大河原克行のクローズアップ!エンタープライズ

サポート終了まであと10カ月、クラウドがWindows Server 2003移行の切り札になる? (移行には大きく3つの手法が)

移行には大きく3つの手法が

 では、Windows Server 2003からの移行にはどんな方法があるのか。

 すでに、2000社の取引先が持つ約1万2000台のWindows Server 2003のうち、8月末時点で、97%のユーザーに対して提案を完了させ、約半分(52%)に当たる6500台の移行が完了している富士通エフサスでは、次のように説明する。

 「Windows Sever 2003からの移行には、基本的には3つの方法がある。ひとつは、後継機種への単純入れ替えによるマイグレーション。2つめには、サーバー仮想化による統合。そして、3つめには、クラウドを活用した移行。ここではパブリッククラウドとプライベートクラウド、ハイブリッドクラウドの3つの提案が含まれる」。

 後継機種への入れ替えでは、運用変更なしで移行できるというメリットがあるものの、機器手配にかかる期間や、基盤設計期間を考慮する必要であり、一般的には約半年間という時間が必要とされる。新OS上における既存アプリケーションの動作確認のほか、新たなOS環境およびハードウェア環境では、ミドルウェアのライセンス数変更といった場合も想定され、それらの確認作業も必要になる。

 Windows Server 2003のサポート終了まであと10カ月という期限を考えれば、まだ移行は可能だが、SIerはすでに多くの移行案件を抱えており、取りかかるのが遅くなればなるほど、「すぐに対応してもらえるかどうかわからない」という状況にもあるのも確かだ。

 富士通エフサスが手がけた、これまでの移行完了案件の多くは、単純移行が占めるというが、それはまだ期間的猶予があったため。これからは単純移行を選択するユーザー企業は減少するとみている。

 一方、サーバー仮想化では、マイグレーションに伴うアプリケーションの動作確認作業に加えて、仮想環境の設計期間を考慮する必要があり、やはり一定の移行期間がかかる。だが、将来へのさらなる仮想化統合や、クラウドへの移行を見据えた移行計画を立案することができ、中長期的なシステム構築には仮想化は重要な意味を持つといえるだろう。このタイミングを機に、将来を見据えたシステム環境へと移行するユーザー企業も少なくない。

 そしてクラウドへの移行は、オンプレミス環境における後継機種への移行、仮想化によるサーバー統合に比べると、期間という点では、大幅な短縮が可能になるメリットがあるほか、初期にかかる移行投資コストの低減といった点でも有利になる。IDCジャパンによる2014年6月時点の調査では、クラウドへ移行するとした企業はわずか9%であったが、これは今後増加していくことになりそうだ。

 だがその一方で、さまざまなクラウドサービスを比較した上で、それぞれの企業システムに合致したサービスを選択するノウハウが必要なこと、どの部分をクラウドに移行するのが最適であるかという判断を的確に下すこと、効果的な運用管理を見据えた選択が必要であるといったことが、クラウド導入の鍵になる。

 富士通エフサスでは、9月末までの期間限定としていた「Windows Server 2003 リプレースキャンペーン」を、2015年3月まで延長した。Windows Server 2003からの移行において発生する個別の課題確認とプランニング、移行提案を無償で提供。クラウド環境や仮想化環境への移行において、適切な取り組みを提案するもので、富士通製サーバー環境だけでなく、他社サーバー環境や、富士通エフサス以外から導入したユーザーも対象にするという。

 こうしたサービスは、富士通エフサスからだけでなく、さまざまなSIerからも提供されており、それらを利用することで、適切な移行プランの策定が可能になるといえよう。

(大河原 克行)