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「RED HAT FORUM」を包んだ熱気、レッドハットの勢い (ビジネスに直接貢献するOSSへ~日産)

ビジネスに直接貢献するOSSへ~日産

 特別講演として、日産自動車株式会社(日産) グローバルコーポレートIS/ITアライアンスグローバルVP 常務執行役員/CIOの行徳セルソ氏が、IT戦略とそこでのレッドハット製品の利用について語った。

 日産はこの2~3年でグローバルのIS(情報システム)/IT部門を社内で統合した。アジアに684人、アメリカ(北中南米)で311人、AMIE(アフリカ、中東、インド、ヨーロッパ)で242人と計12,918人のスタッフが、グローバル全社113,101人を支えている。

 会社全体の経営計画と同期したIS/IT戦略を推進しているとのことで、2005~2007年度の「日産バリューアップ」、および2008~2010年度の「日産GT2012」の時代には、IS/IT戦略として「BEST」を掲げた。「Business Alignment」(ガバナンス、コスト、リターンの管理)、「Enterprise Architecture、Slective Sourcing」(複数のベンダーをオープンに選ぶ)、「Technoglogy Simplification」(標準化、シンプル化)の頭文字を取ったものだ。

 現在は2011~2016年度の中長期計画「Nissan Power 88」に合わせ、IS/IT戦略「VITESSE」を掲げている。フランス語で「スピード」を意味すると同時に、「Value Innovation」(ビジネスのブレークスルー)、「Technology Simplification」(システムのブレークスルー)、「Service Excellence」(IS/ITの効率化)の頭文字でもある。

 「BESTの5年間で、OSSによるインフラの標準化と高効率化に取り組んだ。そのうえでVITESSEでは、ビジネスイノベーションに直接貢献できるようになった」と行徳氏は語った。

日産 グローバルコーポレートIS/ITアライアンスグローバルVP 常務執行役員/CIO 行徳セルソ氏
ITを効率化する「BEST」から、ビジネスに直接貢献する「VITESSE」へ

 OSSによる具体的なアーキテクチャとして、プラットフォームにはx86サーバーによるプライベートクラウド基盤と、OSSのミドルウェアを採用。ESBや標準ワークフローエンジンを用意し、OSSの開発ツールや開発フレームワークを整備。その上の基幹システムのアプリケーションにおいて、日産生産方式(NPW)を支える複雑な業務ロジックをルールエンジンで実現し、パッケージ製品とのハイブリッドアーキテクチャによってシンプル化した。

 さらに、ビッグデータ処理のために、Hortonworks社のHadoopディストリビューションを導入。用途に応じて使えるようにリファレンスアーキテクチャを整備したという。

 これにより、車から集められるデータを集約し、分析やシミュレーションによって新しい可能性を探るという。行徳氏は具体例として、Leafの走行データ分析と、品質情報分析を紹介した。

 行徳氏は最後に、ゴーンCEOからITに期待するものとして「Speed」「Standalization」「Simplification」の「3S」を求められたと話し、その実現にOSSが向いていると説明。「ただし、誰かにすべて任せるのは無理。どうやってOSSの利益を享受するかは、社内ITが考えなくてはならない」と語った。

OSSによる、プラットフォームから共通サービス、開発環境、業務アプリケーションまでのアーキテクチャ
用途に応じて使えるようにビッグデータのリファレンスアーキテクチャを整備
ビッグデータ活用の例。Leafの走行データ分析(左)と、品質情報分析(右)

(高橋 正和)