最大の役割は「ソリューションプロバイダー」としての認知を高めること~デル郡信一郎社長

5年ぶりの日本人社長登板でデルはどう変わるか?


 2011年7月1日付けで、デル株式会社の社長に、郡信一郎氏が就任した。約5年間にわたり社長を務めてきたジム・メリット氏からのバトンタッチによって、久しぶりに日本人社長が誕生したともいえる。

 郡新社長は、2004年4月にマーケティングディレクターとしてデルに入社。主に公共分野で実績を持ち、防衛庁(当時)からの5万6000台一括受注といった大型案件の獲得や、教育分野におけるデル製品の浸透などに手腕を発揮した。

 社長に就任した郡氏は、「デルが目指すのはソリューションプロバイダー。しかし、日本での認知はまだまだ低い。私の役割はこの認知を高め、成果へとつなげることにある」と抱負を語る。また、クラウドビジネスへの取り組みにも力を注ぐ姿勢をみせ、日本にデータセンターを開設する計画も明らかにした。

 郡新社長に、日本市場における、今後のデルの方向性などについて聞いた。

 

社長就任で大きな挑戦の場をもらった

――デルはソリューションビジネスの強化や、積極的なM&Aの実行など、大きな変革のなかにあります。一方で、日本では東日本大震災の傷跡が色濃く残っています。この時期の社長就任をどうとらえていますか。

デル株式会社 代表取締役社長の郡信一郎氏

郡社長:2011年7月1日付けでの社長就任は、私にとって、大きな挑戦の場をいただいたと思っています。しかし、この時期でなかったら挑戦の大きさが違うのかといえば、そんなことはない。常に経営環境は変わっていますし、会社自身も変わらなくてはいけない。ただ、前任のジム・メリットに感謝したいのは、大きな変革を推進し、これを軌道に乗せ、結果が出ている。5年前よりもいい状況で私にバトンを渡してくれたという点です。

 また、継続性という観点でも流れを作ってくれた。人材増強はそのひとつの成果であり、こうした継続性への取り組みの成果は随所にあります。私は、いいものはもっと継続していきたい。そして、デルの変革はまだ道半ばですから、それによって変革するところはもっと変革させたい。

 一方で、未曾有と言われる東日本大震災においては、お客さまを支援するために、デル日本法人が一致団結して取り組んできました。これによって社員のきずなが強まったのは確かです。


――5年ぶりの日本人社長の就任ですね。この点はなにか意識していますか。

郡社長:私自身、中身は外国人みたいなところもありますが(笑)、母国語でお客さまと話せるということは、双方にとってより意図が伝わりやすいことにつながるとは思っています。国内のお客さまからニーズを吸い上げて、本社に伝えるという社長の役割は、これまでとは変わりませんが、日本のお客さまが求める微妙なニュアンスを伝えることができるようにはなるでしょう。

 ただ、社内的には、本社との交渉も含めて、どこの国籍か、どの言葉をしゃべるかではなく、いかにリーダーシップを発揮できるかの方がはるかに大切です。その点では日本人か、そうでないかということは問題ではないですね。


――メリット前社長からは、引き継ぎでなにか言われたことはありますか。
2011年6月22日に行われた記者会見で握手する郡信一郎社長(右)と、ジム・メリット前社長

郡社長:デルが持つダイバーシティ(多様性)を大事にするようと言われました。それは私も感じていたことです。デルの風土は、現場主義、実力主義です。そして、デルは役職によって発言力が決まる会社ではありません。正しい答えを持っている人が大きな声で発言すべきという風土があり、これが結果として、お客さまのためにもなるのです。よりお客さまに近い視点から、複数、多数の情報を得て、私が正しい判断ができるような形にしていきたいですね。

 私もお客さまのもとに出向くようにしますが、現場の社員は私以上にお客さまと話す機会が多いですから、それを有効活用することが大切です。

 

公共分野だけでなくデルの全体像を見てきた

――郡社長は公共分野での経験が長いですが、公共分野は、デルが日本市場で弱い分野。その分野からの社長就任というのは興味深いですね。

郡社長:公共分野への取り組みは、外から見るとデルは弱く見えるかもしれませんが、このローカル色が強い領域において、過去5年間で質を大きく高めることができたといえます。そして、公共のお客さまに対して、デルの良さを理解していただくという活動の経験は、すべてのお客さまに通じるものです。その点でも公共分野では貴重な経験をしてきました。

