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Linus Torvalds氏が登壇、「約10週間のリリースサイクルは続く」
LinuxCon Japan 2016レポート
2016年7月19日 06:00
カーネル開発動向を解説する名物コーナー「The Kernel Report」
初日の基調講演では、Linux開発ニュース「LWN」編集長であり自身もカーネルハッカーであるJonathan Corbet氏が最近のカーネル開発動向を解説する名物コーナー「The Kernel Report」も行われた。また、その中の1つのテーマについて2日目のCorbet氏によるブレークアウトセッションも行われたので、あわせてレポートする。
まず最近のリリース状況について。最近の6リリースのリリース日と変更量を示し、一貫したペースでリリースされていると語った。なお次の4.7のリリースについては「技術的な問題ではなく、誰かさん(Torvals氏のこと)の旅行スケジュールで遅れている」とコメントした。
コントリビューターの数については「だいたい毎年増えている」という。同時に新しいコントリビューターの数のグラフがほぼ同数になっていることを示しつつ、「新しい人の約半分は1つのパッチだけコントリビュートしてそこで終わっている」と説明。全体ではスムースで健全なプロセスになっているとした。
続いて、テーマごとに変化が語られた。「セキュリティ」の変化については、発見される脆弱性が年々増えていることを示し、「それを修正するのは一つの役割」としつつも、「脆弱性の修正はモグラ叩きのようなもの。脆弱性をなくすことを考えなくてはいけない」と語り、基盤となるソフトウェアのセキュリティを支援する「The Core Infrastructure Initiative(CII)」の活動を紹介した。
「テクノロジー」の変化については、永続メモリが取り上げられた。「これまでのコンピュータは、メモリは速くてストレージは遅いことを前提に最適化していた。それを根本から変えようとしている」と課題を提起した。
「カーネルの役割」の変化は、ユーザースペースのプログラムがパフォーマンスのためにカーネルをバイパスする技術が取り上げられた。これまでは、上記の永続メモリの一部や、ネットワークのIntel DPDKなど、特殊な分野で使われていた。
それが変わりつつあるとCorbet氏はいう。現在パッチが提案されている「Transport over UDP(TOU)」では、OSのネットワークスタックをUDPレイヤーまで使い、その上にユーザースペースでプロトコルスタックを実装する。Googleの提唱するQUICもTOUの一つだ。これにより、OSのライフサイクルより速くプロトコルを実装できるのが利点の一つとされている。ただし、ルーターなどが理解できないプロコルを通さない問題や、セキュリティチェックの問題、アプリケーションが独自のプロトコルだけで話すようになっていいのかという問題などが指摘されているという。
「Copyleft」については、ベンダーのライセンス軽視が指摘されることがあるという。「GPLはLinuxが平等に戦い、コントリビューションを促進する基礎」とCorbet氏は改めて強調した。
最後は「ドキュメント」の変化。これについては、Corbet氏による新しい提案が採用される予定とのことで、2日目のブレイクアウトセッションに話が続いた。