インタビュー
データセンターの貫通部を保護する、Roxtecのシーリングソリューション
2025年1月22日 09:00
スウェーデンのRoxtec International AB(以下、Roxtec)は、建物を通るパイプやケーブルの貫通部を密閉するための区画処理材を扱い、独自技術の「Multidiameter」を強みとする世界トップレベルのメーカーである。近年では、データセンター向けの製品も展開しており、シェアを伸ばしているという。今回、本国から来日したRoxtec CEOのMagnus Holmberg氏と副社長のMarcus Karlsson氏に、同社の製品と戦略について伺った。
――Roxtecはどのような製品を提供しているのでしょうか。
Holmberg氏:データセンターもそうですが、建物には壁や隔壁があり、これは外部からの侵入を防ぐためのものですが、一方でそうした壁には電線や通信線を通したい、配管を通したいといった要求があります。そうなると、壁に穴を開けることになるのですが、線や管を通そうとするたびに穴を開けて、隙間を粘土のようなパテで埋めて、といった作業の繰り返しの結果、たいへん無秩序な状態になってしまうことがよくあります。
そうした状態は見た目にもよくありませんが、建物の健全性という意味でも弱くなってしまいます。たとえば、水が浸入しやすくなることが考えられますし、あるいは耐火の面でも弱くなります。また、ガスの侵入や、電磁ノイズの侵入など、さまざまなリスクが増えてしまいます。
我々の製品は、こうした建物や設備の貫通部における状況を改善するためのソリューションです。製品としては、ケーブルなどを貫通させる開口部に取り付けるフレームと、ケーブル周囲と開口部を密閉するシーリングモジュールなどで構成されます。
モジュールのレイヤーは手で剥がすことができ、現場でケーブルの太さに合わせて調整できます。そしてこのモジュールをフレームに配置して、圧縮ユニットにより全体を密着させます。フレームにはあらかじめ複数のケーブルやパイプを通すためのスペースを用意できるため、新たにケーブルを通す場合も壁に穴を開け直す必要がありません。
――製品はどのような場所で使われているのでしょうか。
Holmberg氏:Roxtecの事業領域としては、艦船や洋上風力発電などの海洋向け製品、産業およびインフラ設備向け製品、電力設備向け製品を主としており、そうした設備で利用されています。データセンターは産業およびインフラ設備に含まれますが、この中でもデータセンター向けの事業は、ここ10年ぐらいで割合が増えています。
データセンターや電力設備のような場所では、Roxtecの製品は防水対策という点がまず有効で、水の浸入経路となりうるケーブルの引き込み口をしっかりと止水できます。世界的に水害が多発しておりますし、その際に電気設備や通信設備など高価な機器が水没してしまうと、多額の損害が発生してしまいます。そうしたリスクから設備を保護できます。
また、機械的に密閉する仕組みの製品なので、工事作業者の熟練度などに施工品質が左右されず、確実に設備を保護できます。まず防水について説明しましたが、耐火性能であるとか、小動物の侵入を防ぐとか、ガスの侵入などといった問題にも、厳格に対応できます。また、電磁ノイズの侵入対策にも有効です。こうした点が評価され、さまざまな設備で使用されています。
――防水や耐火など以外に、データセンターにとってのメリットはどのようなものがあるのでしょうか。
Karlsson氏:将来の増設や改修に使える予備モジュールをあらかじめ用意しておけるので、配線を追加するたびに穴を開け直すといったことがなく、現場で簡単に作業できる点がまず挙げられます。外から建物へのケーブルの引き込みだけでなく、建物内の配線でも同様かと思います。
また、室内の気密性を高めるという点でも有効です。Roxtecの製品は、バイオ事業や半導体事業などにも採用されていますし、データセンターのように気密性能をしっかり保っていきたいという顧客からの要望で、貫通部から空気が漏れることでどのくらい冷却性能に差が出るのかといったシミュレーションも実施したことがあります。
また、ケーブルだけでなく水を通すパイプにも対応できますので、今後はサーバーの水冷などのために、外部から水を引き込みたいといった要求にも対応できます。
――データセンターでの採用状況はどのようなものでしょうか。
Holmberg氏:海外ではさまざまな規模のデータセンターで利用されていまして、大手事業者のデータセンターにも採用されています。日本のデータセンター採用事例はまだ多くはありませんが、グローバルな事業者は日本にもデータセンターを開設していて、そうしたデータセンターで採用されています。
今後新設されるデータセンターだけでなく、既設データセンターへの導入や、施設をリニューアルする際に導入したいといった要望にも対応していきます。我々は日本にもエンジニアが在籍していまして、設置の際には必ず現場を見させていただいています。現場によって状況が違いますし、場所の制約などもありますので、設置に向けたアドバイスもさせていただきます。まずは、ロクステック・ジャパンまでご相談いただければと思います。
――ありがとうございました。