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“i”はインテグレーションの“i”―― 日本IBM、30年目を迎えた「IBM i」の事業戦略を説明
2018年3月15日 13:12
日本アイ・ビー・エム株式会社(以下、日本IBM)は15日、「IBM i」の事業戦略について発表した。
日本IBMでは、「IBM iは、AI時代のビジネスアプリケーションプラットフォームであり、IBMの戦略プラットフォームである」と定義する。
日本IBM 専務執行役員 IBMシステムズ・ハードウェア事業本部長の武藤和博氏は、「過去からのアプリケーション資産の継承をコミットし続けてきたのが、IBM iの特徴である。また、eビジネスやモバイル、クラウド、コグニティブといった新たなトレンドにもいち早く対応してきた。これらを両立できるのは、まれなプラットフォームである」と前置き。
「IBM iは、ハードウェア、OS、データベースを垂直統合することで、高い信頼性を実現してきた。今後はWatsonや、ほかのアプリケーション、システムとも連携。ハイブリッドクラウドも実現できるようになる。垂直統合に加えて、水平統合を推進するのがこれからのIBM iの特徴になる。iは、インテグレーションのiになる」と説明した。
同社では1月にIBM i統括部を新設。ビジネスパートナー、アプリケーション開発企業、人材サービス企業およびIBMアプリケーション開発・運用部門によるエコシステムの強化を通じて、IBM iユーザーを支援するという。同組織の設置は、グローバル全体での施策になり、地域ごとに最適化した取り組みを行っていく。
また3月16日には、IBM i V7.3 TR(テクノロジーリフレッシュ)4の提供を開始し、3月20日には、IBM i稼働POWER9搭載サーバーを出荷する。現在、米国テキサス州オースティンの同社ラボにおいて、POWER9搭載サーバーの最終レビューを行っているという。
なお、IBM iシリーズは、1988年にAS/400として発売以来、今年で30年目の節目を迎えている。この間、POWERの活用による性能向上は約13万7000倍になり、IBM Zメインフレームとの共通技術の採用により、仮想化技術の採用や信頼性の向上を図ったという。現在、IBM iは、115カ国、15万社で利用されている。
日本IBM IBMシステムズ・ハードウェア事業本部 Cognitive Systems事業開発 IBM i統括部の久野朗部長は、「IBM iは、新たなバージョンが発表されるたびにロードマップを更新しており、2世代先の開発計画を公表。将来に向けてアプリケーション資産をそのまま稼働できることをコミットしている点や、COBOL資産の移行が短期間かつ低コストで行える点が大きく評価されている」と、説明。
さらに、「今後の基幹システムにおいては、AI、クラウド、モバイルなどの新たなテクノロジーとの連携が重要になるが、ここについてもIBM iであれば柔軟に対応できる。例えば、モバイルアプリケーションにおいては、構築のための投資を軽減したり、現場からの改善要求にも迅速に対応でき、セキュリティリスクも低減したりできる。低額の投資と短期間で、時代にあわせたアプリケーションを構築が可能になる」と、メリットを強調した。
新たな技術との連携事例としては、九州三菱自動車販売の例を紹介。IPカメラで取得した自動車のナンバー情報から、顧客情報とリアルタイムに照合する仕組みを構築することで、顧客サービス向上に貢献しているとのことで、「基幹システムに新たな技術を採用することにより、顧客体験を高め、サービス向上に役立てることができる事例」(同)と述べた。
さらに、アプリケーション開発やインフラ運用に関する支援体制の強化についても説明。アプリケーション開発から保守に至るまで、IBMによる一貫した支援体制を提供するとともに、グローバル標準のIBMマイグレーション メソドロジーを活用した確実な引き継ぎや、ドキュメンテーションの適正な拡充、アプリケーションの可視化を行う、RPGアプリケーション開発・運用支援サービスを、3月7日から提供開始したとする。
また、ユーザー企業においてIBM技術者を育成するためにプログラムを、パーソナルテクノロジースタッフ、マンパワーグループの2社と協業し、3月15日から提供することも発表された。「(プログラム言語である)RPGのスキル習得のために、無料のオンライントレーニングも提供。数週間から1カ月でRPGのスキルを習得できる」とした。
さらに、RPGアプリケーションのリモート開発・運用サービスを推進。共通の標準サービスレベルを定義し、パートナー各社でサービスを提供するとともに、リモートからのサービス提供により、アジャイルで効率的な対応を実現。同サービスの協賛企業は11社に達しているという。
2社のビジネスパートナーが登壇
一方、2社のビジネスパートナーからも、IBM iに関する事業戦略についても説明が行われた。
JBCCホールディングス株式会社の東上征司社長は、「AS/400の発売以来、30年間にわたり、5200社、1万4000台以上の実績を持ち、AS/400といえばJBCC、JBCCといえばAS/400といわれ、ビジネスパートナーの最高位の高いスキルと認定資格を持つ。昨今では、富士通やユニシスなどのメインフレームやオフコンから、IBM iへの置き換えるモダナイゼーションプラットフォームとしての提案を推進しており、スピードで50倍、コストで2分の1というマイグレーション効果が発揮され、106件の実績が出ている。これらの効果は、顧客から驚きを持って受け入れられている」と、自社とIBM iのかかわりを説明。
「上流工程設計支援ツールのXupper IIと、高速開発ツールのGeneXusにより、開発期間を約40%縮小し、生産性の高い、新たな環境へと移行している。現在、約80のプロジェクトをこれによって推進しており、プログラムをなるべく書かずに、重要なアプリケーションをアジャイルで開発を進めることができている。さらに、Watsonを活用し、問い合わせに対してAIチャットボットで自動回答して、問い合わせ業務を効率化するといった事例もある。今後も、IBM iのサポーターに、より満足してもらう施策とともに、新たなサポーターを生み出す取り組みを強化したい」とコメントした。
ベル・データ株式会社の小野寺洋社長は、「もともとは海外からIBMの中古機を並行輸入したビジネスを行っていたこともあり、日本IBMと競合する立場であった。だが、1000台の実績に達したころから、このビジネスを自主的に縮小し、IBMのビジネスパートナーとして、競合から協業の立場へとシフトした。現在、3000社のユーザーを持ち、230台のIBM iによるアウトソーシングやプライベートクラウドの運用も行っている。また、320社とのパートナーリングにより、ユーザー企業の課題を解決しており、過去2年間で41社の置き換えの実績がある」と、自社と日本IBMとのかかわりを説明した。
さらに、「国産汎用機からIBM iに移行した事例では、保守料金を3分の1にまで縮小しながら、COBOLの資産をそのまま継承できること、3時間かかっていた処理が10分間に短縮するといった効果が出ている。また、製造業のユーザーでは、生産実績データの収集、編集、公開までの作業を自動化。リアルタイムで、データを可視化し、情報を共有するといったモダナイゼーションの成果もある」との事例を紹介している。
なお今後については、「堅牢で、故障が起きにくいIBM iの提案を加速するとともに、使いやすいツールの提供やWatsonとの連携も進めていく。さらに、日本IBMやIBM iのビジネスパートナーとともに、コンソーシアムを設置して情報交換を行ったり、協力体制による販売強化を進めたいと考えている。日本におけるIBM iワールドを広げたい」などと話している。