インタビュー

実践しているがゆえの強みがある――、「働き方改革推進会社」日本マイクロソフトが提供できること

マリアナ・カストロ執行役員常務に聞く

 日本マイクロソフトは、「働き方改革推進会社」を標榜している。

 それは、単に企業の働き方改革を支援する役割を指しているだけのものではない。自らが働き方改革を実践する立場にあり、会社そのものを変化させてきた実績を持ち、それをもとに日本の企業の働き方改革を推進していくという役割を担うことを意味する。そして実践のために、自らが開発した技術やツールを活用して、働き方改革を推進するための製品群を進化させてきた。

 「働き方改革そのものが、マイクロソフトの行動において中核となる取り組みである」と語るのは、日本マイクロソフト 執行役員常務 マーケティング&オペレーションズ部門担当のマリアナ・カストロ氏。

実践しているがゆえの強みがある――、「働き方改革推進会社」日本マイクロソフトが提供できること 日本マイクロソフト 執行役員常務 マーケティング&オペレーションズ部門担当のマリアナ・カストロ氏
日本マイクロソフト 執行役員常務 マーケティング&オペレーションズ部門担当のマリアナ・カストロ氏

 そして、「マイクロソフトが掲げる企業ミッションを達成する上でも、働き方改革は避けては通れない。それによって、日本の多くの企業に対して、働き方改革を支援することができる」と語る。

 カストロ執行役員常務に、日本における働き方改革の現状や課題、そして、日本マイクロソフトの働き方改革推進会社としての取り組みについて聞いた。

実践しているがゆえの強みがある――、「働き方改革推進会社」日本マイクロソフトが提供できること 「働き方改革推進会社」のカンバン
「働き方改革推進会社」のカンバン

2つの側面で日本という国をとらえられた

――カストロ執行役員常務は、2015年7月に日本マイクロソフトのマーケティング&オペレーションズのゼネラルマネージャーに着任してから、すでに日本での勤務が2年以上となりました。Microsoftの各国拠点で約25年の経験がありますが、日本の社会の特殊性のようなものを感じることはありますか。

 日本に来てから約2年半になりますが、私は、日本の国も日本の社会もとても好きです。コミュニティ意識が強く、助け合いの意識があり、とても住みやすい環境にありますし、その一方で、イノベーションのレベルが高いという点も気に入っています。

 私は、アルゼンチンのMicrosoftに入社して以降、中南米各地の拠点での勤務を経験して、日本マイクロソフトに赴任しました。来日する前の日本のイメージは、とても人が多い国だというものだったのですが(笑)、実際に来てみて、2つの側面で、日本という国をとらえることができると感じました。

 ひとつは、日々をシンプルに過ごすという考え方が浸透している点。もうひとつは、深く高度な社会であるという点です。日本のイノベーション力は世界トップクラスであり、高度な社会を実現していることは多くの人が感じることだと思いますが、この社会が実現されている背景には、日本の文化が大きく影響しているのではないかと感じました。そこに敬意を表しています。

――日本マイクロソフトは、Microsoftの他の拠点と違う部分はありますか。

 マイクロソフトは、全世界190カ国に拠点を持つグローバルカンパニーであり、根幹となる部分は、全世界で共通しています。しかしすべての拠点において、コアとなる考え方が徹底される一方で、Act.Localという考え方を徹底している点に特徴があります。

 それぞれの国が持つユニークな部分は大切にする姿勢があり、例えば、南米の人たちはとにかく陽気でしゃべることが好きですから(笑)、そうした文化にあわせたやり方をしますし、日本では、日本ならではのコミュニケーションの仕方がありますので、それにあわせた手法を採用しています。

 日本独自のやり方というのは当然ありますし、そのやり方については、私自身、リスペクトしています。そして、日本マイクロソフトは、日本の顧客の声を理解し、反映するという役割もあります。これも地域に根ざした手法のひとつといえるものです。

――マイクロソフトは、ダイバーシティを重視する企業です。日本全体において、ダイバーシティへの取り組みが遅れていると感じることはありませんか。

 私は、米国のマイアミに住んでいたのですが、住んでいる人たちの国籍も広く、まさに地域そのものものがダイバーシティの環境になっています。さまざまなバックグラウンドの人たちがいて、いろいろなアイデアが生まれます。

