週刊海外テックWatch
「ムーアの法則」に代わる新法則を 米国の封鎖が生んだ中国の逆転戦略
2026年6月1日 11:24
割れる評価、制裁が育てた逆説
一連の発表は、半導体業界の常識を覆して一気に世界のトップに立とうという中国の壮大な野望の現れだが、業界の評価は割れている。
TechTimesは「No Independent Audit Yet(独立検証なし)」と題してHuaweiの発表を報じ、トランジスタ密度の大幅増加の数値はすべてメーカー側のデータであり、「これらの数値を検証した独立した監査機関は一つもない」と疑問を投げかけている。
LogicFoldingは新しいアイデアであって、それだけに量産での実証が困難、というのがその見方だ。半導体製造では、歩留まりが大きな壁となるためだ。ただ、「主張の核心部分は、実証されていないものの極めて重要だ」とも認めている。
市場調査会社Omdiaのアナリスト、Lian Jye Su氏は「Huaweiが明確な優位性を獲得できるかは今後の課題だが、少なくともこれは新たな道筋であり、サプライチェーンの課題に直面する中で同社が見出したブレイクスルーだ」とWall Street Journalに語っている。
半導体専門メディアGlobalSemiResearchは「Huaweiが解こうとしている問題は本物だ」とする。EUV露光装置は1台1.5億ドルを超え、2ナノメートルの設計コストが10億ドル超に達する微細化コストの壁は現実だとした上で、「真のパラダイムシフトとなる可能性は排除できない」としている。
ワシントンDCに本部を置くシンクタンクのCSIS(戦略国際問題研究所)のレポートによると、米国が対中半導体輸出規制を本格化した2022年、中国のIC生産量は9.8%減少した。狙い通りの打撃だったといえるが、その先は当初の意図と異なる方向をたどった。中国製半導体製造装置の国内シェアは、規制前の10~15%から2024~25年に25~35%へと急伸しているという。皮肉なことに、国産チップを採用せざるをえない環境を一気に整えたと言える。
それでも弱点は残っている。AIに必須のHBM(高帯域幅メモリ)は依然として韓国SK Hynixへの依存が続き、SMIC(中芯国際)の5ナノメートルプロセスの量産歩留まりは非公表のままだ。モデルの訓練では、なお米国製チップに依存する部分も多い。中国AIが国内で完全なエコシステムを構築するには、まだまだ多くの壁がある。