日本マイクロソフト、The Microsoft Conference 2012を開催~「Windows 8で市場を爆発させたい」と樋口社長


 日本マイクロソフト株式会社は、9月27・28日の2日間、東京・品川のグランドプリンスホテル新高輪において、「The Microsoft Conference(MSC) 2012」を開催している。

 同社最大規模の年次イベントとなるMSCは、企業のIT担当者、ITエンジニア、事業企画担当者などを対象に、日本マイクロソフトの最新テクノロジや製品、サービスを紹介するもので、同社・樋口泰行社長による基調講演や、60以上のブレークアウトセッションのほか、Microsoft ShowcaseおよびPartner Showcaseとして、マイクロソフトおよびパートナー企業の製品、ソリューションの展示が行われる。

 今年は、Windows 8やWindows Server2012、SQL Server2012といった大型製品が相次ぎ投入される年ということもあり、高い関心が集まっていたのが印象的だ。また、会場では、次期Microsoft Officeを、国内で初めて一般ユーザーに紹介する場となった。

 樋口社長によると、「今年は8300人が事前に登録していただいているが、途中で、申し込みを締め切らざるを得ない状況になった」という。

 

Windows Server 2012など3つの新製品を紹介

代表執行役社長の樋口泰行氏

 9月27日午前10時から行われた樋口社長の基調講演では、「今、求められる経営改革と情報基盤~グローバル+スピード+ダイナミズム~」をテーマに、現在のビジネスに求められるグローバル、スピード、ダイナミズムを実現するITシステムとして、日本マイクロソフトの企業向けソリューションが担う役割を紹介。発売を1カ月後に控えたWindows 8の最新動向についても言及した。

 樋口社長は、「ITは、生活を劇的に変えてきた。電子マネーや、顔を映したコミュニケーションなど、遠い未来のことが現実になっている。情報技術の力は大きい、社会の進化に貢献してきた。そして今日、新時代を築く3つの製品を出す。発売を1カ月後に控えたWindows 8のほか、“ザ・クラウドOS”となるWindows Server2012、新たなクラウドサービスに進化した次期Microsoft Office。3つの製品は、夢を現実のものにすることができる。日本は元気がないといわれているが、これらの製品により、パートナーとともに元気な新時代を推し進められる」などと切り出した。

 そして、「最初にみなさまに感謝したい。4年前は先進国のなかでは日本法人は最下位であったが、ここ2年は連続で1位になった。これもみなさまのおかけである」と語った。
 一方で、樋口社長は、「日本は非活性化している、変化に鈍感になっているのでないか」と指摘。「この課題をITで解決していきたい。しかし間違ってはいけないのは、ITがイノベーションを起こすのではなく、イノベーションを起こすのは人であること。ITは人を支え、経営を支えることになる。攻めのIT活用をしていくべきだ」として、その事例としてLyncの機能などを紹介した。

 また、「今は、ITが変化している新時代である」と前置きし、ソーシャルやデバイスによって変化するコンシューマライゼーションITの動き、ビッグデータやクラウドの動きに加え、モーションセンサーや音声認識、マシンラーニングといった新たな技術の動きがあることを指摘。「マイクロソフトは、これらのすべての領域をカバーし、シームレスに提供することができる数少ない企業である」と語り、「これらがつながると、どんな可能性があるのか。デモンストレーションを通じてお伝えする」とした。

 

さまざまなビジネスシーンに適用できるKinect for Windows

テクニカル・ソリューション・エバンジェリストの西脇資哲氏

 ここで、同社のテクニカル・ソリューション・エバンジェリストである西脇資哲氏が登壇。まずは、Kinect for Windowsによる活用事例を紹介した。ここでは、ビデオ放映や、ステージでの実演を通じて、業務における利用シーンを紹介。東京女子医大でのインテリジェント手術室におけるKinectの利用シーンのほか、バーチャルフィッティングルームでの仮想試着の例、ショーケーストラッカーでの購買の様子のトラッキングなどを紹介した。

 バーチャルフィッティングルームでは、画面をみながらバーチャルのかばんを手に持ったり、持っているかばんの色を変えたりといったことができるものだ。

 ここからビッグデータを生成しており、例えば、Excelで人の形を表示し、体のどの部分のフィッティングを多いのか、買った人と買わなかった人とを比較すると、フィッティングにどんな違いがあるのか、試着のため使った時間がどうだったのかといった情報も収集できるという。これらをもとに、動向を分析して、対策を行うといった使い方が可能だ。

 一方、ショーケーストラッカーは、ショーケースの前で人がどんな行動をしたのかといったことを、Kinectによってトラッキングすることができるというものだ。POSでは、売れた商品の情報しか集計できないが、Kinectを棚の上部に設置。そこから人の動きを認識して、一度棚から取り出した商品を返すといった行動までも集計できるようになるという。

 それによって、どの商品が棚に戻されているのか。その理由はなにかといったことまでが導き出せるようになる。

 「例えば、戻されている回数が多い商品の場合、陳列方法が同じ商品で色違いのものを並べているためだということがわかれば、棚割りの工夫をしたり、2種類を同時に買うと値引きするといった対策を行ったりすることによって、より戦略的な販売ができるようになる。これを実現しようとすると、これまでは商品ひとつひとつにRFIDを張り付けるといった手間とコストがかかっていた。Kinectでは、それが不要になる」などとした。


Kinect for Windowsの活用例。人間の動きをトラッキングし、その意味を分析することが可能だ

 さらに、ATMの前で携帯電話を使うと、それをKinectが認識し、メッセージが出て、振り込め詐欺防止のメッセージを表示するといったデモンストレーションも行った。

 このほか、スマートワークスタイルについてもデモンストレーションを行い、集計したデータをタッチパネル機能付きの大型ディスプレイに表示。そこで、PowerPointの資料を動的に変化させたり、ネットワークに接続して、Lyncにより現場の担当者のステータスを確認して呼びだし、その場ですぐに画面を共有して、さまざまな資料を閲覧しながら、会議を行うといったシーンを実演したみせた。

 また、この会議によって編集した資料を、スマートフォンで表示し、さまざまな場所で仕事ができることを示した。


集計したデータを大型ディスプレイに表示したり、Lyncを使って担当者を呼び出したりすることも可能

 

USBメモリからWindowsが起動できるWindows To Go

 一方、Windows XP搭載PCから、Windows 8を搭載したUSBメモリーを差し込みリブートすると、Windows 8が起動する新たな使い方を提案。さらに、User Experience Virtualization(UE-V)により、Windows 7とWindows 8をまたがった形で、同じアプリケーションを利用していた場合でも、設定環境をローミングするユーザー環境の仮想化について説明した。

 これらのデモンストレーションを通じて、西脇氏は、「賢く勝つ、賢い経営をすることが大切である。そのためには、これらの機能を単に使うのではなく、機能から価値をどう生み出すかという点に尽きる。日本マイクロソフトは、スマートなワークスタイルを提供することで、働き方を側面からサポートすることになる」などとした。

 再び、樋口社長が登壇し、「今年は、マイクロソフトにとって、最大規模となるリリースを行う年になる。特にWindows 8は発売を1カ月後に控えており、多くのPCメーカーからたくさんのバリエーションの製品が出てくることになる。これによって、市場爆発をさせたい。マイクロソフトは、こうした新たな時代の到来にあわせて、ロゴを25年ぶりにリフレッシュした。新たな時代を盛り上げていく」と、基調講演を締めくくった。

関連情報
(大河原 克行)
2012/9/27 13:35