インタビュー

日本オラクルのオーバーマイヤー社長に聞く、日本にデータセンターができる意味

 米Oracleが、米国サンフランシスコで開催している年次イベント「Oracle OpenWorld 2018」において、日本オラクルのフランク・オーバーマイヤー社長兼CEOが取材に応じた。

 今回のOracle OpenWorld 2018では、米Oracleのラリー・エリソン会長兼CTOが、「Generation 2 Cloud(第2世代のクラウド、以下:Gen 2 Cloud)」として、Oracle Cloud Infrastructureを発表したほか、日本においては2019年5月にも、このGen 2 Cloudに対応したデータセンターを東京に開設するという。さらに2019年12月までには、大阪にもデータセンターを開設することが明らかにされた。

 オーバーマイヤー社長兼CEOは、「日本の顧客はセキュリティに対する関心が高い。セキュリティにおいて優位性が発揮できるGen 2 Cloudを日本で展開することで、これまで獲得できなかった顧客層にもアプローチできるようになる」などとした。

 なお、取材は共同インタビューの形で行われた。

日本オラクルのフランク・オーバーマイヤー社長兼CEO

これまでアプローチできなかった顧客層にもGen 2 Cloudで働きかける

――今回のOracle OpenWorld 2018のポイントはなにか。

 Oracle OpenWorld 2018で行われた発表のポイントは2つである。ひとつは、セキュリティを強化した新たなクラウドインフラであるGen 2 Cloudを発表したこと。もうひとつは、自律化の進化により他社のクラウドサービスとの差が大きくなっている点である。

――日本におけるGen 2 Cloudのニーズをどう見ているのか。

 日本においてはAWSが広く利用されており、さらにMicrosoftも日本にデータセンターを設置している。いよいよ日本オラクルも、東京にデータセンターを開設することができ、そこから数カ月後には大阪にもデータセンターを開設する予定である。

 私が日本オラクルの社長に就任して約1年半を経過したが、その間、エンタープライズユーザーとの関係強化だけでなく、日本のシステムインテグレータとの関係強化にも力を注いできた。日本では、システムインテグレータの存在が極めて重要である。今後、オンプレミスの基幹システムをクラウドに移行する場合には、システムインテグレータとの協力関係が大切であり、Gen 2 Cloudにおいても一緒に普及戦略を推進していくことになる。

 また基幹システムのクラウド移行においては、「スーパーセキュリティ」といえる環境を実現していることが必要であり、その点では、他社のクラウドの仕組みと異なるGen 2 Cloudは強みになる。

 日本の顧客は、セキュリティに対する関心が高い。Gen 2 Cloudを日本で展開できれば、これまで獲得できなかった顧客層にもアプローチできるようになる。日本の企業はデータベースの暗号化や、監査への対応、データセンターとエッジを結ぶネットワークを含めたエンドトゥエンドでのセキュリティに期待をしている。

 もともと日本オラクルは、日本において32年間もの実績を持ち、あらゆる業種において、数多くのエンタープライズ企業のデータを取り扱ってきた経験がある。いかにセキュアに運用するか、データをどう管理するのかといったことには長けている企業であり、顧客やパートナーとの信頼関係が構築されている。それをもとに、よりセキュアなクラウドインフラを提供できるようになる。

日本のデータセンター設置に対する期待

――東京および大阪へのデータセンターの開設は、日本の市場にどんな影響をもたらすことになるのか。

 データセンターを東京と大阪に開設できることを、とても楽しみにしている。これはパートナーにとっても顧客にとってもプラスであり、日本オラクルにとってもプラスになる。日本においてクラウドビジネスをさらに加速できる。

 これから、日本オラクルのすべての顧客に対し、自律化したクラウドサービスに関しての説明をしたいと思っている。現在、通信・金融・ユーティリティなど、あらゆる業種において、Oracle Autonomous Databaseに関する50以上のPoCを実施している。だが、このPoCは、現時点では日本以外のデータセンターを活用したものになっている。日本のデータセンターを活用できるようになると、PoCの段階からさらに一歩進めることができる。

 日本ではオンプレミス型の基幹システムにおいて、50%以上が当社のデータベースを利用している。この大きな稼働資産では、温度差やスピードの違いはあるが、多くの顧客がクラウドに移行したいと考えている。これらの顧客資産をいかにクラウドに移行させるかが大切である。

 日本のユーザーからは、日本にデータセンターを持ってきてほしいという声を数多く聞いていた。日本にデータセンターがあれば、オンプレミスで利用しているデータベースを当社のデータセンターに移行させることができるという声も数多く聞いていた。そのため私自身も、日本へのデータセンターの設立に力を注いできた。

 日本のデータセンターは、特定の顧客や特定の業種、特定のパートナーではなく、あらゆる人たちが参加できるようにしていくことになる。エンタープライズのすべての顧客やあらゆるパートナーを新たな環境に招き、使ってもらいたいと考えている。多くの人に使ってもらうほど、日本の市場にとってはいいことになるだろう。

 これまでは、データセンターが完成してからお客さまに使ってもらうとか、パートナーに評価してもらうことが多かったが、キーとなる顧客やパートナーに対しては、早めに提案をしていきたい。日本のデータセンターが完成することで、提案の幅が広がるのは確かである。

 ただし、すべてをOracleのクラウドサービスだけで構成しようとは考えてない。いまはマルチクラウドが前提である。ただし、システムインテグレータが持つアプリと、新たなデータセンターの強みとが組み合わさった提案には期待している。

――日本オラクルは、富士通のデータセンターを通じてクラウドサービスを提供しているが、これもGen 2 Cloudとして提供することになるのか。

 Oracle OpenWorld 2018の会場において、富士通の関係者とミーティングを行い、データセンターのサービスをアップグレードしていく方向で話をしている。これによって、パートナーを通じ、低遅延で、高速で、安定した、堅牢なコネクションを実現したいと思っている。

 私は、多くの人にこうしたサービスを利用してもらうためにも、富士通がデータセンターをアップグレードしてくれることに期待している。データセンターのアップグレードについては複数のやり方がある。その点は日本オラクルが決めるものではなく、富士通が決めることである。

――自律化の進展によって、今後は、DBAの役割にも変化が起こることになるが。

 AIの活用によって、自律化がさらに進展し、DBAの役割が変化するのは明らかだ。だが日本では、簡単に人を解雇することはできない。DBAの役割をどこに向けて発展させるか、どんな役割を担うようにするのかといったことを真剣に考えていかなくてはならない。人材を慎重に扱う必要がある。