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Dreamforce 2014が開幕、データ分析のためのAnalytics Cloudが登場
(2014/10/15 15:30)
米国時間の10月14日、salesforce.comのプライベートイベント「Dreamforce 2014」が、米国カリフォルニア州サンフランシスコで開幕。今年は14万5000人が参加し、基調講演の前に開催されたスペシャルセッションには、前米国務長官のヒラリー・クリントン氏が登場するなどにぎやかなイベントとなった。
基調講演では新たに、データ分析のための「Analytics Cloud」を発表した。salesforce.comのCEOであるマーク・ベニオフ氏は、「企業にデータが蓄積されているものの、これをどう使ってよいのかわからない、データディバイドが起こっている。データを最適に活用するための新しい仕組みが必要だ」と指摘。Analytics Cloud提供によって、「全社員が、すべてのデバイスでデータを利用できるよう、モバイル、ソーシャル、クラウドの良さを組み合わせた新しい仕組みを提供する」と、新サービスを紹介した。
また、昨年発表した新プラットフォームSalesforce 1をさらに進化させる「Salesforce 1 LIGHTNING」、セールス、サービス、マーケティングの境界を埋める「Sales Cloud 1」「Service Cloud 1」などサービス強化・拡充をアピールした。
社内にあるデータをより広く活用するAnalytics Cloud
基調講演に登場したベニオフ氏は、Philipsが提供する医療機器にカスタマーセンターにつながるボタンがついていることや、fitbitが提供するウェアラブルデバイスなどを取り上げ、「すべての企業がソフトの会社になりつつある」とIT企業以外も顧客向けにソフトウェアを提供するようになっていると言及した。
こうしたソフトウェアの活用によって、「企業の中には多くのデータが蓄積されるようになってきている。しかし、企業は蓄積されたデータをどう活用するのか、わからない状態にある」と指摘。
そしてこの課題を解決するために、「Analytics Cloudとそのプラットフォームとして“Wave”という新しい製品を提供する。これは全社員が、すべてのデバイスを使えるようにするためのソリューションだ」と説明した。
Analytics Cloudは企業がデータを活用するためのクラウドサービスで、Waveは開発会社がアプリケーションを開発するためのプラットフォームとなる。エンドユーザーがAnalytics Cloudを利用するだけでなく、Waveを活用しパートナー企業が分析アプリケーションを開発し、「ゲームをやっているような感覚でデータを利用できるようになる」という。
会場ではGE CapitalがWaveを使って開発したアプリケーションが紹介された。データをダッシュボードに取り入れて利用することが可能となるが、このダッシュボードをクリックすると表示されているデータをさらに掘り下げていくことができる。動作するデバイスもパソコンだけでなく、スマートフォンでもスムーズに動作し、データの掘り下げも可能となる。
また、Chatter上に展開することも可能。Chatterを通して、社内にいるスタッフと外出先のスタッフがデータを見ながら話し合いを進めるといったことも可能となる。大規模な分析というよりも、社内にあるデータをより広く活用することが可能となるのがAnalytics Cloudだ。
Salesforce 1をより進化させたSalesforce 1 LIGHTNING
昨年のDreamforceでは、モバイル向けプラットフォーム「Salesforce 1」が発表されたが、その結果、APIの数が10倍に増え、400万のアプリケーションが開発、8万4000の企業がSalesforce 1のアプリケーションを利用している。
しかし、ベニオフ氏は「モバイルアプリケーションの開発はもっと速いスピードで行われなければならない」とSalesforce 1を強化した「Salesforce 1 LIGHTNING」を発表した。Salesforce 1 LIGHTNINGは、Sales、Service、Marketing、Community、Analytics、Appsとのユーザーインターフェイスの役割を持ち、Component、Framework、Builderから構成される。APIを通じてForce.com、Heroku、Waveというプラットフォームサービス群に接続する。
このサービスの紹介は、salesforce.comの創業者の一人で、Technology統括責任者であるパーカー・ハリス氏がLIGHTNINGのIを意味する稲妻を持ち、稲妻柄の衣装で登場。「私はスーパーパワーを持っている。スーパーパワーとは、デベロッパーの皆さんだ」と説明した。
LIGHTNINGは、年末にはタブレット端末用、来年にはデスクトップ用の提供を開始し、「iOS、Windows 8などOSを全く考えることなく開発することができる、完全なプラットフォームだ」という。
コカコーラのドイツ法人では、スピードが競合優位性になるとの観点からLIGHTNINGの活用を開始。「自分たちで開発したモバイルアプリによって、営業担当者は本社に戻ることなく、客先でどう判断すべきかを決断を下すことができるようになった。小売店に何本のコーラがあり、クーラーケースをどこに置けばそのカフェに最適なのかといった判断が、VRを使ったシミュレーションによって行える」とスピード、先進性を持ったアプリを作っているとする。
また今後は、アプリケーション開発をより円滑に行ってもらうために、今後、テンプレート、コンポーネントの拡充を進めることも計画している。
顧客との関係を強化するための新サービス
続けて、セールス、サービス、マーケティングの境界があいまいになる中、どう顧客との関係を強化していくのかという課題に対し、「Sales Cloud 1」、「Service Cloud 1」、「Community Cloud」といったソリューションが紹介された。
その例としては、電子制御システムなどを提供する企業Honeywell社の事例を取り上げた。企業が顧客とつながってサービスを強化するだけではなく、機器の故障が起こった際には、外部のサービス事業者までもがアプリケーションを介してシームレスに連携。故障が起こる前に機器から出ているアラートを察知し、警告メッセージを顧客に送り、サービス事業者が出向いて修理を行う、といった連携も可能になる。
顧客との連携によって、より密なサービスを提供することが可能となり、「新しいビジネスのやり方が生まれる」とこれまでとは異なる顧客との関係性を強化するサービスとなると説明した。