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日本マイクロソフト、経営方針説明会でクラウド事業の好調さをアピール~働き方改革は第2章へ

 日本マイクロソフト株式会社は1日、新会計年度の経営方針説明会を開催した。同社の2018年度(2018年6月期)は7月1日にスタートしており、7月20日には米国本社にて2017年度(2017年6月期)の決算発表があったばかりだ。

 日本マイクロソフト 代表取締役社長の平野拓也氏はまず、2017年度の決算を振り返り、クラウドビジネスが好調であることを強調した。「法人向けクラウド事業のグローバルでの売上高は189億ドルだった。2018年に200億ドルの売上を目標としているため、かなり近づいている」と平野氏。中でも2017年度は、Microsoft Azureが97%増、Microsoft Office 365が43%増、Microsoft Dynamics 365が74%増と、それぞれ売上を大きく伸ばしており、Officeに関してはクラウドがオンプレミスの売上高を上回っているという。

日本マイクロソフト 代表取締役社長 平野拓也氏

 国内の売上高は公表していないものの、「全営業組織ともに目標を達成した」と平野氏。その背景として同氏は、過去1年の国内での動きを振り返り「デジタルトランスフォーメーションが大きく進んだ」ことを挙げる。

 「働き方改革を推進したこともあってクラウドがさらに普及し、日経平均採用銘柄のうち8割の企業がOffice 365を利用するようになった。AI(人工知能)やMR(複合現実)への取り組みも進み、HRテックではリクルートキャリアと、コネクテッドカーではトヨタ自動車との連携も実現した。デバイス面ではMicrosoft HoloLensが国内開発者の間で盛り上がり、さまざまな検証プロジェクトが進むなどして米国に次ぐ出荷台数となった」と平野氏は説明、デジタルトランスフォーメーションを軸とした事業がうまく展開できたと主張した。

 平野氏は、2015年7月の社長就任時のビジネス目標として、当時全体の7%だった国内でのクラウド事業の売上比率を50%にまで引き上げるとしていた。2017年度第4四半期にはその比率が47%となり、「ほぼ達成できた」という。その要因も平野氏は「働き方改革の成果だ」としており、「より幅広いユーザーがクラウドを利用するようになった」と話す。このほか、Azureのインパクトが高まりパートナーのクラウド戦略も進んでいることなど、さまざまな要素が重なり合った結果だと説明した。

好調なクラウドビジネス

インテリジェントクラウドとインテリジェントエッジへの対応

 2018年度については、「今後もモバイルファースト、クラウドファーストを基盤として事業を展開する」と平野氏。この基本方針は変わらないものの、「これまで以上にインテリジェントクラウドとインテリジェントエッジが求められるため、マルチデバイスやマルチセンサー、人工知能、分散協調型コンピューティングなど、より高度なテクノロジが必要になる」としている。

インテリジェントクラウド、インテリジェントエッジ実現に向け

 「Windows 95が登場したころ、マイクロソフトのビジネスはデスクトップビジネスのみで、国内での市場規模は1400億円だった。それがクライアント・サーバー市場にも事業を拡大し、次にモバイル・クラウド事業にも乗り出すなどして事業規模を拡大してきている。今後インテリジェントクラウドやインテリジェントエッジにまでビジネスを拡大することで、1995年の190倍となる26兆円市場にアプローチできる」と平野氏は説明、この広がるビジネスチャンスにうまく参入することが重要だと述べた。

拡大するビジネス機会

 その具体策として、2018年度はさらなる働き方改革の推進と、インダストリーイノベーション、デバイスモダナイゼーションの3分野に注力するという。

 まず働き方改革については「第2章に入った」として、育児やファミリーケアのための休暇制度を新たに発表する予定だ。また、子育てや介護、家族の転勤などで職場を離れた人が活躍できるようなインターンシッププログラムも検討中だという。テクノロジ面では、社内でAIを活用した需要予測を採用するなど、よりAIを駆使した働き方を進めるほか、日本社会全体で働き方改革を推進する「働き方改革推進会社ネットワーク」をさらに拡張したいとしている。

 インダストリーイノベーションに関しては、「業種別の部隊を再編し、各業種へのアプローチを徹底する」と平野氏。特に注力したい分野として平野氏は、金融、流通、製造、政府・自治体、教育、ヘルスケアの6業種を挙げている。

 デバイスモダナイゼーションに関しては、「今秋予定されているWindows 10の大型アップデートでさまざまなデバイスとの連携が拡大する。また、インテリジェントクラウドとの連携でIoTデバイスやセンサーなど数多くの製品がパートナーから登場するだろう」としている。このほか、今後OEM各社からMR対応デバイスの登場が見込まれることから、秋にはMRパートナー向けのプログラムも開始する予定だという。

 これら3分野に注力することで、「2020年にはパブリッククラウド市場でリーディングシェアを取りたい」と平野氏は言う。Azureの売上を毎年倍増させ、Office 365を日経平均採用銘柄全社に利用してもらうなどして、3年かけてシェアトップを獲得したい考えだ。

2018年度の注力分野
2020年にはパブリッククラウド市場でリーディングシェアを獲得したい

 新年度にあたり、日本マイクロソフトでは組織編成も実施している。新たにクラウドビジネスを創出する専門部隊として、クラウド&ソリューション事業本部を立ち上げたほか、顧客のデジタルトランスフォーメーションに対するニーズに応えるためデジタルトランスフォーメーション事業本部を設立。さらに、新たな営業体制としてインサイドセールス事業本部も立ち上げた。現時点でのメンバーは、クラウド&ソリューション事業本部が約200人、デジタルトランスフォーメーション事業本部が約100人、インサイドセールス事業本部が約100人だという。

 平野氏は、新体制を率いるにあたり、「日本マイクロソフトとして目指す新たな企業像は、革新的で安心して使ってもらえるインテリジェントテクノロジを通じ、日本の社会変革に貢献することだ」と述べた。

日本マイクロソフトの目指す新たな企業像