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【Oracle Days Tokyo 2013】「In-Memory技術は他社には追いつけないものになる」~基調講演

 日本オラクル株式会社(以下、オラクル)は10月22日、23日の2日間、東京・恵比寿のウェスティンホテル東京において、「Oracle Days Tokyo 2013」を開催した。

東京・恵比寿のウェスティンホテル東京で開催された「Oracle Days Tokyo 2013」
恵比寿駅からのコンコースもオラクル一色となった

 Oracle Days Tokyo 2013は、「イノベーションを構想から実践へ~ Innovation in Practice」をテーマに、「Database&Business Analytics Summit」、「Optimized Data Center Summit」、「Cloud&Business Innovation Summit」、「Customer Experience Summit」の4つのイベントで構成。米Oracleが、9月22日から、米国サンフランシスコで開催した「Oracle OpenWorld San Francisco 2013」で発表された最新技術や製品などを紹介するなど、オラクルの製品担当者による70のセッションを行う。会期中、4000人の来場者を見込んでいる。

 オラクルの遠藤隆雄会長は、「今回のマーケティングイベントは、イノベーションを構想から実践へをテーマにしている。シンプルなITを提供するのがオラクルの方針。シンプルにすることは、日本人が得意な部分であるにも関わらず、それをラリー・エリソンとスティーブ・ジョブズに取られてしまった。シンプルにするだけでなく、エンジニアードすることも大切である。今回のイベントでは事例を通じて、今後のイノベーティブな取り組みの参考にしてもらいたい」と挨拶した。

 開催初日の午前10時から行われた基調講演では、「オラクルの次世代データベース戦略~最新インメモリ・テクノロジーとOracleExadata 最新情報」をテーマに、米Oracle・コーポレーション データベース・サーバーテクノロジーのホアン・ロアイザ シニアバイスプレジデントが講演した。ロアイザ氏は、ExaDataとインメモリデータの開発責任者であり、来日は5年ぶりだという。

インメモリ技術を訴求

ロアイザ氏

 ロアイザ氏は、「オラクルか30年間に渡って開発してきた技術を活用したものである。顧客の利用環境を変えるものである。Oracle Database In-Memory Optionのゴールは、検索処理を100倍高速化し、リアルタイム分析を行い、トランザクション処理を2倍にすることにある」とし、「Oracle Database In-Memory Optionは、行とカラムの両方のインメモリフォーマットを同一のテーブルに定義することができる点が特徴であり、OLTPの運用を効率的に行える。ロギングが発生しないフォーマットであり、インメモリ・カラムナー技術によって、データベースが立ち上がったときに、使用頻度の高いテーブルをメモリ内にロードするあらやるビジネスデータを1秒未満で検索でき、CPUコアあたり1秒間に数10億行以上のスキャンが可能になる」と述べた。

デュアル・フォーマットのインメモリ・データベース
オラクルのインメモリ・カラムナー技術
あらゆるビジネスデータを1秒未満で検索

 また、「OLTPのデータベースで使用されているインデックスの多くは分析用途に使用されており、テーブルのデータを変更するたびに、分析インデックスも更新する必要がある。これまでのOLTPの処理スピードは、分析用インデックスにより低下する。インメモリ・カラム・ストアはメモリ内の分析用インデックスの代わりに利用できることから、データ更新時の分析用インデックスを無くすことができ、多くのOLTPのバッチ処理を2~4倍に高速化できる。これまでできなかったことが可能になる。高速性とコスト効果を導きだすことができる」などと語り、「Oracle Database In-Memory Optionの大きなポイントは、既存のアプリケーションをなにも変更することなく、従来よりも高速に実行することができる。シンプルであるため、ユーザーは、早期に、楽に導入することができる。複雑化するものではなく、簡素化するものである」という点を強調した。

OLTPの処理スピードは分析用インデックスにより低下
カラム・ストアで分析用インデックスを置き換え

Database as a Serviceについて

 一方、Database as a Serviceについて説明。「新規のデータベースを導入するには、専用のデータベースと専用サーバーが必要であったが、これがマネジメントコストの上昇、ハードウェアコストの上昇にもつながっている。Enterprise Database as a Serviceという新たなアプローチでは、ハードウェアとソフトウェアを統合・仮想化し、管理の手間とコストを大幅に削減できるようになる。オラクルにとっても、今後5年に渡る重要な取り組みになる」と前置きし、クラウドアーキテクチャープラットフォーム(ハードウェア)、クラウドアーキテクチャーデータベース(ソフトウェア)、クラウドライフサイクル管理(管理性)という3つの観点から言及した。

今までのサーバーとソフトが無秩序なデータベース導入
新たなアプローチ、Enterprise Database-as-a-Service

 ハードウェアでは、ExaData Database Machineについて触れ、「2008年にExaDataを投入して以来、全世界数1000の大手企業で導入されており、そのうち、半数はデータウェアハウスとして、半数はワークロードとOLTPが混在した環境で活用している。当初のExaDataは、データウェアハウスとして活用することを目指し、OLTP、混在ワークロード、データベース統合へと進化してきたが、いまではDatabase as a Serviceが重要な鍵となっている。ExaDataは、データベース用に構築されたクラウドプラットフォームであり、これからも進化を遂げていくことになる」とし、ソフトウェアについては、「Oracle Database 12cのマルチテナントアーキテクチャーにより、最も効率的な形でDatabase as a Serviceを実現することができる。このデータベースにより、リソースと管理を共有でき、ひとつのデータベースで様々なアプリケーションをサポートすることができるのが特徴。100にのぼるロジカルデータベースを一元的にバックアップすることが可能であり、アップグレードやパッチ適用についても柔軟に行えることができる。管理コストを削減でき、ハードウェア資産も減らすことができる」などとした。

