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MUFGとGoogleが戦略的提携、AIエージェントによる「自律型金融」を実現へ
2026年5月8日 06:15
株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)は7日、Googleとのリテール領域(個人向けサービス)における戦略的提携に合意したことを発表した。
同日に開催された記者発表会において、MUFGの山本忠司氏(執行役専務 リテール・デジタル事業本部長 兼 グループCDTO)は、この提携について「総合金融サービスとして進化を続けているエムットを、さらに非金融の世界へ拡張し、日常へ浸透させていく」と説明した。
提携は3つの柱からなる。
目玉といえるのは、AIエージェントによる自律型金融への取り組みだ。買い物での商品選択から購買、決済までをAIエージェントが自律的に支援する、「Agentic Commerce」や「Agentic Payments」と呼ばれる分野を実現する。
また、データマーケティングの高度化と、Googleのサービスと金融サービスの連携にも取り組む。
山本氏は背景として、金融を取り巻く環境が大きな転換点にあることを挙げた。金利のある世界が定着し、AIが日常浸透して金融のあり方も変化。さらに消費者行動として、選択肢が増えた結果、消費者が選ぶ負荷が増大しているという。
「この3つが同時に起きていることから、金融では、調べて、選択し、決定するというお客さまの負荷を下げ、生活の流れの中で自然に機能することが求められている」(山本氏)。
商品選択から決済までAIエージェントが自律的に実行する「自律型AI金融サービス」開発へ
提携の1つめの柱である「AIエージェントによる自律型金融」について、山本氏は、同じようにAIが相手をする金融サービス「対話型AI金融サービス」との比較で説明した。対話型AI金融サービスでは、AIに対してユーザーが問いかけて相談し、ユーザーが判断する。それに対して自律型AI金融サービスでは、ユーザーが事前に設定した目標や条件をふまえて、AIエージェントが状況に応じて探し、判断し、選び、実行するという一連の行動を、ユーザーの承認を前提にAIが自律的に行う。
これを山本氏は「“考えて操作する金融”から“方針を決めて安心してAIに任せられる金融”へ」と表現した。
今回の提携により、MUFGがこうした金融エージェントを、Google Cloudの技術支援を受けて開発する。
自律型AI金融サービスにおいて、購買行動がどうなるかの具体的な顧客体験については、イメージ動画で説明された。例えば、家にあるミルク缶を写真に撮るだけで、商品を認識し、価格や到着日などを比較して、一番お得なミルク缶を推薦する。さらに、お得な支払い方法も提案。ユーザーは最後に承認するだけで、自動的に購買と決済が実行され、家計データも一目で分かる形で表示される。
このうち、撮影から商品検索までが「Agentic Commerce」、決済手段の提案から決済の実行、家計データの見える化が「Agentic Payments」だ。
「これは特定の銀行アプリや決済アプリの中に閉じた仕組みではない」と山本氏は強調する。AIエージェントの入り口としては、検索サービスや、生成AIアプリ、小売りサービス、金融サービスなど、さまざまなサービスに対応する。「どのようなインターフェイスから始めても、MUFGの金融AIエージェントが安全・安心で金融取引を実行する仕組みを目指していく」(山本氏)。
例えばMUFGにはデジタルバンキングのアプリがあるが、「自社アプリだけでなく、自社以外の、小売りや旅行会社などのアプリの中でAIエージェントが動いて、それらのAIエージェントとMUFGの金融AIエージェントがつながって、最後に決済する、という世界を作ろうとしている。いろいろなアプリをつなげるためには、標準規格にのっとることが必要となる」と山本氏は説明した。
一方、記者発表会に出席したグーグル・クラウド・ジャパン合同会社 代表 三上智子氏は、MUFGが自律型AI金融を実現するためのパートナーとして、Google Cloudを選んだ理由として、3つの優位性を挙げた。
1つめは、GoogleのAI技術と、それを膨大なユーザーを持つコンシューマー向けなどのサービスで社会実装している実績だ。2つめは、Agentic CommerceやAgentic Paymentsを実現するための標準規格を提唱していることで、AIエージェントによる決済の「AP2」、AIエージェントによるショッピングの「UCP」、エージェント間通信の「A2A」がある。3つめは、MUFGを含む金融機関でも採用されているミッションクリティカルなシステムを支える堅牢なインフラだ。
