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新たな働き方で改革を実現――、Microsoft Teamsの可能性に迫る

桑田真澄氏も登壇した、日本マイクロソフト・セミナーレポート

 日本マイクロソフトは、2017年6月9日、東京・品川の同社本社において、「チームコラボレーションが導く新しい働き方改革!-噂のMicrosoft Teams: その可能性に迫る-」と題したセミナーを開催した。

 Microsoft Teamsは、2016年11月2日からプレビュー版の提供を開始。2017年3月15日から、正式版の提供を開始しており、全世界で5万社以上が利用しているという。

 だが、日本において、日本マイクロソフトが同製品に関する説明を公式の場で行うのは、今回が初めてのことになった。

 会場には、情報システム部門や経営層、ユーザー部門などから150人が参加。定員を大きく上回る500人以上の申し込みがあったという。

 なお、同セミナーでは、Teamsを使用してコメントを募集したり、Microsoft Translatorによる自動通訳サービスを提供したり、いった試みも同時に行われた。

Teamsを使用してコメントを募集
Microsoft Translatorによる自動通訳サービスを提供した

企業の働き方改革を支援する3つの製品

 Teamsは、Office 365の新しいチャットベースのアプリケーション。WordやExcel、SharePoint、OneDrive for Businessなどと連携し、社内外をまたいだチームを含む、共同作業を支援するツールと位置づけている。こうしたコラボレーションには、LINEなどのコラボレーションツールを利用するケースもあるが、「IT管理者の悩みの種であるフリーツールの業務利用、シャドーITの問題も解決できる」と述べ、ビジネス向け製品を利用する価値を訴えた。

Microsoft Teamsのトップ画面

 冒頭、日本マイクロソフト 執行役員常務 マーケティング&オペレーションズ担当のマリアナ・カストロ氏は、「日本の企業は、2020年に向けて、働く環境のデジタル化の準備はできているのか」と呼びかけながら、「企業がやらなくてはならないのは、働き方を改革するのでなく、働き方で改革することである。ここに大きなチャンスがある」とあいさつ。

 そして、「マイクロソフトは、ユーザー企業の働き方改革に向けて、最新のクラウドとデバイスでサポートする。ひとつは、My Analyticsによって、AI活用による気づきを与え、時間の使い方を効率化し、改革できる点である。2つめは、Surface Hubにより、共同で情報を扱いながら、会議のやり方を改革できる点。そして、最後がTeams。これは共同作業のためのソリューションであり、共同作業を改革することができる。Teamsでは、文書を同じ場所に保管でき、会話も残すことができる。すべての情報を共有し、新たな働き方で改革ができる」とした。

日本マイクロソフト 執行役員常務 マーケティング&オペレーションズ担当のマリアナ・カストロ氏

個人の生産性からグループの生産性へ関心が移ってきた

 また米MicrosoftのMicrosoft Teams製品部門 ダン・スティーブンソン シニアダイレクターは、「Microsoft Teamsの開発秘話と今後の展望とは」と題して、製品の特徴およびロードマップについて説明した。

米MicrosoftのMicrosoft Teams製品部門 ダン・スティーブンソン シニアダイレクター

 スティーブンソン氏は、「Microsoftは、なぜTeamsを開発したのか」と切り出し、「それは、多くの人の関心が、個人の生産性から、グループの生産性へと移ってきた点が挙げられる。チームとしての作業が増加し、さらに、チームに参加する人の数が増加し、5年前に比べると、1人の社員が所属しているチームの数は、約2倍に増えている。その結果、コミュニケーションの数が増え、社内外のメンバーとも情報を共有したり、場所やタイムゾーンに縛られない情報共有が求められている」との現状を紹介。

 「だが、これまでのOffice 365では、主にeメールを活用したコミュニケーションとなり、オープンな情報共有ができず、迅速な意思決定に適していないという課題があった。またSkype for Businessでは、インスタントメッセージの履歴の問題や、アプリケーションが少ないという問題があり、グループでの共同作業やコミュニケーションには適していないという課題があった。こうした課題を解決するために開発したのがTeamsである」と語った。

 さらに、「MicrosoftはTeamsを開発する上で大きな決断をした。それは、Teamsではチャットを中心にして、その周りに機能を付加することにした点だ」とする。

