ニュース

日本企業のデジタル変革を支援する――、SAPジャパン、東京データセンターで「SAP Cloud Platform」の運用を開始

 SAPジャパン株式会社は18日、PaaSソリューション「SAP Cloud Platform(旧SAP HANA Cloud Platform)」を、同社の東京データセンターで運用開始することを発表した。これに伴い、SAP Cloud Platform上で稼働する「SAP BusinessObjects Cloud」など業種向けクラウドサービスも、東京データセンターから提供されることになる。

 SAP Cloud Platformのセールスおよびマーケティングをグローバルで指揮するSAP プラットフォーム&イノベーション部門グローバルゼネラルマネージャ兼SVP、ロルフ・シューマン(Rolf Schumann)氏は「SAPは単なるアプリケーションカンパーではなく、プラットフォームカンパニーでもある。アプリケーションのことを知り尽くしたプラットフォームカンパニーとして、日本のデータセンターから日本企業のデジタル変革を支援していきたい」と語る。

SAP プラットフォーム&イノベーション部門グローバルゼネラルマネージャ兼SVP、ロルフ・シューマン氏

国内のDC利用で法令準拠問題などをクリア

 SAPは現在、米国、欧州、中国など世界7カ所にデータセンターを置いており、東京データセンターはそのうちのひとつ。今回、新たにSAP Cloud Platformを東京データセンターで運用開始することで、国内企業にとっての導入課題であった国内法令準拠やレイテンシ削減、国内でのセキュアなデータ管理などがクリアされることになる。また、SAP HANAのマネージドサービスである「SAP HANA Enterprise Cloud」とのデータセンター内連携も可能になる。

SAPのクラウドデータセンターは世界7カ所に開設されている。2017年度後半には大阪でもSAP Cloud Platformが運用開始される予定

 また、SAP Cloud Platform上で稼働する以下の3つの業種別クラウドサービスも同様に東京データセンターから提供されることになる。

・SAP BusinessObjects Cloud:エンドツーエンドなアナリティクス(BI)サービス
・SAP Vehicle Insights:コネクテッドカーに特化したアナリティクスサービス
・SAP Sports One:スポーツおよびエンターテインメントに特化したサービス

 SAPジャパン バイスプレジデント プラットフォーム事業本部長 鈴木正敏氏は「東京データセンターではPaaSの稼働率を99.9%保証する。PaaS提供企業としてここまで高い数字を出しているところはおそらくない。サポートやセキュリティ、信頼性もすべて世界水準の都市型データセンターであり、加えて日本国内基準の耐震性も備えている」と東京にデータセンターがあることのメリットを強調する。

SAPジャパン バイスプレジデント プラットフォーム事業本部長 鈴木正敏氏

 また、「SAPのビジネスにおけるアプリケーション事業の比率は5割を切っている。いまやSAPはアプリケーション企業というよりはプラットフォーム企業。あらゆる業界のアプリケーションを知り尽くしたSAPが提供するアプリケーションのためのプラットフォームを体感してほしい」(鈴木氏)とアプリケーション開発プラットフォームとしてのSAP Cloud Platformの価値を強調する。

SAP Cloud Platformの国内導入事例の一部。京福バスのユースケースはNTTグループと協業したIoTアプリケーション構築事例として知られる

SAP Cloud Platformの機能強化も

 今回の東京データセンターでの提供と同時に、SAP Cloud Platformにはいくつのかの機能強化が行われている。主なアップデートは以下の通り。

・SAP Cloud Platform SDK for iOS:エンタープライズ向けiOSアプリを迅速に開発するためのツールおよび拡張機能(Swift対応)の提供開始
・SAP Cloud Platform IoTサービス:IoTサービスとSAP Cloud Platform Streaming Analyticsサービスの統合によるストリーミングデータの高速処理
・SAP Cloud Platform Workflowサービス:クラウド上でビジネスプロセスを組み合わせ迅速なワークフロー作成が可能に
・SAP Cloud Platform Big Data Services:旧Altiscale。ビッグデータアプリケーション基盤として提供するクラウド上のHadoopサービス

SAP=ERPベンダー、からの脱却なるか?

 SAPがPaaSを国内データセンターから提供する最大の目的は「国内企業の迅速なデジタル変革とイノベーションの支援」にあるとシューマン氏は語る。

 デジタル変革のカギは時代のスピードとトレンドにキャッチアップしたアプリケーション開発にある。イノベーティブなアプリケーションを速く開発する――、これは企業規模を問わず多くの国内企業が苦手とする分野だが、SAPはこれをSAP Cloud Platformでもって「アプリケーションをビルドする、拡張する、そして(SAP以外の環境とも)統合するの3つの側面から支援する」とシューマン氏は言う。

 「すべての企業はソフトウェアドリブンカンパニーになる必要がある。アプリケーションの迅速な開発はそのために必須の条件。旧名称のSAP HANA Cloud Platformから“HANA”をはずしたのも、SAPのPaaSがよりアジャイルに適していることを示すため」(シューマン氏)。

 もっとも、国内におけるSAPのイメージは“ERPベンダー”から脱却できていない。鈴木氏は「これまでのSAPジャパンは、デベロッパーやアーキテクトにリーチできていなかったのは事実」と認めたうえで、今後は開発者向けのサポートを拡充し、パートナービジネスを強化する方針であることを明らかにしている。

 すでにSAP Cloud Platformの認定資格を2017年3月から開始しており、対象のトレーニング受講者は国内で3000名を超えているという。またアビームコンサルティングのようにSAP Cloud Platformを活用した独自の開発ソリューションを提供するパートナーも増えており、今後もパートナー施策を通じてアプリケーション開発者にアプローチし、「ビジネスイノベーションプラットフォーマーとしてのSAP」(シューマン氏)の認知度拡大に注力していく構えだ。

アビームコンサルティングが提供する、SAP Cloud Platformを活用したソリューションの例