 また、公共営業本部長を4年間務めましたが、その間には兼務で、従業員規模500人~3500人の、いわゆるミッドハイのお客さまを担当させていただいた経験もありますし、さらに入社直後には、マーケティングディレクターとしてコンシューマ製品まで担当していました。デルの全体像を見ることができる経験をしてきました。

 いまデルは、日本において、ソリューションプロバイダーとしての認知を高めようとして活動しています。だが、すべての領域において、すぐに認知を高めることはできないでしょう。公共分野ではHPCという切り口から、ソリューションプロバイダーとしての認知を高めてきました。これと同じように、まずはデルが持つソリューションが、最も効果を発揮する領域で、その認知を高めていきたい。業種や業界、あるいは用途というカットで、複数のお客さまが、デルのソリューションを高く評価していただける領域から攻めていきます。


――7月1日付けで社長に就任した際には、社員に対してはどんなことを話しましたか。

郡社長:東日本大震災によって、日本という国、国民が復旧、復興していかなくてはいけないこの時期に、デル日本法人を率いることに強い責任を感じていることや、デルの変革は道半ばだが、日本の組織は成功の軌道に乗っていることなどを話しました。

 しかし、大切なのは、いまの状況は決してゴールではないということです。そのために力をあわせて、変革に取り組むこと、そして、デルのメッセージを社外にもっと発信をしていきたいと話しました。


――就任後から1か月間はどんな活動をしていましたか。

郡社長:あっという間でしたね(笑)。20社弱のお客さまに直接ごあいさつをさせていただいたこと、1週間ほどはアジア圏でのミーティングに出席し、これでほとんどが終わってしまいました。

 これからも外に出ていくことにはこだわっていきたいと思います。私は変革するデルを外に発信していく役割もありますから、外にいる時間をなるべく多くしたい。社長としての時間のうち、外にいる時間は、まだ5割には到達していませんが、時間と体力が続く限り増やしていきたい。

 実は私は、「偉い」という表現が嫌いなんです。社長になって、社内からも「偉くなりましたね」と言われるが、「偉くはなっていないよ」と答えています。責任は重くなったのは確かです。しかし、私が偉いから、私が正しいというわけではない。私は20代の時には、生意気にもこんなことを考えていたんですよ。「上司は使うものだと」(笑)。自分が結果を出せば、上司の役に立つのだから、そのためには上司を使う。だからこそ、「偉い」という言葉が嫌いなんですよ。

 私も営業と同行するのは「偉い」からではなく、私の「社長」という肩書を営業に使い倒してもらいたいということなんです。今度は、私が20代の時とは逆の立場で、私をどんどん利用してほしいと社員に言っています。

 

チャレンジの意識を強めていく

――ところで、デル日本法人の課題とはなんでしょうか。

郡社長:英語での表現になりますが「スマートリスク」を取ることにまだ弱さがある点です。デルには、なにかを変えようとするチャレンジの意識がある。しかし、この意識をもっと強めていきたい。

 私の手法でもあるのですが、常に理想像を描くことが大切であり、その理想像に近づけるように努力することがリーダーシップであると考えています。では、デルのマネージャーに「理想像を持っているのか」、「それに向かって進んでいるのか」と聞いた時に、全員が明確に答えることができるのか。私はまだ改善する余地があると思っています。

 言い換えれば、管理はしているが、リードをしていない状況がどこかにあるのではないか、という反省があります。いまの仕事のなかだけで結果を出すというのは管理をしているだけに過ぎません。そうではなく、マネージャーや社員それぞれが、もっと前向きに変革に取り組み、理想像の達成に向けて突き進んでいく姿を求めたい。そして、その理想像というのは、自分にとっても、相手にとってもWin-Winでなくてはならない。


――理想像というのは大きな目標のように感じますが。

郡社長:いえ、ここでいう理想像とはそういうものではないんです。もちろん大きな理想像というものもありますが、理想像は、日常の業務にまで落とし込むことができます。

 私が公共営業部門を担当していた時に、こんなことがありました。デルは、日時で売り上げ集計をし、毎週月曜日にそれを報告する形にしています。しかし、週によっては4割以上が金曜日に受注があるというのが実態でした。報告する立場の者としては、金曜日の午後8時ぐらいまで、毎週ドキドキしているんですよ(笑)。しかも、それを集計する社員も毎週金曜日は夜遅くまで社内にいなくてはならなかった。

