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IIJ、タイのエビ養殖場でIoT・AIを活用した水質環境・作業管理の実証実験を実施

JETROの公募事業「日ASEAN新産業創出実証事業」を受託

 株式会社インターネットイニシアティブ(以下、IIJ)は15日、独立行政法人日本貿易振興機構(JETRO)の公募事業である「日 ASEAN 新産業創出実証事業」において、「IoT導入による養殖事業の生産性向上プロジェクト」が採択されたと発表した。

 東南アジアにおいては、養殖業は重要な輸出産業で、生産性の向上による競争力強化が求められているが、現状のエビ養殖事業は水質環境の把握とその変化への対応が作業員の知見に依存するところが大きく、水質環境コントロール・作業行程の適正化が課題になっているという。

 プロジェクトでは、IoT技術を活用して水質環境を監視し、作業内容と水質環境の相関関係を明確化させることで、適切に水質環境をコントロールし、作業の効率化、適切な生産量の確保につなげることを目指す。

実証実験の全体イメージ

 実証実験は、タイ大手水産加工事業者グループのエビ養殖場(タイ王国パンガ県)において実施。自動で水質環境情報を取得し、アプリケーションを通して遠隔で監視すると同時に、飼育作業の記録により作業状況も可視化することで、水質環境情報と作業工程の相関分析を実施する。

 水質環境の維持、エビ成育のための最適な作業行程をシステム側で導き出し、作業にフィードバックすることで生産性の向上を実現する。さらに、システム導入にかかるコストと、作業員の運用負荷と生産コストの削減効果、生産性向上といったシステム導入による効果を明確化し、ビジネス面での採算性を検証する。

 エビの養殖槽に水質管理用センサーを設置し、水温・溶存酸素・pH・アンモニウムイオン・亜硝酸イオンといった水質データを自動で取得。センサー情報の収集にはLoRaWANを利用し、センサーから収集した水質データはIIJグループが提供するIoT向けグローバルSIM「Vodafone IoT SIM」を経由し、タイで関連会社が提供するクラウドサービス「Leap GIO Cloud」上に集約する。

 pH、イオンなどの水質環境情報を参照するためのアプリケーションは、タイのIT事業者のLoxleyが開発。PCやタブレット、スマートフォンなどで水質情報の確認が可能で、さらに給餌や調整剤投与、水替えなどの飼育作業を入力できるため、飼育作業記録を可視化できる。実証実験ではAIを活用し、水質環境と飼育作業の相関関係を分析することで、養殖事業における作業効率、生産性の向上を目指す。

 実証期間は2018年4月から2019年3月まで(予定)。IIJでは、プロジェクトによりタイの養殖事業の競争力強化に貢献し、さらに他の国や地域、さまざまな水産業にも応用可能な共通基盤の実現により、ASEAN地域の一次産業発展を推進すべく、積極的に取り組んでいくとしている。