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「週休3日」は効果があったのか? 日本マイクロソフトが取り組みの成果を発表

 日本マイクロソフト株式会社は10月31日、大きな注目を集めた「週休3日」の成果を発表した。

 このプロジェクトの責任者である執行役員常務 クラウド&ソリューション事業本部長兼働き方改革推進担当役員 手島主税氏は、「世間的には、『週休3日』と呼ばれたが、正式には『ワークライフチョイス チャレンジ2019夏』という名称の実践プロジェクト。当社も創業から45年を経過し、イノベーションを推進することは容易ではない。特に大変なのは企業カルチャーを変えること。われわれ自身が変革を実践するということでの取り組み」と、あらためて取り組みの背景を説明した。

執行役員常務 クラウド&ソリューション事業本部長兼働き方改革推進担当役員 手島主税氏

 なお、通常の日本企業に比べて進んだ働き方を実践している日本マイクロソフトでさえ、「グローバルのMicrosoftと比べると、メールの利用時間は24%、Ccしている人の数は31%多い、会議時間も17%長く、参加者数も11%多い」といった課題を抱えているという。

 こうした課題を変えるための荒療治ともいえる週休3日は、どんな効果をもたらしたのか。

日本マイクロソフト vs グローバルのMicrosoft

ワークライフチョイス チャレンジ2019夏とは?

 ワークライフチョイス チャレンジとして、日本マイクロソフト側では2019年7月から9月の期間、社員に次の3種類の支援プログラムを提示し、実践を促した。具体的には、自己啓発、家族旅行/レジャー、社会貢献活動の関連費用をベネフィットポイント/ウェルネスポイントで支援している。

For Work

自己成長と学びの視点。仕事につながる学びや自己啓発などを行う。

For Life

私生活やファミリーケアの視点。私生活の充実、家族との時間の充実などを行う。

For Society

社会参加や地域貢献の視点。ボランティア活動などを行う。

ワークライフチョイス チャレンジ2019夏
ワークライフチョイス社員支援プログラム

3つの観点で効果測定を実施

 こうした支援策を踏まえて行われたワークライフチョイス チャレンジ2019夏の成果について、日本マイクロソフトでは「『削減系』として、削減や最小化を目標とする指標群」「『向上系』として、活性化や増加を目標とする指標群」「『満足系』として、社員の気持ちや印象を確認する指標群」という3つの観点で効果測定を行った。

3つの指標で効果を測定

 「われわれは新しい施策を行う際には、必ず効果測定を行う。こうした際に、外部の方から必ず尋ねられるのが、『コストはいかに減りますか?』だが、実は効果はコスト減少だけではない。減ってうれしい削減や最小化を目標とする指標群、活性化や増加を目標とする指標群、社員の気持ちや印象を指標とする指標群の3軸で考える」(日本マイクロソフト マイクロソフトテクノロジーセンター エグゼクティブアドバイザーの小柳津篤氏)。

マイクロソフトテクノロジーセンター エグゼクティブアドバイザーの小柳津篤氏

 その結果、「削減系」では、月あたり就業日数がこれまでの4期と比較し25.4%減となるのは当然だが、紙の使用量が、これまでの4期と比較して58.7%減になったという。また電力消費量も23.1%と、コスト削減につながる減少が見られた。

 「向上系」では、8月の社員あたりの労働生産性が、前年度に比べ39.9%向上。会議時間を短くするために推奨している“30分会議”の実施率は46%、リモート会議実施率は21%、人材交流の指針となるネットワーク数は10%、それぞれ向上したとのこと。

 「この結果は、ぞうきん絞りで(ぞうきん絞りのように社員を締め付けて)実現したものではない。責任範囲と業務コミットメントは下げていないので、効率が上がらないと社員は苦しむことになる。効率よい働き方を進めた結果、使用する紙の量が減った。使用する紙、電力の量が減ることで、廃棄物減少につながるといった循環が生まれた」(小柳津氏)。

