仮想化道場

転換期を迎える2014年のIntelのサーバー向けプロセッサ (CPUとなるXeon Phi)

CPUとなるXeon Phi

 11月末に米国で開催されたスーパーコンピュータに関するカンファレンス「International Supercomputing Conference 13(SC13)」において、Intelから、14nmプロセスで製造する次世代のXeon Phi(開発コード名:Knights Landing)に関して発表があった。

 2014年にリリースするKnights Landing世代から、従来のようなPCI Expressのカードだけでなく、メモリやインターフェイスを搭載したパッケージとしても提供されるという。

 具体的には、プロセッサチップと、転送速度が速いハイバンドメモリをMCM(マルチチップモジュール)でパッケージ化。さらに、パッケージの外に大容量の外部メモリ(統合されるメモリより遅延が大きい)を搭載する。プロセッサコアの近い部分に高速なメモリを配置することで、Xeon Phi自体の性能がアップする。

 将来的には、内部のハイバンドメモリは、積み重ねて高さ方向に伸ばすことで(積層メモリ:2.5Dメモリ)大容量化も検討されている。

 このような改良により、Knights Landingは、倍精度浮動小数点演算性能として3TFlopsにも性能がアップするという。

 Knights Landingに関しては、今までのXeon Phiで使用されていたPentiumベースのコアではなく、2013年に発売されたAtom Silvermontコアが利用されていると予想される。

Knights Landingでは、カードでの提供ではなく、1チップ化している
Knights Landingは、MCMとしてパッケージ内部にハイバンドのメモリとプロセッサが納められている

 このKnights Landingを用いる場合は、コプロセッサではなく汎用のプロセッサとしてシステムを構築することができるため、Xeon E5などのCPUを別途用意しなくても、Knights Landingだけでサーバーを構成することができる。

 ただし、一般のXeonのような汎用プロセッサではないため、やはり、すべてのアプリケーションが高い性能で動くわけではない。Xeon Phi(Knights Corner)はAtom(Silvermontコア)ベースだと予想されるので、エンタープライズで利用するデータベースなどのアプリケーションを高速化するのは難しいだろう。

 こういったことを考えると、Knights Landingだけで構成されるサーバーは、ブレードサーバーなどの形態で高密度シャーシに搭載され、数千、数万プロセッサで構成されるHPCコンピュータとして利用されるのではないか。

 なおIntelでは、Knights Landingに関して、積層メモリによる内部メモリの大容量化以外に、ファブリック、スイッチ、次世代ストレージ、インターコネクトなどを搭載していく予定にしている。

 さらに今後は、顧客の要求に応じたカスタム版のKnights Landingの提供も計画している。例えば、内部のハイバンドメモリを大容量化したり、インターコネクトにInfiniBandを搭載したり、といったカスタム化が考えられているという。

 余談ではあるが、GPGPU側でも次の取り組みが進められている。NVIDIAでは、CES2014においてTegra K1を発表した。Tegra K1は、GPU部分には、Geforce600シリーズで採用されたKeplerアーキテクチャのコアを使用している。このため、Tegra K1のGPUコアは192コアへと大幅に増えている(Tegra 4では72コアだった)。

 さらに違いが大きいのはCPUコアだろう。Tegra K1は、2種類のCPUコア製品が計画されている。2014年前半には、32ビットのCortex-A15(4コア+1コア)を採用した製品がリリースされる。さらに今年後半には、NVIDIAがARMの64ビットアーキテクチャのARMv8をベースに独自開発した、Denverコア(2コア)搭載のSoCを計画している。

 特にDenverコアは、ARMが開発した64ビットのCortex-A57/53よりも、性能を追求したアーキテクチャとなっているようだ。このため、HPC分野への適応を視野に入れている。

(山本 雅史)