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米Microsoft 沼本CVPが自社クラウドの強みを説明 Ignite 2019で発表されたクラウドソリューションも紹介

 日本マイクロソフト株式会社は5日、ビジネスリーダーを対象にしたデジタルトランスフォーメーション(DX)に関するイベント「Microsoft Envision | The Tour 東京」を開催した。

 本稿では、基調講演からMicrosoftプロダクトに関する部分をレポートする。

プロアクティブな対応を可能にするデジタルフィードバックループ

 米Microsoft コーポレートバイスプレジデント(CVP) クラウドビジネス担当 沼本健氏は、1970年代、1990年代、2010年代のコールセンターの様子を写した写真を示し、「端末は変わったが、仕事のプロセスはあまり変わっていないのではないか」と話した。

米Microsoft コーポレートバイスプレジデント クラウドビジネス担当 沼本健氏
1970年代、1990年代、2010年代のコールセンターの様子

 つまり、リアクティブ(受動的)なプロセスだ。例えば、生産ラインがダウンしたとき、サービスセンターは障害を記録し、フィールドエンジニアを派遣して障害を解決する。

 これがプロアクティブ(能動的)になるとどうなるか。生産ラインからリアルタイムに生成されるデータを元に、異常検知モデルによって異常を予測して、障害が起きる前に予兆保全する。

リアクティブな障害対応の場合
プロアクティブな障害対応の場合

 「これを可能にするのがMicrosoftのデジタルフィードバックループだ」と沼本氏。データを中心に、顧客窓口や従業員管理など複数のシステムがつながり、ループとなって有機連携することで変革をもたらすという。

 この中心部分の基礎になるのが、大量に生成されるデータを世界中のリージョンで引き受けるデータセンターで、その上に、AIや分析などを可能にするプラットフォームとしてクラウドサービスのAzureがある。

 さらにその上として、誰でもアプリケーションやビジネスプラットフォームを作れるPower Platformが位置づけられ、またその上にはOffice 365とDynamics 365が位置する。

 そして一番上には、固有のニーズにあったサードパーティアプリケーションが、SaaSマーケットプレースのAppSourceに集まっている。

 このようなレイヤー構造について沼本氏は、「それぞれのレイヤーが、その下のレイヤーと整合性をもって開発されていて、寄せ集めではない。これがMicrosoftのクラウドの一番の強みだと思う」とコメントした。

Microsoftのデジタルフィードバックループ
デジタルフィードバックループのレイヤー

Ignite 2019で発表された、ハイブリッドクラウドやデータ分析、RPA/ボット

 ここで基調講演からは外れるが、11月に米国でMicrosoftが開催したイベント「Ignite 2019」で発表された内容について、基調講演の後に沼本氏がプレス向けに説明した模様を紹介したい。

 沼本氏の管轄下にある発表内容のハイライトは4つ。

 1つめはハイブリッドクラウドの「Azure Arc technologies」だ。ほかのクラウドプラットフォームやオンプレミスにあるWindows/LinuxサーバーやKubernetes、SQL Serverなどを、Azureと同じように管理できるようにするものである。

 沼本氏によると、Azure Arc technologiesは製品というより要素技術で、外部のリソースをAzureのコントロールプレーンによって管理できるようにするのが狙いだという。「なんでも一元的に管理するというものではなく、Azureと同じように、仮想マシン、ログ、セキュリティセンターなどを使えるようにするものだ」(沼本氏)。

 2つめはデータ分析サービスの「Azure Synapse Analytics」。Azure SQL Data Warehouseが元になっているが、「データウェアハウスの機能拡張でなく、エンドツーエンドのワークフローをまとめた製品」と沼本氏は説明する。

 「例えば、これまではデータをもってくるETLのAzure Data Factoryや、ダッシュボードのPower BIなど、組み合わせをお客さまが考えなくてはならなかった。それをポータル的に統合し、セキュリティの管理も一括でできるようにする」。