上記の山本氏による「標準規格にのっとることが必要」との発言も、この2つめの標準規格のポイントを受けたものだと思われる。
今回の提携でGoogle Cloudが提供するものとして、三上氏は「3つの約束」を挙げた。1つめは、最新のAIモデルやAI統合基盤であるGemini Enterpriseなど最先端の技術を一早く提供すること。2つめは、金融サービスへ高度な技術を実装するために、グローバルでの実績を含めた豊富な経験とノウハウを提供すること。3つめは、先進のエンジニアリングリソースを投入して、プロトタイプの迅速な開発や実証実験を通じてアイデアを形にし、市場への適合性をスピーディーに検証することだ。
なお、自律型AI金融のスケジュールとしては、「2026年度内にはPoCを行い、実装に向けた検証をする」と山本氏は説明した。
マーケティングのAIエージェントが一人一人に合わせて最適な内容とタイミングで情報を届ける
提携の2つめの柱である「データマーケティングの高度化」について、まず山本氏は「これまでもデータマーケティング領域でAI活用を進めてきた」と語る。具体的には、Webページの改善の高速化や、顧客一人一人にパーソナライズされた情報提供、広告動画生成などを推進し、「一定の手ごたえと成果を得ている」(山本氏)という。
ただし、「現在のAI活用は部分部分にとどまっており、今後はマーケティングプロセスにおける一貫したAI活用に向けて、さらに進化の道があると考えている」と山本氏は課題を挙げる。
そこで今回の提携により、MUFGの持つさまざまな顧客接点と、グループのデータ基盤、GoogleのGeminiなどのAI技術を活用して、マーケティングプロセスのPDCAの高度化に挑戦していく。「将来的には、マーケティングのAIエージェントが、お客さま一人一人の状況に合わせて最適なタイミングで最適な情報をお届けする、より先進的なサービス提供を目指す。決して押し売りするのではなく、お客さまの『調べる』『選択する』『意思決定する』という負担を減らし、安心して任せられる金融体験を提供するという、AI時代にふさわしい次世代のデータマーケティングの実現に貢献する」(山本氏)。
Googleのサービスと金融サービスを連携
提携の3つめの柱として、「Googleのサービスと金融サービスの連携」によって、エムットが買い物や健康管理、学び、レジャーなど日常のさまざまな行動やシーンに浸透して自然に利用されることを目指す。さらに今後は、金融と非金融を合わせたサービスを段階的に広げていくことも予定している。
まずはヘルスケア分野。MUFGの家計簿アプリ「Moneytree」にヘルスケア機能を実装して、家計管理とヘルスケアを組み合わせた新たなサービスをリリースすることを予定している。あわせて、このサービスを利用している顧客に、GoogleのスマートバンドFitbitの最新デバイスを提供する。
「Moneytreeの新サービスでは、日々の生活習慣とお金の使い方の関係を可視化し、データの傾向に基づく気付きを届ける。さらに、健康習慣を継続されているお客さまには、リワードや特典を付与する仕組みも用意する。そして、このサービスをMUFGのさまざまなサービスの入り口の1つにしていきたいと考えている」(山本氏)。
具体的な機能については、デモ動画で説明された。Google Fitbitの健康データとMoneytreeの家計データを組み合わせることで、どのような生活がどのような支出傾向につながっているのか、分かりやすく提示する。さらに、リワードや特典によって、行動変容を促す。
なおスケジュールについては「2026年秋ごろローンチ予定」と山本氏は説明した。
次に、顧客の手続きや相談などに、GoogleのAIを搭載した次世代3Dビデオ会議システム「HP Dimension with Google Beam」を導入し、対面さながらの自然なコミュニケーションを実現する。
まずは、一部拠点への設置を想定。Google Beamが日本でローンチするタイミングで実用化を検討する。
そのほか、エムットとGoogleの協業記念キャンペーンとして、アプリから三菱UFJ銀行口座を新規開設し、キャンペーンにエントリーした顧客に、YouTube Premiumを3か月分無料にする。2026年夏ごろに実施予定だ。
























