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既存インフラを活用してクラウドとIoT機器の連携を実現する「Azure IoT」

 5月24日、25日に日本マイクロソフト主催で開催中の開発者向けイベント「de:code 2016」に設けられたセッション「Azure IoT ソリューション アーキテクチャ」をレポートする。

 Azure IoTは、既存のデバイスや機器を利用しながら、これまでのITインフラを拡張する形でクラウドとIoT機器の連携を実現するソリューション。IoTを活用した機器のリモート監視や予測保守、資産管理といった汎用的なシナリオをに基づいた構成済みのソリューションが用意されており、構成を拡張することもできる。

日本マイクロソフト株式会社 Global Black Belt IoTテクノロジーソリューションプロフェッショナルの中田 光昭氏

 セッション冒頭では、実際に米国のビル会社で導入されているAzure IoTを活用したビル監視の例のデモが行われた。

リモートで施設管理を行う米国のビル管理会社でのAzure IoT活用例。赤く表示されたシアトルとニューオリンズのビルにアラートが通知されている
IoT機器からのデータをもとに、ビル内部の状況をリアルタイムに表示。気温や湿度などの情報が表示されている
ビル施設の異常個所を表示したところ。各部分の稼働状況や動作予測を確認できる。画面は業務要件に応じた設計が可能
Azure IoT Suiteとの連携で、過去のデータに基づいて、いつしきい値を超えるかを機械学習で予測、ビル施設が故障する前に修理スケジュールを立てるなど、問題に対処できる

 こうしたサービスを実現できるAzure IoTのリファレンスアーキテクチャは、IoT機器とをクラウドへ接続し、デバイスとクラウド間でのデータ送受信を行う「Device Connectivity」、デバイスの登録と検索、データの収集と加工、さらに業務ロジックに基づいた分析や可視化を行う「Data Processing,Analytics and Management」、IoTアプリUIやダッシュボード、業務システムとの連携を担う「Presentation & business Connectivity」の3つに大別できる。

リファレンスアーキテクチャの各構成要素ごとにサービスを用意し、実際のシステムに応じて組み合わせることができるという。
ビル管理の例をリファレンスアーキテクチャの各部分にマッピングした例

 Device Connectivityは、「IoT Hub」とも呼ばれる数百万のIoT機器を接続可能なCloud Gatewayが核となる。IoT機器とは基本的にAMQP、HTTPS、MQTTの3種類のプロトコルのいずれかを用いて通信する。

Azure IoT Gateway SDKを用いて開発したカスタムゲートウェイをホストすることで、独自のプロトコルを利用したIoT機器との通信も可能。IoT Hubと直接通信できないIoTデバイスは、スマートフォンなどのField Gatewayを介して通信を行う
IoT Hubを介して、Azure IoTの各サービスと機器を接続、双方向に通信できる

 IoT機器をIoT Hubに接続するためのAzure IoT device SDKがGitHubで提供されている。SDKはWindows、Linux、RTOS、Androidなどクロスプラットフォームに対応するほか、C、.NET、Java、Node.js、Pythonをサポートしており、クラウドとデバイスの双方向通信を実現している。

 IoT Hubは、IoT機器の登録や認証の機能も提供している。機器ごとにIDとキーを用い、有効期限付きのアクセストークンを生成して認証しており、盗難時に特定の機器をクラウド側で無効にすることも可能だ。今後はIDやキー以外のデバイスに関する定義や、ドキュメントを管理できるように拡張されるという。

 Data Processing,Analytics and Managementの中心は、IoT Hubからのデータを各サービスに出力する「Azure Stream Analystics」だ。1秒間に数百万のイベントを処理可能で、IoT機器からのデータをリアルタイムに分析できる。イベント処理にはSQLに似たクエリを用い、さまざまなAzureコンポーネントへのデータ出力に対応している。

IoT機器からのリアルタイムデータをクエリで集計・フィルタリングしてAzureの各コンポーネントに出力する
Stream Analysticsの処理画面。入力データにクエリ処理を行って、データベースやストレージに出力できる

 Azure Machine Learningも重要な機能と言える。Stream Analysticsから出力されたデータに基づいて機械学習を行い、作成した予測モデルをWebサービスとして提供するもので、例えば電力の消費予測について、その日が休日か平日か、あるいは気温の状況などをパラメータとして入力すれば、関数のような形で予測データを返すといった処理が行えるという。

 Presentation & business Connectivityでは、Power BIを使って比較的簡単に分析データをダッシュボードとして視覚化できる。また既存の業務システムとの連携では、汎用的パッケージであれば、連携コネクターが提供されており、比較的簡単に外部システムとの連携を実現できるとのことだ。

Azure Machine Learningの予測アルゴリズムはソリューションライブラリとして提供されている
Power BIでのリアルタイム分析の表示例
Azure IoTの各機能を用いたシステムの構成例。「複雑に見えるが、次のレイヤーにデータを渡しながら進んでいくので、パートに分けて考えればわかりやすい(中田氏)」

 セッションの最後には、すでにAzure IoTが利用されている国内の導入例が紹介された。

シムトップでは、大型工作機械に特殊機器を設置し、工場のラインを停止することなく、機器の利用状況ををリアルタイムにモニタリングできるシステムを導入している
ソフトバンクテクノロジーでは、ヘルスケアにIoTを導入している。将来的に蓄積したデータに基づいて機械学習で予測するシステムを実現するという
ソフトバンクテクノロジー株式会社のドローンを用いたシステム。人では時間がかかるが、短時間でデータを収集して期間と人員を圧縮できるとのこと
ソフトバンクテクノロジーではAzure IoTをPepperと連携、会話データを蓄積してマーケティングに活かすシステムも実現している

岩崎 宰守