 そして、「エンタープライズソフトウェアではこうした発想はなかった。だが、チームとして仕事をしたい人が、チャットを通じて仕事を行い、使いたい機能をすべてそろえる必要もあった。LINEなどを通じて、すでに多くの人にチャットが浸透しており、チャットを使いながら、文書を作成したり、メモを取ったり、プロジェクトを立案したり、といったことを行っている」との現状を説明。

 「そこで、Teamsで目指したのは、チャットをチームワークのハブに位置づけて、そこにOfficeのさまざまな機能を入れ、さらに、第三者が開発した多くのアプリを導入することができるようにした。現在、Teamsでは、200種類以上のアプリが動作するが、このほとんどがMicrosoft以外の企業によって作られたアプリである。絵文字を使えるようにし、セキュリティを強化し、チームが必要とする多くのアプリやツールを利用可能にし、情報を共有できるようにした。まさに、プラットフォームによるアプローチであり、OSのようなものである。そして、ソーシャルスペースの経験を、エンタープライズレベルのセキュリティな環境のなかで利用できる」と語った。

Microsoft Teamsはさまざまなアプリを追加して利用できる

 スティーブンソン氏は、Teamsがチャットに基づいて開発されており、情報共有が速くなる点、アプリの追加などが柔軟に行えることからカスタマイズに優れている点、その結果、迅速な意思決定につながる点、どのような会社でも、どのようなユーザーでも使える点などを強調。

 「現代のチームのためのチャット」、「チームワークを実現するためのハブ」、「チームにあわせてカスタマイズ」、「チームが信頼できるセキュリティ」という4つの特徴を、実際のデモを交えて紹介してみせた。

Microsoft Teamsは4つの特徴を持つ

開発者以外の、より多くの人とコミュニケーションを

 また、ビジネス向けチャットとして広がりをみせている「Slack」とも比較。「Slackは開発者には人気があるツールである。だが、SlackからTeamsに移動してきた企業は、開発者以外にも、より多くの人たちを巻き込んだ作業を行い、より効果的にコミュニケーションを機能させようとしているケースが多い」とした。

 その例として、「例えば、営業部門は、重要顧客の獲得に向けて利用し、マーケティング部門は、キャンペーンの立案に活用し、プロジェクト管理者は新たなメンバーの参加支援に活用している。また、これらの部門が、さまざまなアプリを利用しながら、すべての情報をオープンな環境で共有し、翻訳をつけた会議記録も用意できる。そして、新たなメンバーが加わる際にも、これらのオープンな情報を見れば、すぐにこれまでの経緯が理解できるようになっている。さらに、開発者向けには、Visual Studioだけでなく、約40の開発ツールが利用できる環境を実現している」などと述べた。

 このほか、車メーカーのTREKの例も紹介した。同社では、全世界のチームがTeamsを利用。Teamsが19言語をサポートしている環境を活用しており、チャットなどを行う際には文書やビデオを同時に表示して作業を行い、全世界共通の情報共有を行っているという。

 また、NASCARなどにもクルマを供給しているHendrick Motorsportsでは、パドックやトラック、工場などで働く人たちをひとつのチームの形で情報を共有し、複数のロケーションにおいても、単一のインターフェースで利用できること、過去にさかのぼってデータを共有できることなどのメリットを生み出しているという。

今後のロードマップは?

 一方、スティーブンソン氏は、これまでの取り組みとともに、今後のロードマップについても触れた。

 「2016年11月には、全世界181の市場に対して、19言語に対応する形で、プレビュー版の提供を開始した。その後、2017年3月の正式リリースに向けた期間においては、セキュリティ対応に最も投資を行い、同時にコンプライアンス対応も図った。ここでは100を超える機能追加や改善を行っている。そして、同社の顧客支援サービスであるFastTrackによる導入支援も開始し、5月には教育分野向けにTeamsの提供を開始し、さらに、開発者向けプラットフォームの提供を開始した」とこれまでの経緯を振り返った。

 また、「7月にはゲストアクセス権を提供し、社外の人がTeamsの環境に参加しやすいようにする。さらに、プライベートチャネルへの対応、モバイルクライアントに対する投資のほか、音声やミーティング、デバイス、メッセージング、レイアウトの改善を行う。また、IT管理者向けの機能の充実化や、セキュリティ強化、ポリシー適用、レポーティングおよびツールの拡充も進めていく」などとした。

