能力を備えるとみられるAscend 910搭載ストレージシステムはテスト開発の段階にあるとしている。

AIチップAscendシリーズを搭載することで、業務アプリケーションのパフォーマンスを向上
日本ではヤフージャパンがストレージユニット1個あたり3.2TBのSSDを用いたOceanStor Doradoを採用しているとのこと

プレー内容をAIで認識。卓球もデータで勝つ時代へ!?

インテルのブース

 エンタープライズ向けの通信、インフラ、AI、IoT関連のテクノロジーを披露するイベントのため、展示内容は全体的に至って真面目な、地に足の付いたものが多い。コンシューマー向けのスマートフォンを中心に展示しているブースはないし、エンターテイメント要素のある展示も少ない。そんななか数少ないエンタメ展示で注目を集めていたのが、卓球台を設置したインテルのブースだ。

 自社のモバイルデバイス向けにKirinチップセットを開発しているファーウェイは、かつて同じくモバイルデバイス向けにAtom CPUを供給していたインテルとは微妙なライバル関係にあったと言える。ところがその後、Atom CPUの開発は中止され、エンタープライズ分野では次世代通信技術の5Gで提携するなど2社はむしろ協力関係にある。それを考えれば、ファーウェイのイベントにインテルが出展するのも不自然ではないだろう。

 同ブースでは、インテルのサーバーと、ファーウェイのAI・クラウド技術のタッグで、次世代型の卓球をプレーできるようにしていた。プレーヤーがピンポン球を打つと、カメラがその軌跡をトラッキングし、バウンドも検出してどちらのプレーヤーが得点したのかを判断する。また、処理されたバウンド位置や得点状況などの情報は、頭上に設置されたプロジェクターから卓球台にグラフィカルに映し出す。これにより、審判なしで卓球の対戦ができるというわけだ。

卓球台の上にカメラ(左)とプロジェクター(右)が設置されている
プロジェクターから卓球台に映像を投射。カメラでピンポン球の挙動をトラッキングする
バウンドしたところにエフェクトが発生する
得点状況やゲーム進行を促す内容が卓球台に表示される

 審判なしでプレーできる、というだけではない。これを応用することで、ピンポン玉の軌跡を全て記録して分析し、自分や相手のプレーのクセをつかんで試合やトレーニングに活かすこともできるとのこと。手で投げ返したときもバウンドを判定してしまい、ネットがないためネットインになることもない、といったことから、従来と全く同じようにプレーすることはできないが、世界でも屈指の卓球選手を擁する中国だけに、いずれはこうしたシステムでトレーニングを積んだ選手が世界で活躍することになるかもしれない。

ドローン連携などを可能にする警察向けハンディ端末

警察官もしくは警備員が利用するハンディ端末

 中国の警察はすでにクラウドに接続している。警察官が携帯する無線トランシーバー機能を備えたハンディ端末は、エンタープライズ向けに信頼性を高めたeLTEを通信方式に採用するAndroidベースの製品に置き換わりつつある。2018年に発表した新しいモデルではOSにAndroid 8.0を採用し、内勤者向けの端末と、防水・防じん機能などを強化した外勤者向け端末の2モデルを用意。サイズも従来モデルからさらに小型化した。

eLTEを採用した警察・警備向け製品のラインアップと実際の利用例
歴代の警察向けハンディ端末。左が最も古く、その右が前世代のもの。右2つは2017~2018年にかけてリリースした新型で、内勤者用(右から2番目)と外勤者用(右端)となっている
左が新型、右が旧型。縦横サイズはほとんど同じだが、新型はかなり薄くなっている
IP68の防水・防じん性能を備える
充電はクレードルで行う

 スマートフォンとほぼ同等の機能をもつハンディ端末のため、写真・動画撮影機能を用いた映像記録、情報を集約するコマンドセンター(司令室)への動画ストリーミング配信も可能になっている。また、災害時など電力が得られない場所でも使えるよう、バッテリー・通信機能を内蔵した可搬式定点観測カメラや、ドローンに搭載したカメラとの連携が可能で、それらのデバイスが撮影している映像をハンディ端末上で確認することもできる。

 ハンディ端末は、当然ながら警察官同士のやりとり、コマンドセンターとの連絡などにも用いるが、もう1つ重要なポイントは、日報などの詳細な報告書作成を省略できることだ。所持している警察官の行動履歴を内蔵GPSによって自動で記録するため、警察官個人が日々紙などで業務報告するための作業が大幅に減り、業務の効率化につながるとしている。

「eLTE Mobile Dome」という名称の、モバイル型監視カメラ。バッテリー内蔵で6時間稼働。フルHD動画撮影が可能で、IP66の防水・防じん性能をもつ
ハンディ端末上でカメラ映像を確認できる
飛行中のドローンの映像もハンディ端末でチェック可能
コマンドセンターを想定した画面にハンディ端末のカメラ映像を送信。遅延は0.5秒程度
ハイシリコン製チップを身にまとったロボットも展示されていた