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NECの新野社長が中期経営方針への取り組みを説明、「社会ソリューション事業への注力を継続する」

2016年度上半期連結業績も発表、営業利益は8割減

 日本電気株式会社(以下、NEC)は10月31日、2016年度上半期(2016年4月~9月)の連結業績を発表した。

 売上高は前年同期比8.3%減の1兆2010億円、営業利益は同80.3%減の37億円、経常利益は同43.8%増の150億円、当期純利益は同52.4%増の131億円となった。

2016年度上半期の実績サマリー

 NECの新野隆社長兼CEOは、「売上収益は、エンタープライズが唯一増収増益となったが、パブリックやテレコムキャリアが減少した。だが最終利益は、レノボNECホールディングスの一部株式の売却益により、約200億円を計上。日本航空電子工業の子会社化による税金費用の見直しなどが寄与し、増益となった。7月時点の見通しに比べると、売上げは弱かったものの、営業利益および当期純利益は概ね想定通り」と総括した。

 また、「37億円という営業利益の落ち込みは、売上高の減少によるもの。第1四半期は良くなかったが、第2四半期は前年同期と比較しても回復しているという手応えを感じている。特に官庁系、金融系は下期についても拡大が見込める。補正予算も刈り取りの時期に入ってくる」との見通しを示した。

NEC 代表取締役 執行役員社長兼CEOの新野隆氏

 セグメント別では、パブリックの売上高は前年同期比16.0%減の2821億円、営業利益は前年同期から10億円減の134億円。官公庁向けで前年同期にあった大型案件の反動があったこと、公共向けでは消防・救急無線のデジタル化の需要が一巡したことが影響。費用効率化などを図ったものの減益になったという。「ITサービスで10%減収、社会インフラで15%減収になった」とした。

セグメント別の実績

 エンタープライズは、売上高が前年同期比5.8%増の1552億円、営業利益は前年同期から33億円増の132億円。製造業向けが堅調に推移。システム構築サービスの収益性改善に寄与した。

 テレコムキャリアは、売上高は前年同期比13.8%減の2829億円、営業利益は前年同期から85億円減の43億円。国内外の通信事業者の設備投資が低調に推移したほか、円高影響で約150億円がマイナス要素になったという。

 システムプラットフォームは、売上高は前年同期比2.3%減の3398億円、営業利益は前年同期から14億円減の78億円。前年同期に、サーバーの大型案件があった反動が影響し、ハードウェアが減少したという。

 その他事業では、売上高が前年同期比6.8%減の1411億円、営業損失は前年同期から47億円減のマイナス72億円の赤字となった。「携帯電話端末事業移管の影響と、スマートエネルギー事業の減少が影響している」という。

 新野社長は、下期に向けた課題として、「レノボNECホールディングスの株式の一部譲渡を実施したこと、日本航空電子工業に対する公開買い付けを今後開始する予定であることに加えて、ぞれぞれの事業の進捗の変動要因の見極めが必要である」とし、パブリックでは、航空・宇宙防衛領域における案件進捗、不採算案件の抑制など、エンタープライズでは国内IT投資の見通しや、収益性改善の進捗など、テレコムキャリアでは国内外通信事業者の設備投資動向や為替変動の影響など、システムプラットフォームではハードウェアを中心とした売上げ収益の拡大など、その他事業ではスマートエネルギー事業の損益改善や海外事業の拡大に取り組む必要がある」とし、「このあたりをきちっと詰めることが計画達成には必要である」とした。

 2016年度業績見通しについては、期初計画を据え置き、売上高は前年比2%増の2兆8800億円、営業利益は86億円増の1000億円、当期純利益は259億円減の500億円とする。

 「経営スピードの向上と実行力の強化により、年間計画である当期利益500億円を確実に達成し、6円配当を継続する」と述べた。

業績予想サマリー

 一方、中期経営方針への取り組みについては、「課題をふまえた変革を実行し、社会ソリューション事業への注力を継続する」と語り、「収益構造の立て直し」、「成長軌道への回帰」という2つの取り組みを重視する姿勢を示した。