データベース用に構築されたクラウド・プラットフォーム
独自のソフトウェア・アルゴリズムでデータベース処理を最適化

 そして、管理性については、包括的なDatabase as a Serviceライフサイクル管理を提供していることを示しながら、「Oracle Enterprise Managerによって、ハードウェア、ソフトウェアまでトップ・トゥ・エンドで管理できる」などと語った。

 「次世代プラットフォームは、ExaDataとOracle Database 12cによって実現されるものである。ここでは、フラッシュ、インメモリ、圧縮、高速ネットワークといったものを提供できる」などとした。

 また、ゲストとして、楽天 執行役員DU副担当役員CTO補佐のJonathan Levine氏が登壇し、楽天がExaDataを導入した事例について説明。スーパーセールにおいて、多くのトランザクションが発生した場合にも対応したことなどを説明。「ExaDataの導入によって、カタログのアップデートが30%早くなり、バックアップも30%向上している。そして、運用コストは50%削減している」(楽天 執行役員DU副担当役員CTO補佐のJonathan Levine氏)などとした。

 一方、日本オラクル テクノロジー製品事業統括本部長の三澤智光専務執行役員が、「オラクルのビッグデータ戦略~モバイル、ソーシャル、クラウド~」をテーマに、データベース・クラウドを実現するOracle Database 12cのマルチテナントアーキテクチャーや、データディスカバリテクノロジーなどについて、デモンストレーションを交えて紹介した。

研究開発に莫大な投資

 三澤専務執行役員は、オラクルのIT業界におけるポジションについて切り出し、「オラクルはクラウド事業の強化を狙って買収しており、SaaSに強いクラウドベンダーになっている。また、研究開発投資は5000億円規模と、IBMと同じ規模であり、このほとんどをEnterpriseソフトウェア分野とSPRACなどに投資している。これは売上高の12%に当たるものであり、IBMの5~6%、HPの3%に比べても大きい。いかに巨大な研究開発投資規模であることがわかるだろう」とした。

2004年からの研究開発費累計は30Bドル
製品ポートフォリオを迅速に拡大するM&A戦略

 さらに、ExaDataについては、「日本でも、世界でも多くの企業で導入されている。売上高が30億円規模の企業から、数兆円に達する企業でも採用されている。ハイエンドサーバー、ハイエンドストレージではトップシェアとなっているといえる」とコメント。Engineered Systemsの新製品として発表したバックアップ専用マシンの「Oracle Database Backup Logging Recovery Appliance」については、「ここには、ロギングという名称が入っていることに大きな意味がある。Oracle Database Backup Logging Recovery Applianceでは、増分バックアップだけでなく、データベースのログをキャプチャすることから、システムがダウンしても、その直前のデータのバックアップが可能になる。複雑なバックアップの体制をシンプルにすることができる」と説明した。

オラクルが取り組むビッグデータ

 また、三澤専務執行役員は、オラクルが取り組むビッグデータソリューションについても説明。「Oracle Big Data Applianceでは、Hadoopクラスタから、リレーショナルデータベースに対して、1時間あたり15TBという大量のデータを、高速に移行させることができる特徴がある」としたほか、「SQL Pattern Matchingにより、コード数の削減と、50倍の高速化が可能になり、これまでにできないことができるようになる。また、新たに、リレーショナルデータベースやHadoopクラスタに双方の統計解析にRを使用できるようにしたことで、Rをビッグデータの解析に利用できるようにした」などと語った。

三澤専務執行役員
採用が急速に進むOracle Exadata

 さらに、ビジネスインテリジェンスの機能強化について言及し、分析と探索という観点から説明。「Oracle BI Mobile App Designerによって、BIを活用したいというエンドユーザーの要望にあわせた画面設計が可能になる。現場がPowerPointを使用するような開発作業を行えるようになっている。また、iOSやAndroid対応などのあらゆるデバイスへの対応が可能であり、セキュアにデリバリできる」と語り、Oracle BI Mobile App Designerによるシンプルな開発環境を提供できる様子をデモストレーションしてみせた。

 また、Exalyticsの導入によって、BIにおけるトータル処理時間を大幅に削減できることを示したほか、Exalyticsの新たな製品ととして、Oracle Exalytics In-Memory Machineを投入。「新たな製品は、T5-8と呼ばれ、従来のLinuxから、SPARCおよびSolarisへと移行し、性能を大きまく向上させた」としたほか、「ビッグデータ時代には事前定義済みの切り口から問題を発見する『分析』に加えて、これからは様々な切り口から新たな問題を発見する『探索』が重視される。探索して、発見して、新たなオペレーションにつなげることで、ビッグデータがさらに効率的に活用できる。探索は試行錯誤することであり、ここには迅速性と柔軟性が求められる。データディスカバリーでは、構造化データと非構造化データから有益で深みを持った知見を得ることができる。これを実現するために、Oracle Endeca Infomation Discoveryとして提供する」と述べた。

 最後に三澤専務執行役員は、「今日はオラクルの最新技術などについて紹介したが、In-Memory技術は、競合他社は追いつけないものになる」などとして、オラクルの製品、技術の優位性を強調してみせた。

大河原 克行