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Go Build――、ヴァーナー・ボーガスCTOが「AWS re:Invent 2017」で21世紀の開発者に伝えたメッセージ
2017年12月19日 06:00
「5年前、初めてこのカンファレンスを開催したときはまだ小さなテクノロジーイベントだった。あれ以来、われわれは3951もの新機能/新サービスをローンチしてきた」――。
11月30日(米国時間)、Amazon CTOのヴァーナー・ボーガス(Werner Vogels)氏は米ラスベガスで開催された「AWS re:Invent 2017」での自身のキーノートをこう始めた。
当時、クラウドが確実に世界を変える技術であることはすでに多くの人々が気づいていたが、オンプレミスをリプレースする存在になると確信していた人はどれくらいいただろうか。
だが、ボーガスCTOは「21世紀のITはリソースフォーカスからビジネスフォーカスにシフトすべき。ハードウェアの制約に縛られた時代は終わった」と力強く宣言し、“レジリエンス(resilience)”や“レートバインディング(late binding)”といった、当時はまだ聞き慣れなかったキーワードを示し、21世紀のアーキテクチャとしてクラウドが欠かせない技術となっていることを開発者たちに向けて熱く語っていた。
“Cloud Father”の別名でも呼ばれるボーガスCTOの言葉はいつもクラウドエンジニアの心に深く強く響く。彼の薫陶を受けたAmazon Web Services(AWS)の技術者たちは"ヴァーナーの理念"をそれぞれの胸に刻みながら、クラウドエンジニアとして新しいチャレンジに挑んでいく。
玉川憲氏が率いるIoTスタートアップのソラコムなどはその典型だ。
今回、ボーガスCTOは5年前のキーノートで掲げた「21世紀のアーキテクチャ」の進化をなぞりながら、これからの5年に起こりうるであろう技術的変化を提示しつつ、開発者に対してそれらをキャッチアップし続けることを促している。
本稿では、キーノートでのボーガスCTOの言葉をいくつかピックアップしながら、同氏が発信した、開発者へのメッセージを読み解いてみたい。
ビジネスにもAlexaを
- 音声はコンピューティングにおける次世代のメジャーディスラプションの象徴(Voice represents the next major disruotion in computing.)――、ビジネスにもAlexaを
キーノートの最初のトピックとして、インターフェイスとしての“音声(Voice)”の可能性に言及したボーガスCTO。デジタルへのアクセスがマシン中心主義から人間中心主義へと変化している中、音声こそがもっとも自然なかたちのコミュニケーション手段であり、音声インターフェイスの採用が人間中心主義へと回帰する第1歩になると強調する。「音声はすべての人々にデジタルシステムを解き放つ存在となる」(ボーガスCTO)。
事実、1年前とは比較にならないほど、音声インターフェイスはコンシューマの世界で広がりを見せている。中でも顕著なのが「Amazon Echo」や「Google Home」といった、音声をメインのインターフェイスにしたスマートスピーカー市場の急速な拡大で、AWSもここ1年、同社が開発する音声アシスタント技術「Amazon Alexa」をベースに、音声認識に関連するカバレッジを広げてきた。
また、前日(11/29)のジャシーCEOのキーノートでも、自動音声認識サービスの「Amazon Transcribe」がリリースされている。
だが、ここまでに挙げた音声インターフェイスの主戦場はスマートホームに代表されるコンシューマの領域を出ない。“次世代のメジャーディスラプション”である音声を、コンシューマの世界だけでなくビジネスの世界でもインターフェイスとして普及させていく必要がある――。
ここでボーガスCTOは、デベロッパーキット「Alexa for Business」の発表を行っている。対応リージョンは現時点で米国のみだが、正式サービスとしてのローンチ(GA)だ。文字通り、Amazon Echoのようなインテリジェントな音声サービスをオフィスにも提供するための開発ツールキットで、CiscoやPolycomといったメジャーな会議システムと統合できるほか、Office 365やG Suite、さらにはSalesforceやConcur、SuccessFactorsといったサードパーティのSaaSとのデータ連携も可能となっており、メールやカレンダーからビジネスアプリケーションまでを統合的に音声で操作できる。
開発者は、例えば受付応対のような“ビジネス対応のAmazon Echo”システムを自分自身で容易に構築できるようになる。
自宅でAmazon Echoに命令するのと同じようなシーンがオフィスでも繰り広げられるようになるというボーガスCTO。音声というインターフェイスがビジネスの世界にディスラプションをもたらす日は、すでに来ているのかもしれない。