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ソラコム創業秘話を玉川社長が語る~福島県喜多方市で會津熱中塾を開催

IT産業関係者が講師で参加する會津熱中塾とは?

 9月10日、福島県喜多方市で行われた會津熱中塾において、ソラコムの玉川憲社長と、ヒューマンセントリックスの中村寛治社長が講師となり、會津熱中塾の塾生を対象に授業を行い、約50人が参加した。

 ソラコムの玉川社長は、「AWS(Amazon Web Services)の時代にはたくさんのウェブサービスを作りたいと思っていたが、ソラコムではたくさんのIoTサービスを生み出したい」と語る。一方、ヒューマンセントリックスの中村社長は「今日は講義のなかに動画を入れることで、よりわかりやすく伝わることを発見してほしい」と発言。それぞれ自らの経験をもとにした授業を行った。

 會津熱中塾は、「もう一度、7歳の目で世界を見る」ことをテーマに、30代、40代の男女を中心に社会人学習を行うものだ。第一線で活躍し、達成感を持った教諭陣の話を聞くことで、生徒となる人たちに、やる気を出し、ものごとの見方を変えてもらい、刺激を与えることを目的としている。IT産業の関係者が多くの講師を務めているのが特徴で、いずれもボランティアで参加している。

9月10日、福島県喜多方市で行われた會津熱中塾

母体となる熱中小学校の取り組み

 母体となっているのは、山形県高畠町の廃校となった小学校校舎を利用して展開している「熱中小学校」だ。

 俳優の水谷豊さんが主演し、1978年~1981年にかけて日本テレビ系列で放映された大ヒット学園ドラマ「熱中時代」第1シーズンのロケ地として利用された、山形県高畠町立時沢小学校が、2010年3月に廃校となった。それを利用して、社会人学習および地域創生に取り組んでいることから、「熱中小学校」と名付けられている。

 2015年10月に開校した熱中小学校は、各分野の第一線で活躍した有識者が“教諭”となり、ベンチャーを目指す人たちを対象にしているのが主目的だが、学習意欲が高い地域に住む高齢者なども参加。2016年10月からは第3期が始まり、生徒数は110人を超える。

 講師には、元インテルの社長を務めた傳田信行氏や、元日本マイクロソフト社長の古川享氏のほか、内田洋行の大久保昇社長、ジャストシステム創業者であるMetaMoJiの浮川和宣社長、日本コンピュータシステムの犬飼善博社長、ソフトバンクコマース&サービスの溝口泰雄社長兼CEO、イーストの下川和男会長、プラネックスコミュニケーションズの久保田克昭会長、アイ・オー・データ機器の細野昭雄社長といったIT業界関係者が名を連ねる。

 また、久米繊維工業の久米信行取締役会長、元オフコースのドラマーである大間ジロー氏、料理家の山田玲子氏、元山形大学学長の仙道富士郎氏などが参加。さらに、PTA会長には、元日本アイ・ビー・エムの社長(現・相談役)である北城恪太郎氏が就任している。

 それぞれが、国語や社会、道徳などの科目を担当。自らの経験を生かした講義を行うのが特徴だ。

 今回、会津熱中塾で講師を務めたソラコムの玉川憲社長は、熱中小学校で教頭を務めているほか、熱中小学校の次世代百葉箱には、内田洋行とともにソラコムが参加。百葉箱のなかに、気温や湿度、照度、気圧を測るためのセンサーと、監視用のWebカメラを内蔵するとともに、ソラコムのIoT向けのデータ通信サービス「SORACOM Air」を採用。収集したデータや画像情報は、自動的にAWS上に蓄積して、いつでも閲覧できるようになっている。

 またヒューマンセントリックラボの中村社長も、放送室担当教諭として、熱中小学校のプロモーションビデオの制作を行ったり、講師を務めたりしている。

熱中プロジェクトとして全国展開も開始

 會津熱中塾は、熱中小学校の活動を、地域を超えて横展開した第1弾でもあり、これに続き、9月には富山県高岡市の熱中寺子屋、10月には東京都八丈島の熱中小学校を開校。さらに北海道更別村、徳島県上板町、宮崎県小林市にも展開していくことになる。これにより、全国をまたいだ熱中プロジェクトの動きが加速することになる。

 ちなみに9月18日には、山形県高畠市の熱中小学校で初の運動会が実施される。ドローンを活用した借り物競走や、人間大玉を用いた競技など、最新技術を用いながらも世代を超えて参加できる、新たな時代の運動会を開催するという。

 會津熱中塾は、2015年11月に、第1回オープンキャンパスを開催。熱中小学校の校長を務めるスペースマ―ケットの重松大輔社長などが講演。2016年1月に開催した第2回オープンキャンパスでは、元インテル社長の傳田信行氏や、元マイクロソフト社長の古川享氏などが講師を務めた。

 8月6日には会津若松市の嘉永蔵ホール(末廣酒造)で開塾式を行い、今後、月1回のペースで授業を行う予定。受講費用は全7回で1万円。現在、100人以上の塾生がいるという。

 2回目となった今回の会場は、国の重要文化財に指定されている新宮熊野神社の長床。塾生全員で雑巾がけをするところから授業は始まった。

会場は、重要文化財に指定されている新宮熊野神社の長床
塾生全員で床の雑巾がけをするところから授業は始まった
汚れた雑巾をみんなで洗う。小学校以来の雑巾がけという人もいた
絞った雑巾を干して、次に会場設営へ
続いてみんなでゴザを敷く。ちょっとした運動会の気分
みんなで隙間がないように調整する
続いて座布団を用意。塾生がみんなで準備を行う
講義の様子