効果測定結果

今後のさらなるチャレンジが必要

 こうした数値に表れた効果とともに、日本マイクロソフトが重要ととらえたのが社員アンケート結果だ。今回の取り組みにもかかわらず、仕事のやり方などについて意識や行動に変化がないという社員が3.5%いたという。またライフデザインなどについても、2.9%の社員が変化なしと答えている。社会貢献などに対しては16.5%の社員が変化なしと答えており、これらの変化を促進するためには、さらなる仕掛けや社員の意識変革が必要なことも明らかになった。

 加えて「さらなる今後のチャレンジが必要」としたのが、フリーアンケートにおいて、今回の取り組みへの不満や苦情が10.6%あったことだ。

フリーアンケートにおいて、今回の取り組みへの不満や苦情が10.6%あった

 「不満や苦情を分析したところ、大きく2つの傾向が明らかになった。ひとつは『お客さまが休んでいないのに自分は休みにくい』というもの。もうひとつは、電話サポートなど仕事をする時間が減ると、成果も減るということ。つまり、会社都合で業績が悪くなるというこえだった。これらの答えは、当初から予測していたものではあるが、今後、解決に向けたチャレンジがあらためて必要だと考えられる」(小柳津氏)。

 今回の週休3日を実施する前から、日本マイクロソフトではさまざまな働き方改革を進めてきた。具体的には、2007年に在宅勤務制度を採用し、2011年の東日本大震災で出社できない状況を経て、2012年にはテレワークの日を設け、「いつでも、どこでも、活躍できるフレキシブルワーク環境」を推進。クラウドビジネスが拡大するのとあわせ、賛同企業とともにテレワーク週間を実施してきた。

日本マイクロソフトにおける働き方改革への取り組み

 しかし、それでもグローバルのMicrosoftの中では、日本法人の効率の悪さも目立っているという。メールの利用が依然として多い上に、Ccしている人数も多い。会議参加者の数も多く、会議時間の長さ、参加者数の多さも改善すべき課題とされてきた。

 「例えば会議では、物事を決定する時間よりもレビューの時間が長い。私が参加する会議を例に取ると、私の部門では私の下に2階層あるが、権限をきちんと与えることで私が出席しなくても会議は十分に成立する。こうした取り組みによって時間、コスト削減ができる」(手島氏)。

 会議時間は基本設定を30分、人数は多くて5人、さらにコラボレーションは会議ではなくMicrosoft Teamsを活用する、といった会議作法を社内に促すなど、仕事のやり方を変える提案を社員総会などの場でもアピールしたという。

ワークライフチョイス チャレンジ2019冬で働き方のダイバーシティを実践

 日本マイクロソフトは今回、週休3日という“劇薬”を投入したことで一定の効果はあったと判断。さらに、働き方改革を進めるために、「ワークライフチョイス チャレンジ2019冬」を実践する。これは週休3日を再度開始するのではなく、働き方のダイバーシティを実践するための取り組みになるという。

 具体的には、多様な働き方への、主体的で自律的なチャレンジを促すために、有給休暇の徹底活用や年末年始休暇などとの連動、リモートワークとの併用などを通じて「賢く休む/選んで休む」ことを推進する。短い時間で働くために、スマート会議、Workplace Analyticsによる可視化、業務効率化ツールの提供などを行うほか、新たなチャレンジを楽しむために、アイデアコンテストを実施する。

 さらに、チャレンジの輪を広げていくために、ミレニアル世代向けMINDSプログラムとの連携、JR東日本と共同で駅ナカシェアオフィス「STATION WORK」を活用した実証実験を実施。一緒にチャレンジする“仲間”を募集し、実践ノウハウやソリューションの提供を行っていくとした。

 なお日本マイクロソフトでは、その後も、春、夏とワークライフチョイス チャレンジを継続していく計画だ。

ワークライフチョイス チャレンジ2019冬での取り組み