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オープンソースビジネスの3つの「P」のフェーズとは? LinuxCon Japan 2016初日基調講演レポート
ブロックチェーンプロジェクト「Hyperledger」の解説も
2016年7月15日 11:27
Linuxの開発者が集まる世界的な技術カンファレンス「LinuxCon Japan 2016」が、7月13日に都内で開幕した。開催期間は15日まで。主催は、Linux開発の非営利コンソーシアムでありLinus Torvalds氏を雇用している「The Linux Foundation」。今年は同じ枠の中で「ContainerCon 2016」が開催されるほか、併催イベントとして「Automotive Linux Summit」も13~14日に開催された。
OSSビジネスの3つの「P」のフェーズ
初日の最初の基調講演には、The Linux FoundationのエグゼクティブディレクターのJim Zemlin氏が登壇。「Open source market conditions」と題して、最近のオープンソースビジネスの状況について語った。
Zemlin氏はまず、Linuxやその他のオープンソースソフトウェア(OSS)の開発状況について、さまざまな数字を挙げながら、多くの参加者とコードのコントリビュートがなされていることを示した。そして、第1世代のOSSはOSやデータベースなどすでにプロプライエタリで存在したソフトと同じ市場をとっていったが、新世代のOSSはクラウドやビッグデータなど何もないところに新しいイノベーションをもたらしたと語った。
それをふまえてZemlin氏は、持続可能であるためには開発モデルだけではなくビジネスモデルも必要であるとして、オープンソースのビジネスの3つの「P」のフェーズを示した。フェーズ1は開発コミュニティによる“Project”(プロジェクト)の段階だ。フェーズ2は“Product”(製品)の段階であり、顧客の要件をうけてソフトを改善する。フェーズ3は“Profit”(収益化)の段階であり、サブスクリプションやアドオンなどさまざまな収益モデルでOSSから利益を上げるものだ。
氏はまた、システム構築はこれまで、各コンポーネントのベンダーに連絡して検証するなどして数ヶ月かかっていたのが、ビッグデータのように新しいテクノロジーを使い始めてからサポートしてくれるベンダーを探すように変わってきていると語った。
ほかのトレンドとしてはクラウドがある。「昔はソフトウェアでお金をとっていたが、現在ではソフトウェアはサービスの構成要素というトレンドがある」とZemlin氏は述べた。
また、同じ開発リソースであれば、すべて自社で開発するより、共通の部分はOSSを選び、重要なコードだけ自社でコストをかけて開発するという利点を主張した。それには、OSSを賢く選び、プロフェッショナルに管理する必要がでてくる。そのために必要な要素として、明確な戦略やポリシー、結果を出すのに有効なプロセス、ツールとトレーニングなどをZemlin氏は挙げた。さらに、知的所有権などの管理も必要だとした。
そのためのツールとして、OSSによって企業がどれだけ効率的にビジネスにできているかの自己診断ツールをThe Linux Foundationがリリースしたと説明した。
Zemlin氏はここまでをまとめて、「オープンソースに準備してください」というメッセージを語った。
ここからZemlin氏は、The Linux Foundationの活動を紹介した。まず先ほどのビジネスのフェーズをあてはめて「プロジェクトのフェーズで働いている」と位置づけ、650の企業が参加し、多くのプロジェクトが動いていると解説した。
氏はITのすべてのレイヤーにオープンソースが存在していることを示し、そこでThe Linux Foundationのひとつの活動として、プロジェクトを横断したセキュリティやガバナンス、知的所有権など共通の課題への取り組みを挙げた。
そして、IoTや分散台帳(ブロックチェーン)、SDN、クラウド、自動車、法的プログラム、ビッグデータなど、The Linux Foundationが関わるプロジェクトを紹介した。
最近のトピックとしては、無料でSSL/TLS証明書を発行することですべてのHTTPを暗号化することを目指す「Let's Encrypt」があり、これもThe Linux Foundationがホストしている。
また、「The Core Infrastructure Initiative」は基盤となる重要ソフトウェアだがセキュリティの問題に手が回らないプロジェクトを支援するもので、ホワイトハウスとも会議を開いたと語られた。
Zemlin氏は最後に「Open source is key to your future: invest a little and get a big return」という言葉を掲げ、「オープンソースにコードをコントリビュートしたり、エンジニアが参加することを認めることが、あなたの組織の利益になる」と語って講演を締めくくった。