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Google Cloud、Gemini in BigQueryやGemini in Lookerなどのアップデートを発表 Spannerは3エディション構成に
Google Cloud Next Tokyo '24 2日目基調講演レポート
2024年8月5日 06:00
Google Cloudは、日本での年次イベント「Google Cloud Next Tokyo '24」を8月1日~2日に神奈川県のパシフィコ横浜ノースで開催した。
2日目の基調講演でも、初日と同様に生成AIが中心となった。その中でも、データサービスやデータベース、セキュリティなど、より開発者寄りにフォーカスされた内容が語られた。
ここでは2日目の基調講演から、新しく発表された内容や、比較的最近発表されたものが紹介された内容をレポートする。
分析系データサービスにGeminiを組み込んで強化
Google Cloudのブラッド・カルダー氏(Google Cloud プラットフォーム & テクニカル インフラストラクチャ バイス プレジデント兼ジェネラル マネージャー)は、分析系データサービスについて紹介した。
BigQuery:Geminiによる自然言語からのデータ分析や、クエリ作成、データ準備機能など
まずカルダー氏は、4月に発表された、分析向けデータウェアハウス「BigQuery」に生成AI「Gemini」を組み込んだ「Gemini in BigQuery」を取り上げた。データチームによる開発、データ準備、インサイト、最適化、セキュリティをAIが支援するものだ。このうちいくつかの機能が8月に一般提供開始(GA)になると氏はアナウンスした。
具体的にはまず、BigQueryで自然言語からデータ分析を実行できる「BigQueryデータキャンバス」がGAになる。
また、データ最適化の機能として、マテリアライズドビューのRecommenderと、パーティションとクラスタのClusteringもGAとなる。
そのほか、BigQueryとコーディング支援「Gemini Code Assist」を組み合わせてクエリ作成を支援する機能もGAとなる。
さらにGemini in BigQueryによるデータ準備機能(プレビュー)を新たに発表した。欠損値の推測や、データのクリーニングと推奨、パイプラインのオーケストレーションなどを支援する。
BigQueryについてはそのほか、比較的最近発表されたプレビュー段階の機能として、ベクトル検索のためのベクトルインデックス機能(2月発表)や、BigQueryからVertex AIモデルに直接アクセスできる機能(4月発表)を、カルダー氏は紹介した。
Looker:Geminiによるスライド作成や、LookMLやビジュアリゼーションの支援など
データ分析関連では、BIツール「Looker」にGeminiを組み込んだ「Gemini in Looker」について、いくつかの新機能が登場した(7月下旬発表)。
まずは、Lookerのレポートから、GeminiによってGoogleスライドのプレゼンテーションを自動生成する機能が登場した(公開プレビュー)。また入力や文書作成の支援としては、データモデルを作成するLookMLや、ビジュアリゼーション、数式を自然言語のプロンプトから作成するアシスタントの機能も登場した(プレビュー)。
データエージェントについてはデモも披露された。マーケティング担当者が、自社スニーカー製品の販売が急増したというアラートメールを受け取ったところから始まる。
そこからチャット形式自然言語のプロンプトを用いてセグメント分析などを実行。さらに、需給バランスと欠品リスクを分析したり、対策のアドバイスを求めたり、商品カタログから類似品を調べたりして、最後にチームに分析のサマリーをGoogleチャットで共有してみせた。
データベースサービスのAI関連その他の強化
Google Cloudのアンディ・ガットマンズ氏(データベース ジェネラル マネージャー兼バイス プレジデント)は、データベースサービスについて紹介した。
Spanner:グラフデータベース、全文検索、ベクトル検索に対応。3つのエディション構成に
まずはグローバル分散リレーショナルデータベースの「Spanner」だ。
最初に、Spannerを拡張してグラフデータベース機能に対応した「Spanner Graph」が発表された(プレビュー)。これにより、SpannerでSQLとGQL(Graph Query Language)の両方のパラダイムを利用できることになる。
ユースケースとしては、ナレッジグラフや、グラフ検索と生成AIを組み合わせたRAG、レコメンデーションエンジン、金融における不正検知などをガットマンズ氏は例に挙げた。
続いて、Spannerの全文検索とベクトル検索の機能の追加も発表された(プレビュー)。全文検索機能は、Googleの検索に関する専門知識を元にしており、日本語にも対応しているという。一方のベクトル検索は、ほかのデータプラットフォームと同様に、GoogleのScaNN検索アルゴリズムを元にしている。
こうした新機能にともない、Spannerの価格モデル「Spannerエディション」も新しく発表された(近日登場予定)。Spannerを「Standard」「Enterprise」「Enterprise Plus」の3つのエディションに分けるものだ。
