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VMwareのクラウド&ネットワーク担当CTOが語る「クロスクラウド戦略」
VMware Cloud on AWSの価値やvCloud Air売却の理由なども
2017年4月19日 11:00
米VMware クラウド&ネットワーク担当CTOのグイド・アッペンツェラー(Guido Appenzeller)氏が来日し、同社のCross Cloud戦略などについて説明した。
冒頭でアッペンツェラー氏は、クラウドを取り巻く環境についても説明。「いまやITはバックオフィスではなく、企業の根幹を担っている。そして、デジタル化が加速することにより、インダストリアルカンパニーであったGEは、一夜にしてソフトウェア企業へと変化するなど、企業の変革をもたらしている。いま、ITの在り方が変わろうとしており、それは垂直統合のメインフレームから水平分散のPCへの変化に続く、2回目の変化である。クラウドの登場によって、ソフトウェアとハードウェアが分離し、ITが抜本的に変わることになる」と切り出した。
新たなサイロ化に対する懸念
また、昨今のデータをもとに、60%の顧客がパブリッククラウドを利用していること、48%の顧客が複数のパブリッククラウドを利用していること、2020年には30%のワークロードがパブリッククラウドで利用されているが、70%は依然としてオンプレミス環境で利用していること、しかし、VMwareユーザーのうち、67%の顧客が最終的には複数のクラウドを利用したいと考えていることなどを示しながら、「多くの企業はクラウドを重視しているが、多くの顧客は、セキュリティおよびコンプライアンスに対する懸念と、新たなサイロを生み出す懸念を持っている」と指摘した。
その2つのうち、「セキュリティおよびコンプライアンスに対する懸念は縮小し、大きな課題にはならなくなりつつあるが、クラウドの広がりとともに、サイロ化に対する懸念は高まっている」という。
そしてサイロ化について「クラウドサービスごとに、異なるテクノロジー、手法、プロセス、専門知識があり、別々のAPIが提供されている。ソフトウェアもクラウドごとに固有のものが必要になり、クラウドで新たなサイロが生まれているのが実情だ。だが、VMwareは、複数のクラウドにまたがるコントロールプレーンの役割を果たし、複数のクラウドを行き来できるようにし、安全な接続、管理を可能にするIT運用チーム向けの単一のプラットフォームを提供する」などと述べた。
また、クラウドへの移行において、3つの各フェーズにおいて立ちはだかる課題を指摘。プライベートクラウドへの移行では、「サイロ化されたITチームからのクラウド組織への変革が課題」であるとし、VMwareでは、その解決策として、Virtual SAN、vSphere、NSXによって構成される統合SDDCプラットフォームの上に、自動化、運用、コスト管理を行うVMware vRealize Suiteを提供。
「95%のユーザーが、この領域にいる。プライベートクラウドの構築では仮想インフラだけでなく、管理や運用レイヤが重要であり、さらに、ネットワークをパブリッククラウドに拡張する必要がある。vRealize Suiteによる自動化と、NSXによるネットワークの仮想化によって、オンプレミスからクラウドへの移行を支援することができる」と説明した。
また、ハイブリッドクラウドへの移行においては、「クラウド間で一貫したポリシーとプラットフォームの実現が課題になっている」とし、ここでは、あらゆるニーズに対応することができるvCloud Air Network(vCAN)の存在が大きいことを強調した。vCANでは、全世界100カ国以上で、4000社以上のサービスプロバイダが展開。日本では、IIJ、NTTコミュニケーションズ(NTT Com)など6社が代表的なvCANパートナーとして展開していることに触れた。
VMware Cloud on AWSの持つ意味
また、ここではVMware Cloud on AWSについて説明。「これは、両社で共同開発したAWSのデータセンター上で動作するVMware Sphereベースのサービスであり、まずは米国からスタートするものになる。VMwareによるコンピューティング、ストレージ、ネットワークといった仮想化機能や各種ワークロードのサポートといった特徴と、AWSの柔軟な課金体系や幅広いクラウドサービスを組み合わせて、両社が持つ最高のサービスを顧客に、ワンストップで提供することができる。ディザスタリカバリやバックアップ、地域的な拡張といったニーズに加え、データセンターの統合やアプリの移行といったニーズ、さらにはキャパシティを柔軟に変更して、必要に応じて、オンプレミスのデータセンターとクラウドの両方の選択できるワークロードの柔軟性を求めるニーズにも対応できる」とした。
アッペンツェラー氏は、VMware Cloud on AWSにおいて、VMwareとAWSが協力関係を結んだ背景として、「エンタープライズユーザーの多くは、すでにAWSを利用しており、そこに既存のアプリを移行し、クラウドネイティブの環境で利用したいというニーズは非常に高い。だが、いくつかの課題があり、リスクが高い。それを解決するためにVMware Cloud on AWSを活用することができる。AWSにとっては、将来にわたってハイレベルのサービスを活用してもらえること、VMwareにとっても、ユーザーが継続的にVMwareの製品を使ってくれるというメリットがある」とコメントした。
そして、ネイティブパブリッククラウドでは、開発者のスキルセットの変革が課題になるとしながら、ここでは、Cross-Cloud Servicesによって、どのクラウドでエンタープライズアプリが動作しているのかということを管理し、アプリが消費するリソースを把握するとともに、コストの最適化や、複数のクラウドに渡るワークロードの保護接続、セキュアなネットワーク環境の実現などを提供することができると語った。
一方、アッペンツェラー氏は、自社パブリッククラウドサービス「vCloud Air」を売却する理由について説明。「Cross Cloud Architectureを実現する上での長期的な決断として、データセンターを走らせることはやらないと決めた。Cross Cloud Architectureでは、クラウドのためのソフトを提供することになる」とコメントした。