 しかし、私は、日本のダイバーシティが遅れていると感じたことはありません。ただ、ダイバーシティという環境に違いがあるということは感じます。ダイバーシティとひと口に言っても、いろいろな切り口があります。文化や考え方のダイバーシティがあれば、性別、国籍や年齢によるダイバーシティもあります。切り口によっては、日本のダイバーシティが進んでいる部分もあり、大きなチャンスを持っているという領域もあります。

 調査によると、技術系企業で働く女性の比率は、米国よりも日本の方が多いという結果が出ています。これは、女性が技術系企業で活躍できる場が多いということの裏づけでもあります。そして、こうしたダイバーシティを実現する上で、技術は非常に重要な役割を果たします。多くの人が、技術を通じて社会へ参加できるようになり、そこから、イノベーションが生まれることになります。ダイバーシティの実現において、技術は欠かせないものだといえます。

 さらにダイバーシティを実現する上で最も重要なのが、多様な人材がインクルージョン(一体性)するということです。インクルージョンすることで、正しい形のダイバーシティが形成されることになります。

 日本マイクロソフトの経営執行チームには、外国人が7人参加し、女性が3人参加しています。こうした多様性を持った人たちが、一体化しながら、コミュニケーションを行うことで、正しい方向へと向かっていくことができます。

――日本では、政府が旗振り役となり、「働き方改革」を推進しています。日本での働き方改革の取り組みをどう見ていますか。

 いま、日本の企業の多くが、さまざまなレベルで、数々のイノベーションに取り組んでいます。大手企業だけでなく、中小企業でもそれを模索している段階にあり、日本ならではのシンプルで、熟考した上で動くというやり方を踏襲しながら、同時に深いイノベーションに取り組んでいくことを感じます。そして、そのために必要な技術を模索している段階にあります。

日本とアジア全体とのギャップ

 ただ、その一方で、アジア全体と比べて、日本の企業にはギャップが生まれている部分もあります。

――それはどんな点でしょうか。

 マイクロソフトアジアが、2017年2~3月にかけて、313人の日本で働く人を含む、4175人のアジアで働く人を対象に実施した調査では、1週間のうち1日以上をオフィス外で働くとした人は、アジア全体では71%に達しているのですが、日本は41%にとどまりました。

 また、社員のデジタルスキルのギャップに経営者がコミットしている比率は、アジア全体では32%であったのに対して、日本は5%。常に10以上のチームと仕事をしている人は、アジア全体が36%であるのに対して、日本は20%でした。

 さらに、現在の仕事において、非常に高い生産性を発揮できているとした人は、アジア全体では49%に達していますが、日本では9%にとどまり、組織内外で非常に協力的な関係を確立している人はアジア全体では48%であるのに対して、日本は11%。いつでもどこでも柔軟に働けるという人は、アジアの46%に対して、日本は6%と軒並み低い数字になっています。

 こうした点で、日本とアジア全体では大きなギャップがあります。

――日本における働き方改革の課題はなんでしょうか。

 私が話をした日本の経営者のすべてが、「働き方改革」をトップアジェンダに置き、それを通じて競争優位性を発揮したいと言います。

 また、日本においては、多くの従業員がモバイル環境で仕事をしたいと考えており、働き方改革に対する意識を強く感じます。

 しかし、それを実行するために最適なツールがそろっていないという課題があります。働き方改革を支援するためのツールが存在しているにもかかわらず、そのツールの進化に企業が追いつかず、導入が進んでいないのが実態ではないでしょうか。新たな働き方をするために不可欠なセキュリティについても、追いついていないという課題があります。

 多くの社員は、創造性を発揮するための方法を模索しています。特に、“ミレニアル”と呼ばれる若い世代が社会に入りはじめ、彼らは新たなやり方で仕事をして、常にエネルギッシュに活動したいと考えています。

 しかし、そのためのツールがそろっていない企業が多い。今や人材獲得は熾烈であり、そのためには、新たなツールが必要です。そして、経営者は、いつでもどこでも働ける柔軟性を持ちながら、クリエーティブな仕事ができる環境を用意し、社員が力を発揮できる環境を整える必要があります。これが優秀な人材を獲得し、優秀な人材を生かすための条件となっています。