従来の機能を単一リージョン構成で利用できるのがStandardエディションとなる。Enterpriseエディションになると、Graphや全部検索、ベクトル検索などの新機能が使え、マネージドオートスケーリングや増分バックアップにも対応する。Enterprise Plusエディションはさらに、99.999%の可用性を備えたマルチリージョン構成と新しい地理パーティション機能が含まれる。
ちなみに、Google Cloud Next Tokyo '24開催直前に開催された記者説明会では、ガットマンズ氏は、7月下旬にGAとなったデュアルリージョン構成も紹介した。これまで両方読み書きできるマルチリージョン構成には3つのリージョンが必要だったが、2つのリージョンで実現できるため、例えば、東京と大阪の日本国内完結でマルチリージョン構成がとれるという。
ガットマンズ氏は、Spannerはこれらの新機能により、可用性が高くグローバルな一貫性がありスケーラブルなデータベースというだけでなく、インテリジェントな新しいアプリケーションに対応できるようになったと語った。
そうしたSpannerのマルチモデル検索を示すデモ動画もステージで上映された。投資信託の担当者を想定し、社名をスペルミスしてもあいまい検索するところや、“funds investing in equity in emerging markets in Asia(アジアの新興国に投資しているファンド)”という自然言語でのセマンティック検索、ファンドと投資先の関係グラフを検索して視覚化するところ、さらにその中でテクノロジー企業に30%以上投資しているファンドに絞り込むところなどを見せた。
Bigtable:SQLでのクエリへの対応など
多くのGoogleサービスのバックエンドで利用されている大規模キーバリューストア「Bigtable」についても新発表がなされた。
まず、Bigtableの分散カウンター機能がGAとなった。4月に発表された機能で、高スループットで値の書き込み時に値を集計するものだ。
そして「おそらくBigtableの歴史で最大の変更」とガットマンズ氏が言う新機能が、BigtableのSQLサポートだ(プレビュー)。Bigtableのクエリにおいて、SQLが使えるようになる。その中で、100を超えるSQL関数も利用できる。氏は以前のJavaコードでのクエリと、SQLによるクエリを比較し、単純になることを示した。
SQL Server向けCloud SQLにもEnterprise Plusエディションが登場
そのほか、オンプレミスのデータベースのクラウド移行を対象とした「SQL Server向けCloud SQL Enterprise Plusエディション」をGAとして発表した。Cloud SQLは、MySQL/PostgreSQL/SQL Serverのワークロードを実行するためのエンタープライズ向けフルマネージドデータベース。このうちMySQLとPostgreSQLについては、2023年にEnterprise Plusエディションがリリースされていた。
SQL Server向けCloud SQL Enterprise Plusエディションは、同Enterpriseエディションから、読み取りパフォーマンスが最大4倍になり、99.99%の可用性SLAと高度な災害復旧を提供する。
脅威インテリジェンスやセキュリティ運用プラットフォームにもGeminiを統合
Google CloudのセキュリティサービスのAIによる強化についても、Google Cloudの橋村抄恵子氏(Google Cloud Security ソリューションマーケティング担当部長)が紹介した。
1つめは、Geminiを統合した脅威インテリジェンス「Google Threat Intelligence」だ(5月リリース)。Google傘下のMandiantの脅威インテリジェンスやVirusTotalのマルウェア情報、あるいはGmailを保護する中で得られた脅威インテリジェンスなどを統合して提供するサービスだ。Geminiを組み合わせることで、新たな脅威に対する調査や特定、保護などの作業を効率化するという。
ステージで上映されたデモ動画では、疑わしいコードを分析し、不正であればなぜ不正であると判定されたかの根拠の解説も表示される。
2つめは、セキュリティ運用プラットフォーム「Google Security Operations」における、Geminiの機能だ(5月リリース)。その1つである「Investigation Assistant」は自然言語のプロンプトでセキュリティ調査を支援する機能。例えば「Find failed user logins over the last 3 days(過去3日間の失敗したログインを探して)」というプロンプトで調査を実行できる。これによって、セキュリティに関する意思決定に費やす時間を短縮できるという。
3つめは、Google Cloudの保護機能である「Security Command Center」へのGeminiの組み込みだ。自然言語での脅威検索機能を提供するほか、Googleの発表する「セキュアAIフレームワーク」にもとづき監視対象をAIワークロードまで広げているという。
同様にAIを守る機能としては、「Model Armor」が今期プレビュー版が公開予定。設定により、不適切なプロンプトや応答のブロックや削除が可能になる。