【クラウドExpo基調講演】「クラウドはグローバル競争に勝つインフラ」~マイクロソフト樋口社長


 幕張メッセで開催されている「第2回クラウドコンピューティングEXPO」で10日、マイクロソフト株式会社 代表執行役社長の樋口泰行氏が「クラウドコンピューティング ~超競争時代のビジネスインフラ~」と題して基調講演を行った。

 樋口氏は冒頭で、グローバルな競争を勝ち抜くために必要なものとして、グローバルで通用するコミュニケーションインフラ、営業力とコミュニケーション力を高めるプラットフォーム、グローバル規模の拡張性を持つクラウドプラットフォームの3つを提示。それに対する解として、「宣伝色が強くなりますが」と前置きし、自社のクラウドサービスを紹介した。

 

Excelのクラウド連携や、複数ユーザーの同時編集も

マイクロソフト株式会社 代表執行役社長 樋口泰行氏

 まず、「グローバルで通用するコミュニケーションインフラ」の実例として、「もっとも使われているソフト」(樋口氏)であるMicrosoft Officeを挙げた。企業向けクラウドサービスOffice 365により、Officeの環境がクラウドでもそのまま使え、シームレスに連携できるという。

 デモでは、Officeのメニューに最初からクラウドに保存する機能が入っていることを見せたあと、クラウド版のOfficeでもWebブラウザへのドラッグ&ドロップでExcelファイルを開けることや、PC版と同じ表示が保たれることを実演。さらに、「われわれのものでないクラウドアプリケーション」で同じExcelファイル(.xslx)を開いてみせ、ファイルをダイアログで指定すること、形式を変換するためのコピーが必要になること、表示が異なることなどを指摘した。

 さらに、1つのExcel文書を複数のユーザーが同時に編集し、リアルタイムに反映される機能もデモ。さらにスレートPCもまじえて同時編集してみせた。

 ほか、Facebookとの提携による、Facebookの中でExcel文書を開く機能もデモされた。

クラウド版のOfficeでExcel文書を表示。PC版と同じ表示がなされる。「われわれのものでないクラウドアプリケーション」(右)と同じExcel文書を表示
1つのExcel文書を複数のユーザーが同時に編集。リアルタイムに反映される。それぞれのウィンドウの右下に「2人のユーザーが編集中」と表示されている。スレートPCもまじえて同時編集

 続いて樋口氏は、「営業力とコミュニケーション力を高めるプラットフォーム」の実例として、Dynamics CRM製品を紹介した。CRMがOfficeと連携することが営業力に結びつくという。例として、Outlook連携により、顧客にメールを送ると同時にCRMに記録したり、CRMのリストからメールしたり、連絡先や予定表と連携したりといった使い方が語られた。

パートナークラウドを強調

 「競争に打ち勝つクラウドプラットフォーム」として、樋口氏はマイクロソフトによるデータセンターなどクラウドへの大規模な投資を紹介。「全力で設備投資をしている」と語った。

 クラウドへのアプローチとしては、パブリッククラウドとプライベートクラウドのほか、パートナー企業がWindows Azureプラットフォームを利用してユーザーに提供するパートナークラウドの必要性についても強調した。マイクロソフトのソリューションでは、経営方針の変更などで、それぞれの間を移るときにも、修正する必要がないのが特徴の1つだという。

 パートナークラウドの実例として、富士通やNTTコミュニケーションズとの提携が紹介された。また、開発中の技術として、オンプレミスとパブリッククラウドとをセキュアに接続する「Project Sydney」も紹介された。

NTTコミュニケーションズとの提携。クラウドサービスのBizホスティングとWindows Azureの間で、IDやDBなどを連携させるオンプレミスとパブリッククラウドをセキュアに接続するProject Sydney。ユーザーごとの仮想的なネットワークをオーバーレイさせる

 

Azure化できる開発ツールと、Azureを使ったデータのマーケットプレイス

 Windows Azureの応用として、開発者でなくても簡単なビジネスアプリケーションを作れるツール「Visual Studio LightSwitch」と、統計などのデータのマーケットプレイス「Dallas」も紹介された。

 LightSwitchは、データベースの定義や入力画面などを対話形式で設定することにより、簡単なビジネスアプリケーションが作れる開発ツール。ちょうどMicrosoft Accessでテーブルやフォームを定義するような手順だ。LightSwitchでは、通常のクライアントサーバーアプリケーションだけではなく、アプリケーションタイプを選ぶだけで、Windows Azureで動くウェブアプリケーションに「スイッチ」できるのが特徴だ。

 Dallasは、さまざまな統計データを検索してダウンロードできるサービスで、Windows Azure上で動いている。ウェブから利用できるほか、Excelのアドインによって直接データを取り込むこともできる。

Visual Studio LightSwitchでデータベースを定義Visual Studio LightSwitchで画面のテンプレートを選択
できあがったアプリケーションアプリケーションタイプを選ぶだけで、Windows Azureに「スイッチ」できる
Dallasでウェブから統計情報を検索ExcelのアドインでDallasからデータを読み込み

クラウドビジネス加速に向けて3点をコミットメント

 樋口氏は、クラウドビジネス加速に向けたコミットメントとして、日本品質でのサポート提供などの「社内体制強化」、きめこまかな対応とユーザーからの信頼のための「パートナーシップ推進」、Office365をはじめとする「オファリング拡充」の3点について語った。また、クラウドを大々的に訴求するキャンペーンのための「Cloud Powerロゴ」も紹介した。

 最後に、「厳しい経営環境の中、クラウドは、効率的で近代的でグローバル競争に勝つインフラになる」と語って講演を終えた。

クラウドを訴求するキャンペーンのための「Cloud Powerロゴ」
関連情報