 スティーブンソン氏は、「Office 365の利用者であれば、誰でもが、Teamsにアクセスし、利用することができる。日本のユーザーからも多くのフィードバックを得たいと考えている」と述べた。

Microsoft Teamsのロードマップ

桑田真澄氏が登壇

 一方、同セミナーでは、野球評論家の桑田真澄氏が「スポーツ業界に学ぶチームワークとコミュニケーション~桑田真澄氏の経験から学ぶ 最強のチームワークとそれを下支えするコミュニケーションとは~」と題した講演を行った。

桑田真澄氏

 桑田氏は、まだ会場に到着していないという設定で、Teamsを使って講演会場と接続。司会者からの音声チャットによる「どこにいますか」という問い合わせに対して、ビデオ接続で「これから向かいます」と画面上から返事。その後、会場入りし、大きな拍手で迎え入れられた。

 桑田氏は、野球を通じて得た経験について言及。「野球は攻撃と守りがある。表と裏の両立し、バランスを取ることが勝利につながり、それが大切である」としたほか、「私の人生を表す言葉は、挫折である。挫折において学んだことがいまにつながっている」として、小学校、中学校、高校時代に野球や勉強を通じて体験した挫折や、そこから自信を回復していった経験などについて触れた。ここでは、PL学園時代の同期である清原和博氏に会い、初めて一緒に練習をした時に、自分の身体が小さいことにコンプレックスを持ったエピソードなどを披露した。これらの挫折は、「努力」と「自分らしさ」で克服したと述べた。

 また、米メジャーリーグに挑戦した時に、最初のマウンドで足がガクガク震えたことに触れながら、「ここに上がったことがある人しかわからないものがある」などと、本物を体験することの大切さを示した。

 質疑応答では、指導者として教える時に大切にしていることについて回答。「なぜこれをやるのかということを、正確に説明できるように勉強したこと、経験や実績だけで意見するのではなく、科学的根拠や合理的理論を添えて指導すること、そして、自らがロールモデルになることを目指した」とした。

 また、チーム内の連携のために一番苦労したことはなにかという質問に対しては、「価値観の共有と、グランド外でもコミュニケーションを取って、心をひとつにした。プロ野球選手は、個人事業主の集まりのようなもの。中堅、ベテランになってからは、雰囲気づくりに気をつけた。槙原、斉藤、桑田の3本柱の時には、お互いに、3連敗はしないという前向きな競争心があった。これがいまのジャイアンツにあったら、先日の13連敗は防げた」などと述べた。

 PL学園とほかのチームとのチームワークの違いはなにかという質問に対しては、「ほかのチームは、集まる際には、レギュラーしか集めなかったが、PL学園は、補欠やメンバー外の友達とも仲がよかった。選手同士が、いつも対等に行動していたことが団結力につながっていた」と回答した。

 また、「当時、日本マイクロソフトと知りあえていたら、ITを駆使して、甲子園で5回優勝できたかもしれない」と語り、会場を沸かせた。

先行事例を紹介

 セミナーの最後には、「Microsoft Teams活用座談会-先行利用されているお客様が語るTeamsの可能性-」と題して、2016年11月にプレビュー版の提供開始以降、先行導入したミマキエンジニアリング、Phone Appli、日本ビジネスシステムズの3社と、日本マイクロソフトの関係者が登壇して、Teamsのメリットや課題などについて語った。

 ミマキエンジニアリングでは、国内外の関係者とともにチームを構成し、共同作業を進める際に、Teamsを活用。業務連絡や重要事項のリアルタイム連携などを実現するコミュニケーションツールとして導入したという。また、Phone Appliでは、同じプロジェクトを遂行するメンバーが物理的に離れた場所にいることから、これらのメンバーが、バーチャルに会議を開くことができる点にメリットを感じているという。さらに、日本ビジネスシステムズでは、プロジェクト推進の際に重要となるファイル共有において、更新した共通ファイルの最新版がどこにあるのか分からないといった問題を解決できたという。

 登壇者の間からは、「これまでのツールではできなかったチーム連携ができる」、「最新データが共有しやすく、連携が行いやすいツールである」といった声のほかに、「これまでのMicrosoft製品のなかで最も使いやすいソフトウェアである」といった声も出ていた。

先行導入したユーザー企業による、活用座談会の様子