インタビュー

チェック・ポイントの最高戦略責任者が語る、新CEO下の新体制と買収戦略

 2024年12月、Check Point Software Technologiesでは長年CEOを務めていたギル・シュエッド(Gil Shwed)氏が取締役会長に就任し、新たにナダヴ・ザフリール(Nadav Zafrir)氏がCEOに就任した。新体制となった同社が2月に開催したアジア太平洋地域における年次イベント「CPX 2025 Bangkok」では、ザフリール氏が同地域の顧客の前に初登場し、「AI時代におけるハイパーコネクテッドな世界を保護する」と熱く語っていた。

 ザフリール氏は、セキュリティやAIなどの分野に特化するベンチャーキャピタル、Team8の共同設立者だった人物で、以前はイスラエル国防軍のサイバー司令部を設立し、エリート部隊の司令官も務めていた。

 残念ながら今回のイベントでザフリール氏がメディアのインタビューに直接応じることはなかったが、最高戦略責任者を務めるイタイ・グリーンバーグ(Itai Greenberg)氏へのインタビューで、ザフリール氏について、そして新体制におけるCheck Pointの戦略を聞いた。

Check Point Software Technologies 最高戦略責任者 イタイ・グリーンバーグ氏

――新CEOにナダヴ・ザフリール氏が就任しました。まずザフリール氏の印象を聞かせてください。

 彼はCheck Pointを新たな高みに押し上げるため、多大なエネルギーを持ってやって来ました。これまでにサイバーインテリジェンス組織での豊富な経験があり、サイバー空間の保護について、そしてハッカーの考え方や行動についても熟知しています。また、サイバーセキュリティのスタートアップ企業の立ち上げにも多数関わってきており、イノベーションの管理についても理解しています。Check Pointでは、彼の知識と経験を取り込み、イノベーションを加速したいと考えています。

――ザフリール氏と、前CEOであるギル・シュエッド氏の最大の違いは何ですか?

 シュエッド(前CEO・現会長)は根っからの技術者で、性格は内向的なタイプです。一方、ザフリールは非常に外交的で、人と会うためにさまざまな場に出掛けていくのが好きなので、これが2人の大きな違いといえます。両氏それぞれ、人の管理方法や技術へのアプローチ、市場開拓の手法など、非常に異なるスタイルを持っているので、これから新たな可能性が生まれてくるでしょう。

――ザフリール氏に何を期待しますか?

 私をはじめとするCheck Pointの従業員に、最高の成果を求めてもらいたいですね。また、素晴らしい人材を招き入れ、顧客の声に耳を傾け、改善を続けてほしいと考えています。さらには、イノベーションの精神と情熱をCheck Pointに持ち込むとともに、ここでの取り組みを楽しんでもらいたいと思います。

Check Pointの買収戦略について

――では、最高戦略責任者として、買収戦略について聞かせてください。Check Pointは、少なくとも1年に1社~数社を買収するなど、企業買収に非常に積極的です。どのような方針で買収を決定するのですか?

 まず、買収する前にCheck Pointの戦略として、重点を置く分野は何か、有機的に、あるいは買収を通じて投資を強化する必要がある分野はどこかを検討します。それが社内で開発できるものか、それとも外部から持ち込んでより迅速に対応すべきかを考えるのです。その上で、優秀な企業に巡り会った際には、その人材や技術、Check Pointの戦略との整合性を見極め、適正な価格で買収できるのであれば買収に進みます。

――2024年8月にはCyberintを買収しました。この買収はどのような経緯で実現したのでしょうか。

 Check Pointの戦略は、ハイパーコネクテッドの世界で顧客を保護することで、そのためにハイブリッドメッシュセキュリティアーキテクチャを提供しようと考えています。ただし、このハイブリッドメッシュは相互接続されているものだけを保護します。接続されていないダークウェブや、ソーシャルメディアで何が起こっているかはわかりません。ウェブサイトの偽装やソーシャルメディアのなりすましなどにより、認証情報が搾取され、ダークウェブでその情報が売買されていてもわからないのです。この課題に対応する必要があると考え、自社開発に取り組むか、外部の技術を買収するか検討した際に出会ったのがCyberintです。

 Cyberintの技術は、ダークウェブやソーシャルメディアも含めさまざまなソースから脅威インテリジェンスを検出します。偽のウェブサイトやなりすましを発見し、サイトやアカウントを削除するなど、問題を発見するだけでなく、その問題の解決策を見いだし、修復まで実行するのです。非常に成長している企業で、アプローチすることにしました。

――AIの分野はどうでしょう? 注目の分野ですが、AI技術の買収は検討していますか? それとも社内での開発に注力するのでしょうか?

 両方です。社内でAI技術の開発に取り組むことはもちろん、優れたAIソリューションを持つ企業があれば買収も検討します。パートナーシップによってもこの分野には取り組んでおり、例えばNVIDIAとの強力なパートナーシップによってチップセット内のAIを保護しています。

――AIの保護について、ほかにどのような取り組みをしていますか?

 Check Pointのソリューションは、ユーザーがどのパブリックLLMを使用しているのか、どのように使用しているか、どのようなデータを送信しているか、何をブロックする必要があるかを管理します。ユーザーが機密データをLLMに送信するのをブロックできますし、企業がAIアプリケーションを構築する際にもプロンプトを保護し、APIを保護し、AIプロセスを保護します。これは非常に重要なことです。