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クラウドは次のフェーズへ――、「AWS re:Invent 2017」でアンディ・ジャシーCEOが示した5年間の総決算
2017年12月4日 12:25
Let It Rain:マシンラーニングをより身近な存在に
4つ目のカテゴリ、マシンラーニングを象徴する曲として演奏されたのは、エリック・クラプトンの「Let It Rain」。ジャシーCEOはこの曲の「Now I know the secret; there is nothing that I lack / If I give my love to you, you'll surely give it back(いま僕は秘密に気づいた/僕に欠けているものは何もない/僕が君に愛をそそげば/君は必ず返してくれるだろう)」という部分が、「いままさにマシンラーニングの開発者(ビルダー)たちが感じていることそのものだ」と強調する。
「ビルダーたちはマシンラーニングが難解なブラックボックスになることを望んでおらず、より簡単にマシンラーニングにエンゲージできるようになることを望んでいる」(ジャシーCEO)。
マシンラーニングは現在、AWSがもっともその拡充を図っている分野でもあるが、今回のキーノートにおいても多くのアップデートが発表されている。
・Aazon SageMaker:マシンラーニングのモデル構築から学習、デプロイ、API化まで一気通貫でサポートするスケーラブルなマネージドサービス(GA、バージニア/オレゴン/オハイオ/アイルランド)
・AWS DeepLens:ディープラーニングに対応した開発者向けビデオカメラで、SageMakerとLambdaと統合できるほか、AWSの各サービスと連携可能(2018年にAmazon.comで購入可能)
・Amazon Rekognition Video:画像認識サービス「Amazon Rekognition」のエンハンスで、ライブビデオやアーカイブビデオからの行動分析や人間の認識を可能に(GA、バージニア/オレゴン/アイルランド)
・Amazon Kinesis Video Streams:「Amazon Kinesis」のエンハンスで、ビデオストリームとタイムエンコードされたデータの解析が可能に(GA、オレゴン/東京/バージニア/フランクフルト/アイルランド)
・Amazon Transcribe:スピーチtoテキストを支援する自動音声認識サービス、現時点では英語とスペイン語のみ、標準音声と電話音声をサポート(プレビュー、バージニア)
・Amazon Translate:自然言語に対応したリアルタイムな機械翻訳サービス、現時点ではアラビア語、フランス語、ドイツ語、ポルトガル語、簡体字中国語、スペイン語に対応(プレビュー、バージニア/オハイオ/オレゴン)
・Amazon Comprehend:フルマネージドな自然言語処理サービス。AWSが用意するモデルを利用してテキストから特徴(キーフレーズ、感情、エンティティなど)を理解し、学習する(GA、バージニア/オハイオ/オレゴン/アイルランド)
もっとも注目されるアップデートは、やはり最初に紹介されたSageMakerだろう。
「Let It Rain」のくだりでジャシーCEOが触れたように、SageMakerはマシンラーニングをより多くのユーザーの手に届きやすくするため、そして開発者のフラストレーションを取り除くため、ひたすら簡単であることにこだわったマネージドサービスだ。モデルのビルド/トレイン(学習)/デプロイをエンドツーエンドでサポートしながら、各コンポーネントを分離して利用することもできる。
モデル作成にはデータサイエンスで標準的に使われているJupyter Notebook環境をワンクリックで設定できるほか、トレーニングもデプロイもはワンクリックで利用可能だ。まさにオールインワンのマシンラーニングサービスといえる。
もうひとつ、多くの開発者が関心を示したのが、ハードウェアデバイスのDeepLensだ。本体の上部にはHDビデオカメラが搭載されており、そこから取り込まれた画像をもとにディープラーニングに最適化されたエンジンが処理を実行する。
「箱を開けてから10分で利用可能」とジャシーCEOが説明する通り、こちらも簡単さにこだわった設計で、チュートリアルやデモ、構築済みのモデルなどがあらかじめ搭載されている。
「Let It Rain(雨よ降れ)」の歌詞さながらに、ジャシーCEOがマシンラーニング関連のアップデートを怒濤のごとく繰り出すさまは、AWSがマシンラーニングの分野でもシェアを拡大する意思を示している。おそらく来年以降もマシンラーニングにフォーカスしたAWSのアプローチが続くことは間違いない。