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データドック、雪氷冷房活用・ハイスペック仕様の「新潟・長岡データセンター」を開設

株式会社データドックの「新潟・長岡データセンター」

 株式会社データドックは22日、新潟県長岡市に新設した「新潟・長岡データセンター」の開所式を開催した。

 新潟・長岡データセンターは、1ラックあたりの最大供給電力が30kVA、床耐荷重が3.0t/㎡と、AI・機械学習やビッグデータ活用、ブロックチェーンなど、高性能計算(HPC)の用途にも適したスペックで建設。また、寒冷地であることを生かし、雪氷と外気を利用したハイブリッド空調システムを採用している点も特徴となっている。

 完成した1期棟は500ラック規模で、2020年度までには1500ラック規模の2期棟を増設する予定。

開所式の模様

 開所式には、新潟県副知事の高井盛雄氏、長岡市長の磯田達伸氏、新潟県議会議員の星野伊佐夫氏などが参加。合わせてデータセンター内の設備についての内覧会も行われた。

データドック代表取締役社長の宇佐美浩一氏

 データドック代表取締役社長の宇佐美浩一氏は、「データドックはデータセンター事業者としては後発で、新潟・長岡データセンターはかなりのチャレンジをしているが、そのチャレンジを成功させるための仕掛けも用意している」と説明。データセンターの建設地については、いくつかの候補地の中から、寒冷地資源を活用できることや、東京からの移動時間、地元自治体・企業との協力体制などの条件から、長岡に決定したという。

 宇佐美氏は、データドックの事業の3つの柱として「データマネジメント」「グリーンエナジー」「地方創生」の3点を挙げ、データドックには、これまで多くのデータセンター建設に携わったエンジニアが在籍しており、そうしたエンジニアの“想い”を形にした、今後の10年、20年を見据えた競争力を保てるデータセンターだとした。

「データマネジメント」「グリーンエナジー」「地方創生」が3つの柱

 データセンターには時代の変化に応じて求められる要素が変わってきており、現在のデータセンターには「大規模化」「省電力」「安全性・信頼性」が求められていると説明。

 「大規模化」については、AI・機械学習やビッグデータ活用、ブロックチェーンといった大規模計算の用途が増える中で、そうした用途に対応できる高性能なマシンの設置に対応するため、30kVAという最大供給電力と、3t/㎡の床耐荷重を実現。サーバーラックについても2tの耐荷重を持つ特注のものを採用しており、顧客との商談でも「他のデータセンターでは設置が難しい」マシンを抱える企業からの引き合いがあるという。

データセンターに求められる3つの要素
最大供給電力30kVA/ラック、床耐荷重3.0t/㎡を実現
サーバールームに並ぶサーバーラック

 「省電力」については、雪氷と外気を利用したハイブリッド空調システムにより、電力利用効率PUE 1.19を実現。冬のうちにデータセンターの隣の敷地に最大4000㎥の巨大な雪山を作り、夏にはこの雪山の下に通してあるパイプに不凍液を循環させ、これを冷房に利用するという仕組みだ。雪山にはウッドチップとシートをかけることで、夏まで持たせられるという。

 外気冷房と雪氷冷房の組み合わせにより、通常の冷房装置を使うことがほぼなくなり、こうした空調電気削減分と、土地代・人件費などの削減分と合わせて、首都圏型データセンターに比べて約38%のコストを削減しており、コスト面でも首都圏型データセンターに対して強い競争力を生み出すとした。

雪氷と外気を利用するハイブリッド空調システムを採用
データセンターに隣接する土地に最大4000㎥の雪山を作り、夏の冷房に利用する
空調電気と土地・人件費などの削減でコストを約38%削減

 サーバールーム内の冷却は、空調機から共通ダクトチャンバーを通して、必要な場所に必要な冷気を送る新たな仕組みを取り入れており、ハイスペックなサーバーの収容に対応した冷却効率の良い空調設備になっている。

 さらに、グリーンエナジーへの取り組みとしては、データセンターからの排熱を水耕栽培や水産養殖に活用する事業についても取り組む予定だとした。

共通ダクトチャンバーを利用した効率の良い空調を実現
サーバールームの外に並ぶ空調機
冷気は壁面から、排気はラック上部から排出される

 「安全性・信頼性」については、非常に硬い砂礫層を支持地盤とする土地を選定。中越地震の際にもほとんど影響がなかった土地で、強固な地盤のためデータセンターも直接基礎での建設が可能だったという。また、基礎と建物の間には3種類のゴムによる免震装置やオイルダンパーを設置。データセンターは海抜30mに位置するが、ハザードマップでは河川の氾濫により「100年に1度、2mの洪水」の可能性が指摘されているため、2.5mの防水壁を備えている。

 電力は2系統を引き込むとともに、UPSとN+1冗長構成のガスタービン発電装置を完備。日本データセンター協会(JDCC)が制定したファシリティスタンダードの最高レベルであるティア4に適合する設備となっている。

 通信インフラについても、東京-長岡間に100Gbpsのバックボーンを用意。BCP/DRサイト構築のニーズにも対応できるとした。

中越地震でもほとんど影響のなかった堅固な地盤を選定
建物下の免震装置
緊急時用のガスタービン発電機
東京-長岡間に100Gbpsのバックボーン回線を用意

 新潟・長岡データセンターはすでにサービスを開始しており、まずはハウジングサービス、ホスティングサービス、ストレージサービス、マネージドサービスという、データセンター事業者として標準的なサービスから開始している。

 宇佐美氏は、今後はより高電力・特化型のサービス展開を目指すとして、GPUサーバーホスティングや、映像解析ストレージサービスなどを検討していくと説明。また、マーケティング分野でのデータ活用など、データマネジメントサービスにも着手していくとした。また、他の事業者などとの差別化については、大容量ストレージを国内に預けたいといった、海外の大手クラウドベンダーなどとは違ったニーズに応えていきたいとした。

 地域貢献については、データセンター事業そのものでの雇用人数はそれほど多くはないものの、すでに地元から3人の新卒採用を予定しており、エンジニアの育成なども含めて質の高い雇用を実現していきたいと説明。長岡市には大学など教育機関も多く、そうした地元の教育機関との連携や、自治体のビッグデータ活用などとの連携も進めていくとした。

 また、長岡市では、株式会社UEI代表取締役社長兼CEOの清水亮氏が人工知能開発を目的とした株式会社AIUEOを設立するなど新たな取り組みも増えており、そうした企業との連携も図っていきたいとした。

新潟・長岡データセンターの対象市場
映像解析ストレージサービスなど、高電力・特化型のサービス展開を目指す
開所式が行われたデータセンター内のカフェスペース。地元の古材を利用したテーブルなどが設けられており、通常は顧客とのミーティングなどに利用される
カフェスペースにはデータドックの事業ビジョンを具現化したチョークアートも掲げられている
BCPなどの用途に向けたレンタルルームも用意。部屋の名前には上越地方特産の錦鯉の品種名が付けられている