 だが、月曜日から金曜日の売り上げを平準化したら、社員は金曜日には早く帰れるようになるわけです。報告者の私もドキドキしなくて済む(笑)。平準化するためになにが必要なのかを考えると、これは単純なことだったんです。デルの営業社員が「今週中に注文書をください」というから、お客さまもがんばって金曜日に注文書を作成してくださる。これを「来週前半にください」と言い換えればいいわけです。こうしたちょっとした発想の転換で社内は変わるのです。

 多くの社員が、同じような発想をしなくてはデルは良くなりませんよ。これは、社内をよくするという発想だけでなく、お客さまが良くなることを考える発想にもつながるからです。デルが目指すソリューションプロバイダーとしての役割は、「PCが何台必要ですか?」ではなく、「お客さまはこうした方がいいですね。そのためにデルはこんなことができます」というように、経営課題の解決にお役に立てるかどうかということなのです。

 社外でも、社内でも同じような発想で、変革に取り組む必要がある。そのために、日ごろから理想像を想定し、その達成を目指さなくてはならないのです。

 社内には、「マネージャーはリードするために一歩、二歩先を常に考えてほしい」ということを言っています。社内にこれを徹底していきたい。そうすれば、デルの変革は、これまで以上に加速すると考えています。

 

ミッドマーケットを主要ターゲットにソリューションを提供

――就任会見では、「ソリューション」、「バリューチェーン」、「eDell(イー・デル)」の3つを今後の重点課題としてあげましたね。

郡社長:まず「ソリューション」という点からお話ししましょう。先ほどからも、デルは、ソリューションプロバイダーを目指すんだ、というお話をしていますが、「デル=ソリューションプロバイダー」という認知はまだまだ低い。これを高めることが私の大きな役割だと肝に銘じています。お客さまに対していかにお役に立つのか、なにがデルが提供できるソリューションなのかということをしっかりとお伝えしたい。

 デルの特徴は、ミッドマーケットのお客さまを主要ターゲットにしている点です。ITベンダーの多くはグローバル規模のお客さまを対象として、すべてのニーズを満たす複雑なシステムを提供してきた。それによってお客さまは長年にわたってこれを使い続けなくてはならない環境となっていたわけです。

 一方でデルは、ミッドマーケットのお客さまに対して、シンプルで、導入が速やかに行われ、活用する際にもトレーニングが不要で、お客さまが自らが管理し、変更が行える、オープンなITの実現を特徴としてきました。

 ただし、これまでは、「ミッドマーケットのお客さまに対して」というメッセージが明確ではなかった反省があります。常にITベンダーに頼らなくてはならず、豪華すぎるITシステムは、ミッドマーケットのお客さまには必要ありません。

 もともとデルのx86サーバーは、機能とシンプルさ、そして価格の魅力で、ミッドマーケットのお客さまに高い評価を得たところから事業がスタートしています。それがスケールアップしてきたのがいまのデルです。デルが長年の実績を持ち、お客さまと直接の関係があり、デルが追求してきたオープン性を最も生かせる分野。それがミッドマーケットであると考えています。

 これは日本だけの取り組みではなく、グローバルでの共通メッセージとなります。ただ、ミッドマーケットといった場合に、国によって状況が少しずつ変わります。インドでは、かなり規模の大きな企業が対象になりますが、日本では、社員数が100~5000人といった規模が主要な対象になるでしょう。もちろん、数十人規模のお客さまにも、数十万人という企業グループにおいても、デルのソリューションのシンプルさが受け入れられているケースは多いといえます。


――Perot Systemsの買収や、Compellent Technologiesの買収を見ると、むしろ大規模ユーザー向けの体制を強化しているように見えますが。

郡社長:米Dellにとって、Fortune 500の企業は重要な顧客であり、それらのユーザーに対してのソリューションを強化しているという部分はあります。

 しかし、そこにおいても、シンプル、オープンというデルの特徴は崩しません。今後、デルの特徴である「シンプル」、「オープン」を市場に訴求する上で、ミッドマーケットでの実績こそが、最も理解していただけるのではないでしょうか。