中期経営方針

 収益構造の立て直しでは、「課題事業および不採算案件への対応」、「業務改革推進プロジェクト」、「開発・生産機能の最適化」をあげる。

 「課題事業および不採算案件への対応」では、スマートエネルギー事業において、電力会社の投資抑制や競争激化、補助金打ち切りに伴う小型蓄電の需要減により、前年同期比で50億円の減収、20億円の減益という当初見通しよりも厳しい状況にあることを示しながら、「2016年度中に100人規模の人員シフトを実行。国内電力会社向け事業をパブリックBUに移管。小型蓄電のハードウェアの自主開発の見直しを行う」としたほか、不採算案件の抑制では、2016年度上期にIT関連の不採算案件が大幅に減少したことに触れ、「前年同期比で50億円の改善を行った。新規の不採算案件発生の予防強化に取り組む」とした。

課題事業、不採算案件への対応

 「業務改革推進プロジェクト」では、NECマネジメントパートナー(NMP)を核に推進。NECに加えて、国内関係会社のスタッフ業務を集約し、ワンマネジメント化。「計画の90%が進捗しており、NMPは4300人体制とした。NECおよび関連会社の約200億円のIT資産をNMPへ集約。海外現地法人のスタッフ業務の集約および共通化を進めており、中華圏で実行しているシェアドサービスを今後、他地域へ展開していく」とした。

 さらに、NMPにおいて、組織横断の業務改革活動を35テーマで実行中だとし、「AI技術やロボットを活用した業務効率化に取り組んでおり、コンタクトセンターの一元化や定型業務の自動化などを進める」という。また、NMPの改革ノウハウを間接スタッフ業務以外にも展開する考えも示した。

業務改革推進プロジェクト

 「開発・生産機能の最適化」では、国内ハードウェア開発、生産子会社を、2017年4月1日付けで再編、統合することを新たに発表した。対象となるのは、NECプラットフォームズ、NECネットワークプロダクツ、山梨日本電気、NECエンジニアリングおよび日本電気通信システムの装置開発部門。2017年度および2018年度で、50億円の統合効果を見込むという。

 同社ではすでにソフトウェア会社の統合を行っているが、「NECソフトウェアの7社を1社に統合したことで、ダイナミックに動くという点でのメリットが出ている。いまは、新たな技術にリソースをシフトしていくのは重要な課題であるが、その点でもリソースのコントロールがしやすくなったといえる」などと述べた。

開発・生産機能の最適化

 一方、成長軌道への回帰としては、セーフティ事業、グローバルキャリア向けネットワーク事業、リテール向けITサービス事業を注力事業とし、「社会ソリューション事業のグローバル化に取り組む」とした。

 セーフティ事業においては、「具体的な事例の獲得などに進捗がみられている」とし、ブラジルのITセキュリティ企業であるArcon社の買収により、ブラジルでのITセキュリティ事業を拡大。インドのアドハープログラム(個人認証ID制度)に、NECの生体認証システムが採用されていること、コロンビアのサッカースタジアムへの映像監視システムの提供や、南オーストラリア州警察への顔認証システムの提供。生体認証関連事業に関する北米拠点をワシントンD.C.に設置したり、オーストリアにセキュリティ監視拠点を設置したことに触れた。

セーフティ事業

 また、人工知能への取り組みとして、2016年9月に、AI技術ブランドである「NEC the WISE」を策定。大阪大学や産業総合研究所、東京大学とともに、AIを活用した将来の社会価値創出に向けた共創を行っていることを紹介した。

AIへの取り組み

 そのほか、SDN/NFVへの取り組みでは、欧州、中近東、北米でTier1オペレーターから、合計5件の商用案件を獲得。「現時点では名前は明らかにできないが、グローバルキャリアにおけるSDN/NFVの導入機運が高まっていることを感じる。こうした導入機運が高まっている背景には、2016年5月に発表したソリューション体系であるAgile Virtualization Platform and Practiceを活用した受注活動の促進があげられる。キャリアによる迅速な新サービス導入をサポートし、導入効果の見える化、コンサルティングの提供などにより、市場の立ち上げおよび拡大に取り組む」とした。

SDN/NFVへの取り組み

 さらに、GEとのIoT分野における包括的提携についても言及。「IoTエコシステムの実現、両社テクノロジーの融合によるIoT分野での新たな価値創造、PREDIXのサポートおよびトレーニング体制の拡充、IT・OT、サイバーセキュリティ領域のソリューション開発およびマーケティング推進の4つの観点から取り組む。両社の提携により、日本企業向けIoTソリューションの開発、導入、運用保守に至るまでの一貫した体制を構築していくことができる」などと述べた。