VMwareの最新ハイパーバイザー「ESX 4」はどの程度進化したか?
ヴイエムウェア株式会社は4月22日、仮想化プラットフォームの最新版「VMware vSphere 4」を発表した。VMware vSphere 4は、仮想化ベースのクラウド環境を構築するのに最適化された製品と位置づけられているとおり、管理性・可用性など大規模環境での運用に対応しているのが特長となっている。もちろん、ベースとなるハイパーバイザーそのものの機能強化も行われている。
今回は、vSphere 4のハイパーバイザーである「VMware ESX 4」の強化点を中心に紹介する。
■VMkernelの64ビット化で基本性能が大幅に向上
ESX 4は、ベースとなるVMkernelが64ビット化されたのが大きな改善点だ。ESX 3.xまでは32ビットのVMkernelを利用していたが、今回64ビット化したことで、オーバーヘッドの軽減やメモリアクセスの改善につながっている。その結果、スケーラビリティの向上にも大きく貢献している。また、VMkernelの64ビット化にあわせて、サービスコンソールも64ビット対応している。なお、サービスコンソールの64ビット化により、ESX 4は32ビットCPUおよびIntel VT/AMD-V未対応のCPUでは動作しなくなっている。
64ビット化の効果は大きく、ESX 3.xと比べて基本性能が大幅に向上している。
ESX 3.5 | ESX 4.0 | |
仮想プロセッサ | 4つ | 8つ |
仮想メモリ | 64GB | 255GB |
ホストサーバーの物理プロセッサコア | 32コア | 64コア |
ホストサーバーの物理メモリ | 256GB | 1TB |
同時稼働可能な仮想マシン数 | 128 | 256 |
ESX 4では仮想ハードウェアも進化しており、SASやIDEといったデバイスを仮想マシンで利用できるようになった。これにより、IDEを利用する古いOSもESX 4ではゲストOSとしてインストールできるようになっている。ただし、VMwareが古いOSすべてをサポートしているわけではない。
ハードウェアの仮想化支援機能に関しては、インテルのEPT(Extended Page Tables)を新たにサポート。EPTは、Xeon 5500番台などで採用されている仮想化支援機能で、メモリのマッピングを計算する機能をCPUのハードウェア側で実現するもの。ESX 3.5からサポートしているAMDのRVI(Rapid Virtualization Indexing)やインテルのVMDq(Virtual Machine Device Queues)を含め、ESX 4はハードウェア仮想化支援機能のすべてに対応したハイパーバイザーとなった。
そのほか、ESX 4では、PVSCSIアダプタというSCSIデバイスの準仮想化アダプタを新たに用意。準仮想化は、物理マシンに実際に搭載されているハードウェアをエミュレーションするのではなく、仮想環境にとって都合の良い仮想ハードウェアを規定することで、エミュレーションによるオーバーヘッドを最小限に抑えられるのが特長だ。
■パフォーマンスも大きく改善
ESX 4の基本性能が向上した結果、各種パフォーマンスも大きく改善している。
たとえば、EPTやRVIといったハードウェアの仮想化支援機能に対応したことで、Citrix XenAppの場合、ESX 3.xと比べて約30%パフォーマンスが向上している。そのほか、PVSCSIにより、LSI Logicベースの完全仮想化アダプタと比べ、ファイバチャネルのI/Oで40%向上、ソフトウェアiSCSIのI/Oで20%向上している。
ネットワークのスループットについては、ESX 3.5と比べ、仮想マシン16台利用時で80%以上向上。リソース管理も同様で、VMotionの性能はESX 3.5と比べ、75%向上。また、仮想マシン20台をプロビジョニングする時間が半分近くにまで短縮するなど、VMwareのファイルシステムであるVMFS(Virtual Machine File System)のパフォーマンスも向上している。
アプリケーションのパフォーマンスも大きく改善。オラクルデータベースの場合、8つの仮想プロセッサを搭載した仮想マシンと、2CPU(8コア)の物理マシンと比較して、85%程度のパフォーマンスを実現。1秒あたり8900のデータベーストランザクションを達成している。また、SQL Serverの場合、4つの仮想プロセッサを搭載した仮想マシンと、1CPU(4コア)の物理マシンと比べると、90%のパフォーマンスを実現している。
■ESXiも同等の性能で同時期に公開予定
VMwareではESXiを無償提供しているが、これもESX 4と同様に機能強化される。機能強化の内容はESXとまったく同じだ(サービスコンソールはESXiには用意されていない)。なお、ESX(ESXiも)ではICH8/9/10をサポートしているので、ESXi 3.5で起こっていたSATA HDDにインストールできないといった問題も解決している。ESXi 3.5でインストールできず仮想環境を体験できなかった方も、ESXi 4なら手軽に試せるだろう。Core i7ベースのPCなどで、EPTの効果などを試してみるのもおもしろいのではないか。
個人的には、ESX 3.5からESX 4へのアップグレードの方法や、ESX 3.xベースの仮想マシンのESX 4への移行方法などの情報も紹介したかったのだが、製品発売前ということもあり、詳細な技術情報を入手することはできなかった。このあたりは、今後製品版が公開された段階で、あらためて紹介していきたい。