【クラウドExpo基調講演】「すべてが自前というのはナンセンス、クラウドは有力な選択肢」~セールスフォース・宇陀社長


 幕張メッセで開催されている「第2回クラウドコンピューティングEXPO」で10日、株式会社セールスフォース・ドットコム(以下、セールスフォース) 代表取締役社長の宇陀栄次氏が基調講演を行った。「ITユーザの近未来 ~ユーザ主導の時代へ~」と題し、企業が変化し国際競争力を身につけるためのクラウドの役割が論じられ、自社の取り組みについてエコポイントの事例などをまじえて語られた。

 

「すべてが自前というのはナンセンス」

株式会社セールスフォース・ドットコム 代表取締役社長 宇陀栄次氏

 宇陀氏は、お金は銀行に預けることや、タクシーは他人に運転してもらうことを例に挙げ、「所有と利用を分ける安心感」が世の中に認められていると指摘。一方で「ITではすべて自分で作ることが安心といわれている、これはこれからも続く」と問題提起し、「すべてがクラウドになるとは思わないが、すべてが自前というのもナンセンス。選択肢が必要」と論じた。

 そのうえで、「セールスフォースはテクノロジーの会社というよりサービスの会社」として、信頼が重要であることを強調。成長だけでなく信頼でも評価を得ていると経済誌でのランキングを紹介した。また、「クラウドで重要なのはテクノロジーでもビジネスモデルではなく、運用のノウハウ」と、創立10年の実績を強調した。

 

エコポイントのシステムの内幕

 宇陀氏はまた、世界でセールスフォースのサービスを8万2400社が利用していると紹介した。特に、エコポイントのような1500万ユーザー規模の組織から、3ユーザーの料亭まで、1社のシステムでまったく同じ機能で提供していることを強調。クラウドを社内システムとして使えば小規模な企業でも多店舗展開が容易になり、出店や撤退などを柔軟にできると論じた。また、個人情報保護やデータ保全、監査性などが必要とされる中、中小企業には対応しきれないため、クラウドサービスがそれらを提供し、企業は本当にやりたいことに集中できる、とメリットを語った。

 国内での導入事例として、セールスフォースが国内で大きな話題になったエコポイントのシステムの内幕も語られた。エコシステム導入まで1カ月程度で要件も決まっていないという、普通のシステム会社なら断る案件だったが、「受付を開始できる部分だけやる」という条件で受注したとのこと。「全部のシステムを3週間で作ったわけではない」とのことだが、まず受付システムを作ったことで、初めて要件が出てきて、その後にシステム全体を作ったのだという。「住みながら家を建てているようだった」と形容しつつ、「要件があいまいでもクラウドならできるところからやれる」と語った。

 そのほか、郵便局の民営化や、倉本聰の劇団の富良野GROUP、瓦に特化した物流の愛知運送、楽器教室や販売の銀座十字屋、乾麺などを製造するはくばくなど、どちらかというとIT色の強くない企業での導入事例を紹介。「GoogleやYahooなどを利用するのにトレーニングは要らない。われわれも、コンシューマー向けに作られ使われてきた枯れた技術をベースに、法人でも使えるよう信頼性を強化して、簡単につかえてビジネスに重要なサービスを提供する」と語った。

セールスフォースの国内ユーザー企業

 

「企業が前に進むためにクラウド」

 最後に宇陀氏は、マーク・ベニオフが日本を重要視していると説明しつつ、「日本についてネガティブなことばかり言うのではなく、前に進んでほしい。クラウドがそのための道具になる」と語った。そして、雑誌で読んだ「変化することにはリスクがある、変化しないことにもリスクがある。この時代では変化しないリスクのほうが大きい」という言葉を引きつつ、「ちゅうちょすることがマイナスになる。日本が強い国になって国際社会にアピールしていきたい」と語って講演を締めくくった。

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