インタビュー
インテリジェントな社会にプラットフォームをとどける――、ファーウェイのICT戦略
2018年7月9日 06:00
6月に開催された「Interop Tokyo 2018」では、3日目の基調講演の1つとして、華為技術有限公司(ファーウェイ)の董理斌(ウィリアム・ドン)氏(法人向けビジネスグループ データセンターマーケティング&ソリューションセールス部 バイスプレジデント)による講演が行われた。
この講演では、「インテリジェントITが導くデジタルな未来」と題して、ビッグデータやAIによるビジネスのデジタル変革と、そこにおけるファーウェイの役割が語られたが、基調講演後、社会やビジネスのデジタル変革と、ファーウェイの企業向けソリューションについて、あらためて董氏に話を聞いた。
また、同席した華為技術日本株式会社(ファーウェイ・ジャパン)の馬樟平氏(法人ビジネス事業本部 ITソリューション&マーケティング部 ジェネラルマネージャー)にも、一部国内事例に関する話を聞いている。
インテリジェントな世界にプラットフォームを提供する
――まずは、基調講演で話されたことの概要をお願いします。
董氏:
私の講演では、いま始まりつつあるインテリジェントな社会に対して、ファーウェイがどのように考えているかを中心に話しました。そして、そこでのICTの構築について、ファーウェイでは、フルスタックのソリューションで取り組み、プラットフォームを構築しているということを紹介しました。
ファーウェイが考えるインテリジェントな世界は、物理世界のものがセンシングされる「オールセンシング」、データをオンラインで接続する「オールコネクテッド」、ビッグデータとAIによる「オールインテリジェント」から成ります。こうしたデータを中心とした世界において、ICTインフラが基盤となるということについてもお話ししています。
それをどう構築するか。ファーウェイでは、企業インテリジェンスのためのプラットフォームとしてクラウドデータセンターを構築し、それを使ってビジネスのデジタル変革を実行する部分は、パートナーとの協業を進めています。
クラウドデータセンターには、まず一番下の層として、コンピューティングやネットワーク、ストレージなどのクラウドインフラがあります。これを仮想化により1つのプールにまとめます。
その上に、データレイクの層があります。データの収集や蓄積、解析、利用など、データのライフサイクルをトータルで考えています。
さらにその上に、各種のデータサービスがありますね。メタデータサービスやアルゴリズムサービス、ミドルウェアサービスなど、プラットフォームをオープンなものにして、パートナーがアプリケーションを考える場を提供します。
――具体的な取り組みにはどのようなものがあるでしょうか。
董氏:
ファーウェイではベースとなる部分を主に考えています。データレイクやインフラの部分は引き続き大きな投資をし、開発にも力を入れています。
コンピューティングの分野では、ヘテロジニアスコンピューティングプラットフォームのAtlasに取り組み、今回のInteropでも展示しています。ビッグデータサービスの分野でも、すでにAIやビッグデータのサービスなどを、企業向けにプラットフォームにのせて提供しています。クラウドでは、パブリッククラウドとプライベートクラウドに取り組んでいます。
――ファーウェイというとハードウェアのイメージがありますが、どのようなサービスを展開していますか。
董氏:
当社では、クラウドプラットフォームの上で、企業のビジネスに貢献するためのサービスを提供しています。
サービスは大きく分けて、汎用的なサービスと業界特化のアプリケーションの2つがあります。汎用的なサービスとしては、パブリッククラウドやプライベートクラウドの上で、さまざまなサービスを提供しています。
業界特化のアプリケーションの分野では、パートナーとともに取り組んでいます。中国のパートナーと開発していますが、同じ業界の海外企業にも対応可能なものです。こうして、プラットフォームとして企業の活躍の場を提供します。
――中国以外ではサービス事業はいかがでしょうか。
董氏:
ヨーロッパやラテンアメリカなどでも使われています。海外ではパブリッククラウドは主に、通信キャリアとともに取り組んでいます。プライベートクラウドはちょうど発表したばかりで、サービスとしてはこれからです。
日本でも通信キャリアからISPやOTTに市場を広げる
――日本の企業向け市場にはどのように取り組みますか。
董氏:
日本は世界のICT市場で大きなシェアを占め、非常に重要なマーケットです。ファーウェイ(のシェア、存在感)は、まだ日本市場で大きくないので、これを大きくしたい。そこで、競争力のあるソリューションや製品を、パートナーとともに提供したいと思っています。
これまで、ファーウェイの日本でのビジネスは通信キャリア向けが中心でした。これからはISP(インターネットサービス事業者)やOTT(Over The Top:インターネット上のサービス事業者)に広げたいと考えており、徐々に事例も出てきました。今回の基調講演でも、Yahoo! JAPANの採用事例を紹介しました。
このように、日本市場でも差別化された価値のある製品を提供していきます。例えば、CPUとGPUを1つのサーバーに統合したヘテロジニアスコンピューティングプラットフォームのAtlasや、オールフラッシュストレージのOceanStor Doradoなどがあります。共同検証ラボなど、パートナーとの協業も進めています。
――インテリジェントな社会については、どのように取り組む予定ですか。
董氏:
これまで、サーバーやスイッチなどの機器や、技術を積み重ねてきました。現在ではそれに加えて、AIやビッグデータの技術や人材を確保しています。また、自社で技術や人材を確保するだけではなく、パートナーといっしょに開発する必要があるので、パートナーシップを強化していきます。
――AIやビッグデータの人材を日本でも採用していく予定でしょうか。
董氏:
AIのアルゴリズムの人材は大切にしているので、どの国の人材でも採用したいと考えています。AIの技術者にとってファーウェイは、GPUとCPUのリソースがふんだんに使えることと、社内だけでも大量のデータを持っていて、まず社内で試せることがメリットになると考えています。
――基調講演でも語られたYahoo! JAPANの事例について教えてください。
馬氏:
それについては私からご説明します。Yahoo! JAPANでは、災害対策として180km離れた2つのデータセンターの間で、1日約20万件追加されるデータを同期する必要がありました。その部分をOceanStorのHyperMetro機能で置き換えました。これにより、メンテナンス時間が12時間から30分になったほか、冗長化構成によりわずか数秒で切り替わるようになりました。
――最後に、日本市場への意気込みをお願いします。
董氏:
日本はヨーロッパに負けず劣らず重要な市場だと考えています。そのためにも、パートナーと力をあわせ、ローカルの人材をより採用するなど、よりいっそう日本市場に力を入れていきます。日本市場はますます発展すると信じています。