【MS WPCインタビュー】「2年でパートナー全社をBPOSのパートナーにしたい」

執行役常務 ゼネラルビジネス担当のローネー・バートランド氏に聞く


 11日より米国・ワシントンD.C.で開催されている「Microsoft Worldwide Partner Conference 2010」では、パートナーに対してクラウドビジネスへの積極的な移行を促す、という色彩が強いが、日本のパートナーの現状を知るマイクロソフト日本法人はこの移行にどのように取り組むのか。日本での現状認識について、マイクロソフト株式会社 執行役常務 ゼネラルビジネス担当のローネー・バートランド氏に聞いた。

――現状の日本のビジネスパートナーのクラウドビジネスへの移行状況は?

マイクロソフト株式会社 執行役 常務 ゼネラルビジネス担当のローネー・バートランド氏

 新しいビジネスパートナーに対しては、約2年前からオンラインサービスに関する説明を行っており、オンラインサービスの条件などは、すでに理解していただいています。

 日本のビジネスパートナーも、クラウドに向かうトレンド自体についてはほとんど疑念はないようで、主に「どうやって移行するか」という点を考えているよう。どういうやり方で顧客にアプローチしていくのがよいのかなど、新しい形を模索しているところ。実を言えば、Microsoftの戦略が日本では前向きに受け入れられたことに、逆に驚かされたような状況です。

 従来型の(トラディショナルな)パートナーに比べて、新しい(ノン・トラディショナルな)パートナーの方が移行が早く、クラウドビジネスに関しては米国外では日本がトップの国になると予想しています。

 トラディショナルなパートナーというのは、例えば“Microsoft GOLD CERTIFIED Partner”のことだと思っていただいてよいでしょう。一方、ノン・トラディショナルなパートナーといったのは、これまではマイクロソフトとの取引がなかったパートナー、という意味です。新しいパートナーにとっては、オンラインサービスは「今後徐々に売り上げを増やしていくビジネス」という認識があります。

 マイクロソフトでは、トラディショナルなパートナーに対して「(クラウドは)現行のビジネスと食い合うような存在ではない」ということをお伝えしていく必要があると考えています。とはいえ、従来のパートナーもクラウドに向かうトレンドについては徐々に納得していただけています。

 1~2年前だと、従来型のパートナーは「どういうサービスを展開していいか分からない」というところも少なくなかったのですが、今ではオンラインサービスに加えて「ビジネスコンサルティング」「マイグレーション」「テクニカルサポート」など、さまざまなやり方があるということをご理解いただいています。

 現在日本では、BPOS(Business Productivity Online Standard Suite)パートナーは350社に達しています。そこでマイクロソフトでは、今後2年以内にMPN(Microsoft Partner Network)に参加しているパートナー全社をBPOSのパートナーにしたい、という目標を持って取り組んでいます。

――技術力が高く、独自の付加価値を提供できるパートナー以外は利益を上げるのが難しくなるのでしょうか?

 いえ。そうではありません。多くのパートナーからは、「BPOSは売りやすく、特に何もしなくても大丈夫だ」という声を聞いています。

 パートナーとしては、ベーシックなサービスでも高度なサービスでも、どんなタイプのサービスでも販売でき、どうするかはパートナー自身が決めることです。インプリメントはMicrosoftが行うので、どんなパートナーでもBPOSの販売が可能です。

 パートナーがどういった顧客層をターゲットにしているかによって変わりますが、中小企業を主要顧客とするパートナーであれば、パッケージ化されたソリューションとして、組み込み型で構成されたアプリケーションとBPOSを組み合わせたISV的な販売方法が可能でしょう。

 日本のパートナーとしては、協立情報通信株式会社がそうした例として挙げられます。同社では、会計ソフトウェアとBPOS、SharePointを組み合わせて独自のアプリケーションを小規模な事業者に提供しており、いわば標準化したアプリケーションを大量販売するというモデルになっています。

 BPOSによって、さまざまなタイプのパートナーが出てくる、あるいはすみ分けが起こるといった状況にはならないと考えています。ベーシックな販売を行うパートナーと高度なサービスを提供するパートナーとに分かれてくるのではなく、顧客の要望に応じたサービス、さらにオンプレミスでもオンラインでも、自在に提供する形に落ち着くのではないでしょうか。

 ただし、パートナーの立場から見るとオンラインとオンプレミスの最大の差はセールスサイクルの違いということになるでしょう。オンプレミスとオンラインでは提供に要する時間は変わってきます。例えば、BPOSの実装に要する時間は「1日」という例もありました。一方でオンプレミスだと数週間を要することも珍しくありません。

――クラウドとオンプレミスの両立、という方針は短期的なもの?

 マイクロソフトのソリューションの特徴は、オンプレミス/オンラインの両方を同じ顧客に対して提供できる点にあり、その点でオンラインしかないGoogleのような取り組みとは根本的に異なります。

 ユーザー企業にとっても、あるアプリケーションはオンライン・サービスで利用しつつ、別のアプリケーションは社内でオンプレミスで稼働させる、という使い分けを行う方が自然だろうと考えており、100%オンラインに移行したいというユーザー企業はほとんどないのではないかと思います。

 つまり、マイクロソフトでは長期的にもオンラインとオンプレミスは共存し続けると考えているため、オンプレミスというオプションを持たないオンライン一本やりのGoogleは脅威とはならないと見ています。

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