 大規模ユーザーに対するソリューション強化を継続する一方で、ミッドマーケットへの訴求はさらに積極的に行っていくつもりです。


――日本において、Perot Systemsが持つノウハウが生かされる時期は来ますか。

郡社長:そこはまだ検討中です。Perot Systemsの買収によって、Dellのケーパビリティは大きく変化しました。ソフトウェア開発のエンジニアが1万人規模で増加し、これをDellワールドワイドのケーパビリティとして提供することができます。いまは、Perot Systemsのノウハウを、日本に優先的に導入していくことは考えてはいません。しかし、選択肢のひとつとして常に考えてはいます。

 これまで以上に強めていきたいのは、サーバーを導入するというコンサルティングではなく、お客さまはサーバーによってなにをしたいのかというコンサルティングです。以前は、「サーバーを購入してください」という提案だけだったものが、クラウドサービスによって、サーバーを販売しないという提案も可能になる。こうした幅広い選択肢を整理して提案するためには、ビジネスコンサルティングの体制が必要だと感じています。そのためのコンサルティング体制を増強していく考えで、現在すでに30人ほどの陣容を日本法人のなかに配置しています。これを早急に倍増したいですね。

 デル社内では、スペシャリスト、あるいはドメインチームと呼んでいますが、サーバーのプリセールスチームとは別に、「インテリジェントデータマネジメント」や「ネットワーキング」、「コンピューティング」、「エンドユーザーコンピューティング」という4つの領域において専門チームを配備し、これをエンタープライズ・ソリューション部門として、最適なソリューションを提案できる体制を構築しました。

 デルがソリューションプロバイダーになるということは、デルが成長する可能性がさらに拡大するのと同義語です。日本におけるソリューションサービス市場は、IT市場全体の約4割を占めています。デルのビジネス領域が倍増し、そこでお客さまに貢献できるようになる。これはまさに大きな変化です。

 

クラウドの加速には“辛抱強く”ビジネスできる体質への変革が必要

――クライアント、サーバーの販売がビジネスの主軸であるデルにおいて、クラウド・コンピューティングへの取り組みはどうなっていますか。

郡社長:エンタープライズ・ソリューション部門の設置は、お客さまがITで実現したいものはなにか、求める結果に近づけるためにはどうすればいいのか、という観点から提案することを狙ったものであり、幅広い選択肢のなかからお客さまに最適なものをご提案するための仕掛けでもあります。

 その点で、サーバーを所有しない提案となるクラウド・コンピューティングも選択肢のひとつだといえます。デルはクラウド・コンピューティングサービスとして、モジュラー型のサービスを提供していますまだ始めたばかりですから、実績がどうだという段階ではなく、お客さまに関心を寄せていただいているという状況です。

 一方で、SaaSの形態によって、PC管理ツールを提供するといったサービスも開始しています。クラウド・コンピューティングに関する商談が増え始めていますし、それにあわせて、日本にデータセンターを開設する計画も進めています。日本へのデータセンターの開設は早く進めたいと考えています。

 ただ、クラウド・コンピューティングのビジネスを加速するには、デル自身がもっと辛抱強くビジネスをできる体質に変わらなくてはならない。われわれ自身が「辛抱強くない」と、結局は「サーバー10台でどうでしょうか」という提案になってしまう。お客さまにとって最適の回答がそれでいい場合は構わないが、そうではない商談ならば、われわれが辛抱強く、時間軸を変えたビジネスをしていく必要があります。そうした土壌を作らなくてはならないですね。


――一方で、ソリューションプロバイダーとしての認知度向上はどうやって推し量りますか。

郡社長:定量的なとらえ方としては、年に1回行っているブランドサーベイが基本になります。また、認知度が高まってもビジネスに反映されなくては、正しい認知度向上とはいえませんから、その点も重要な評価基準になります。

 ソリューションプロバイダーとしての認知度向上に比例する形で、われわれが目指す成果や数多くの事例を紹介していきたいですね。お客さまが課題解決の際に、お声がけをいただけるITベンダーの1社に必ずデルが入り、できることならば一番初めにお声がけをいただける1社がデルである、というお客さまの数を増やしていきたい。社内では、「信頼されるITアドバイザーになる」という言葉を使っています。信頼されれば、一番初めにお声がけをいただけるはずですからね。

 

従来のイメージと違う即納モデルも提供中

――2つ目の重点課題とした、「バリューチェーン」についてはどうですか。

郡社長:バリューチェーンは、日本のなかと、ワールドワイドで行う部分との2つがあります。

 ワールドワイドという点では、Dellが全世界に持つサプライチェーンの仕組みを活用できることが強みとなります。日本のお客さまにお届けするところまでを簡素化し、スピードアップを図り、価値を高める取り組みはこれからも続けていきます。