 またパフォーマンス面についても沼本氏はアピールする。Igniteでは同じデータ分析をGoogleのBigQueryと比較し、処理速度で大きく勝るとデモしていた。「複雑なSQLの処理では、テーブルの結合などでパフォーマンスに大きな差が出る。そうしたクエリーエンジンの性能は、Microsoftがいままで培ってきた部分だ」(沼本氏)。

 3つめはRPAの「Power Automate」。Microsoft Flowが元になった製品だが、Microsoft FlowがAPIベースの自動化だったのに対し、UIの自動化などのフルオートメーションを実現したという。「Power Platformの製品のひとつという意味でも名前を変更した」(沼本氏)

 4つめは、ノーコード(プログラミング不要)でボットを作れる「Power Virtual Agents」だ。Power Platformに新しく加わった製品で、「ボットとPower Automateを組み合わせることもできる」と沼本氏は説明した。

Ignite 2019発表内容のうち沼本氏管轄下のハイライト4つ

DXのためのMicrosoftテクノロジーをデモ

 基調講演に話を戻すと、日本マイクロソフト株式会社 業務執行役員 エバンジェリスト 西脇資哲氏は、DXに関連するMicrosoftテクノロジーをデモした。

日本マイクロソフト株式会社 業務執行役員 エバンジェリスト 西脇資哲氏

 最初のデモは、日本マイクロソフトのオフィスのフロアマップについて。これにより、会議室の空きなどが可視化されるという。さらに、人がいる場所のヒートマップの時間ごとの移り変わりを見せ、「このデータを元に電力量を予測するといったこともできる」と西脇氏は説明した。

日本マイクロソフトのオフィスのフロアマップ。会議室の空きなどが可視化される
人がいる場所のヒートマップの移り変わりから電力量を予測

 次のデモは、イベント前日に発表された鹿島建設・鹿島建物の建物管理サービス。さまざまな機器の状況が表示されるほか、気温予測などのデータから電力消費を予測し、効率的な電力マネジメントを実現する。機械学習による故障予測もあり、これについては予測が外れていたときには過去の予測モデルに戻せる機能も紹介された。

鹿島建設・鹿島建物の建物管理サービス。さまざまな機器の状況が表示される
気温予測などのデータから電力消費を予測
機械学習による故障予測
過去の予測モデルに戻せる機能

 3つめのデモでは、工場のデジタルツインが紹介された。中国の工場の生産ラインや配送ルームの様子が、リアルタイムのCGとデータにより、ウォークスルーで見られ、故障もそこに表示される。

中国の工場のデジタルツイン。生産ラインや配送ルームの様子がリアルタイムでわかる

 4つ目は、小売りの例だ。商品の画像を学習して画像認識できるようにすることで、商品を撮影した写真から商品を認識するセルフレジを作り、QRコードで決済するところまで実現する。そして、同じ技術を棚卸しに使うところや、さらにLINEで写真を送るだけで社内システムに登録される例まで西脇氏は見せた。

商品の画像を学習
撮影した写真から商品を認識するセルフレジ
同じ技術を棚卸しに
棚卸し結果をLINEから社内システムに登録

 その次は、働き方改革のデモを行っている。日本マイクロソフトは週休3日を試行したが、それは5日分を4日で仕事するということにほかならない。そのための手段として、Microsoft Teamsでコミュニケーションし、レポートやメモを共有するところを西脇氏はデモした。

Teamsでコミュニケーションし、レポートやメモを共有

 また、JR東日本の小縣氏の「Outlookの予定表はMaaS」という言葉を引用し、Outlookの予定表から社用車シェアリングを予約したり、STATION WORKを予約したり、経費精算したりするところをデモした。

Outlookの予定表から交通手段を予約

 リモート勤務が導入されると、ビデオ会議が利用される。そこで、AIで人を認識して、背景をボカしたり、ビーチやオフィスっぽい画像にしたりする様子がリアルタイムでデモされた。また、ビデオ会議でホワイトボードを使うときに、人を透かしてホワイトボードの内容を見せるところもデモされた。

ビデオ会議で背景をボカす
背景をビーチの写真に
背景をオフィスの写真に
人を透かしてホワイトボードを見せる