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AirbnbやKnative、楽天モバイルなどが登壇、Canonicalは「オープンソースとつきあう10のルール」を披露

OpenStack Days Tokyo 2019 / CloudNative Days Tokyo 2019基調講演レポート

 クラウド技術に関する年次カンファレンスイベント「OpenStack Days Tokyo 2019 / CloudNative Days Tokyo 2019」が、7月22日~23日に開催された。

 本稿では、基調講演に登壇した各社のスピーカーの言葉を紹介する。

Airbnb:実例からインフラをマイグレーションするプロセスを紹介

 AirbnbのMelanie Cebula氏による「Performing Infrastructure Migrations at Scale」では、インフラの技術的負債を返すためにインフラをマイグレーションするプロセスについて、Airbnbでの例から説明した。

 移行にはアップデートからシステムの移動、作り替えまでの種類があることや、順番を決めるためには依存関係を考慮することなどが紹介された。また、新しい方式を使ってもらうためにそちらをデフォルトにすること、自動化や抽象化レイヤで気付かれないうちに移行すること、検証、ドキュメントやリーダーとの対話なども語られている。

AirbnbのMelanie Cebula氏
10個の教訓

Canonical:オープンソースとつきあう10のルール

 Ubuntuの開発元であるCanonicalのStephan Fabel氏は、「The 10 new rules of open source infrastructure」という題で、オープンソースとつきあう10のルールを披露した。以下、それらを列記する。

1. Consume unmodified upstream(カスタマイズなしの本家バージョンを使う)
2. Infrastructure-is-a-Product(Canonicalはインフラを提供するのではなくお手伝いをする)
3. Automate for day 1826(5年間のために自動化する。その先は予測できない)
4. Run at capacity on-prem. Use public cloud for overflow.(オンプレミスにあるハードウェアを活用し、それ以上の部分やディザスターリカバリをクラウドで)
5. Upgrade, don't backport(アップグレードするべきであって、古いバージョンにバックポートするべきでない)
6. Workload placement matters(どこで何が処理されているか、ワークロードの場所を理解することが大事)
7. Plan for transition(これからも技術が変わっていくことに対応していく)
8. Security should not be special(セキュリティは最初から作り込まなくてはいけない)
9. Embrace shiny object(キラキラした最新のものを取り入れて、イノベーションを勇気づける)
10. Be edgy, go Micro!(とがっていこう、Canonicalのmicrostackやmicrok8sを使おう)

 話の中では、ヤフーとのプライベートプラウドでの協業や、DeNAのUbuntuライブパッチ採用なども紹介された。

CanonicalのStephan Fabel氏
オープンソースとつきあう10のルール

Knative:PaaSとCaaS、FaaS/サーバーレス、Knativeを比較

 KnativeのOffering ManagerであるIBMのDoug Davis氏は、「Demand Less Choices!」と題して、プラットフォームの選び方とサーバーレスプラットフォームについて語った。PaaSとCaaS、FaaS/サーバーレスを比較し、多くの点でFaaS/サーバーレスが勝っているとしつつ、「これらの中から選ばなければならないわけではない」とした。

 また、Kubernetesを使うと自分でシステムやデプロイを管理しなくてはならないが、Kubernetesの上でKnatveを使うことでコードに集中したままでオートスケーリングなどのメリットが得られると説明。PaaSとCaaS、FaaS/サーバーレスの比較にKnativeを加えて、ほとんどの点を満たしている(ただし作業中の項目もあり)と主張している。

KnativeのOffering ManagerであるIBMのDoug Davis氏
PaaSとCaaS、FaaS/サーバーレス、Knativeの比較
Knativeのデモ。kn serviceコマンドでデプロイする

楽天モバイル:VNFによるキャリアネットワークを紹介

 楽天モバイルのカーン・アシック氏の講演「楽天モバイルの世界初完全仮想化クラウド型モバイルネットワーク」では、2019年10月のサービス開始に向けて構築した、VNFによるキャリアネットワークを紹介した。

 楽天モバイルでは基地局のネットワーク設備を仮想化してデータセンターに置いたので、基地局はアンテナと電源ぐらいだけのコンパクトにおさまっているという。中央データセンターは東京と大阪で冗長化し、データセンター内ではCisco ACIによるSDNを採用、ACIのAPICコントローラをOpenStackから制御するという。

楽天モバイルのカーン・アシック氏
従来と楽天モバイルの基地局
基地局、収容局、地域データセンター、中央データセンター
自動化により10分で1つの基地局が登録できる

レッドハット:Red Hat OpenShiftを紹介

 レッドハット株式会社の北山晋吾氏は「Change the Game, Change the World」の題で講演した。プラットフォームは「得られる価値が利用するコストを上まわらないと使われない」ということから、「価値がまだ大きくないのがこれまでのKubernetesだったのではないか」とし、KubernetesベースのプラットフォームであるRed Hat OpenShiftを紹介した。

レッドハット株式会社の北山晋吾氏
KubernetesベースのプラットフォームであるRed Hat OpenShift

GMOインターネット:OpenStackを採用しているモチベーションは?

 GMOインターネット株式会社の中里昌弘氏は、「OpenStackを用いたパブリッククラウドの国内事例と課題」と題して、クラウドサービスの基盤としてOpenStackを採用している歴史について語った。

 同社では2012年にお名前.comレンタルサーバーでOpenStackを採用したのを皮きりに、VPSサービスのConoHaやGMOアプリクラウドをOpenStackベースで開発してきた。OpenStackを採用しているモチベーションとしては、コスト、開発工数の短縮への期待、拡張性への期待、操作用APIの提供、社員をつなぐといった点があるという。

GMOインターネット株式会社の中里昌弘氏
GMOインターネットでのOpenStack採用の歴史