 先日のハロウィーンの日には、私は、午後6時に会社を出て、子供と一緒に、「Trick or Treat」のイベントに参加しました。しかし、翌日の午前8時にはプレゼンテーションを行う予定がありましたから、自宅に帰ってからネットワークでつながり、チームの社員とともに、さまざまな資料を活用したり、情報を共有したりしながら、プレゼンテーション用の資料をまとめあげました。午後11時ぐらいに終わりましたよ。

 いま、すべての会社がこうした働き方ができるわけではありませんが、もし、技術やツールがなかったら、午後6時に家に帰った時点で、翌日午前8時のプレゼンテーションはできないということになっていたわけです。

 自分の生産性を高めることができる働き方は、会社にとっても生産性を高めることにつながります。日本マイクロソフト自身が、新たな働き方を通じて、事例を作っていくことも大切だといえます。

 こうした働き方をしたいと思っている人も多いでしょう。そのためには、働くという文化そのものを変えなくてはいけません。それを変えてくれるのは技術です。テクノロジーがイネイブラーとしての役割を果たすことで、働く文化を進化させることができます。

実践しているがゆえの強みがある――、「働き方改革推進会社」日本マイクロソフトが提供できること 日本マイクロソフト自身が事例を作っていくことも大切だと語る、カストロ執行役員常務
日本マイクロソフト自身が事例を作っていくことも大切だと語る、カストロ執行役員常務

働き方に対する新たな文化を構築する必要がある

――働き方改革を成功させるための要素とはなんでしょうか。

 働き方改革を成功させるためには、まずは、働き方に対する新たな文化を構築する必要があり、働き方の習慣を変えていくことが大切です。また、働き方を改革するためには、新たな技術を採用していく必要があります。そして大切なのは、これらを一緒にやるということです。ひとつだけやっても失敗するだけです。人の意識がそろっていないと、技術を導入しても失敗しますし、技術を導入しても、これを全員が活用しないと意味がありません。

 新たな技術を活用することで、これまでにないコラボレーションが可能になり、それによって生産性を高められますが、つながっている人が同じ環境になければ、旧態依然のままです。一人がPowerBIを利用しても、そこにつながっている人がPowerBIを使っていなければ意味もありません。共通の意識と新たな技術が、組織全体につながっていくことが大切です。経営層と現場の人までがつながり、同じ水準で、組織全体をイノベーションすることが大切です。

 そして、もうひとつ大切な要素は、経営層から意識を変えていくということです。

 例えば、分析レポートを15日間をかけて作成していたとしたならば、できあがったレポートは15日も古い内容です。最新のものを把握しているわけではなく、意思決定も、過去の経験とデータに基づいたものになります。

 経営層は、こうしたことに危機感を持ち、働き方改革に踏み出すことが必要だといえます。

――日本マイクロソフトは、「働き方改革推進会社」というメッセージを打ち出しています。その意味はどこにありますか。そして、なぜ、働き方改革のパートナーは、マイクロソフトでなければならないのでしょうか。

 日本マイクロソフトが、自らを「働き方改革推進会社」としているのには、いくつかの理由があります。

 ひとつめは、働き方改革そのものが、Microsoftの行動の中核であるという点です。CEOであるサティア・ナデラは、『地球上のすべての個人とすべての組織が、より多くのことを達成できるようにする(Empower every person and every organization on the planet to achieve more)』という企業ミッションを打ち出しています。

 人や組織をエンパワーメントするためには、当社自らが働き方改革を行わなくては、それを達成できません。顧客のために重要な取り組みであり、社内にとっても重要な取り組みだといえます。

 もうひとつのポイントは、Microsoftが、働き方改革を可能にする技術を持っていることです。そして、これらの技術は、実際に働き方改革を支援する技術として実証されており、市場においても信頼されている技術であるという点です。

 例えばMicrosoft 365はその最たるものだといえます。Microsoft 365を構成するOffice 365、Windows 10、Enterprise Mobility+Security(EMS)をはじめ、当社が提供するすべての技術と製品が一緒になって、セキュアな環境を実現しながら、働き方改革を行うことができる。

 だからこそ当社は、働き方改革における信頼できるパートナーになることができます。そして、日本において、30年以上の歴史があり、これまでにも日本の企業を支援してきたという実績は、働き方改革においても、日本マイクロソフトを信頼していただけることにつながるのではないでしょうか。ここに、日本マイクロソフトが「働き方改革推進会社」とする理由があります。