 もちろん、日本という観点でも強みを発揮することができる。すでにファストトラックという仕組みを構築し、翌々日までに製品をお届けできるようにしています。これは従来のデルにはなかった在庫モデルであり、どの在庫をどのぐらい持つのかということを日本法人で考え、日本のお客さまにとってどれだけ有益かといったことを提案していく必要がある。これは日本専用モデルというわけではなく、グローバル共通のベースモデルの上で、日本のニーズに適した仕様で構成する提案になります。日本法人として、ここへの取り組みをより強くしていきたい。

 もちろん、デルはBTOというイメージが強いですし、これをなくすわけではありません。どちらも選べるのは、選択肢を広げることにもつながります。


――デルは、昨年から、BTOでの組み合わせ可能なモデル数を極端に減らしました。これは収益改善には効果があるでしょう。一方で、ユーザーからの反応はどうですか?

郡社長:BTOの数を絞り込んだ取り組みは、うまくいっていると判断しています。絞り込んだのはお客さまからまったく注文がなかったモデルですから、減らしたことでの影響はありません。


――昨年9月時点での発表では、何百万通りあった製品構成のうち、99%以上を削減するというものでしたね。

郡社長:それだけまったく注文がなかったモデルがあったというわけです。計算上、何十もあるコンポーネントを組み合わせていくと、そこに何百万通りの選択肢ができあがります。これらのすべての組み合わせに注文があったわけではありませんから、絞り込んでも問題はありません。


――バリューチェーンの末端には、ビジネスパートナー戦略がありますね。例えば、コンシューマ領域では今後どんな展開を図りますか。

郡社長:現在、デルのコンシューマPCを取り扱っている店舗は、国内に約550店舗あります。コンシューマ市場においては、販売店で購入するユーザーが全体の約8割を占めていますから、当社にとっても量販店は、重要な販売チャネルだと位置づけ、今後も最適な方向を考えていきます。

 いま、コンシューマ市場ではエンドユーザーデバイスが大きく変化し始めています。スマートフォンはそのひとつであり、すでにデルも製品を投入しています。こうした製品を、国内のコンシューマユーザーにいかに届けるかというバリューチェーンの構築もこれからはますます重要になるでしょう。

 

ソーシャルメディアをどう取り込むかが次の課題

――最後にeDellですが、ここではどんな点を強化してきますか。

郡社長:デルは、法人向けeコマースでは世界最大規模の取引量を持っています。eコマースサイトから得られる採算性の高さ、お客さまが24時間いつでも購入していただける仕組みとして、引き続き提供していく姿勢は変わりません。日本でのビジネスを振り返りますと、これまでは大都市圏を中心にビジネスを展開してきました。今後、ソリューションに力を注ぐことを考えると、あまり幅を広すぎない範囲で、必要とされる深さを追求していく必要がある。これを補完する役割としても、eDellが活用できる。

 2つ目には、ソーシャルメディアをいかに取り込むかという点です。デルのIT製品を検討する際に、ソーシャルメディアを切り口にして、有益な情報を得られるコミュニティサイトの提供が重要になると考えています。そして、コミュニティサイトの次のステップとして、システムや、ソリューションに関する情報までを提供できるようにしていきたいと考えています。


――これからのeDELLはソリューション提案のツールにもなると。

郡社長:例えば、ソーシャルディアを使い、デルとユーザー、あるいはユーザー同士が情報交換をしてもらうということも可能でしょう。デルが公開しているコミュニティを通じて、ストレージソリューションの導入成果を知り、そこからデルのサイトで価格を見て導入を決定するということもできる。すでにこうした例は海外では出ています。

 例えば、素粒子物理学の研究を行っているスイスに本拠を置くCERN(欧州原子核研究機構:セルン)では、ここで行われた実験で発生する何億、何十億というデータをDellのHPCで解析しています。その関係もあり、DellがCERNの研究者のためのコミュニティサイトを用意し、全世界172の研究機関から、3000人近い研究者が参加して意見交換を行っています。

 そのコミュニティサイトは、直接的に機器の購入につながるものではないのですが、ここで使われているグリッド環境で、Dellの端末が親和性が高いという情報が共有され、お客さま同士の情報のなかから、Dellの良さを知っていただくということもできるのです。

 日本では先ごろ、EqualLogicユーザーを対象にしたユーザーコミュニティを、世界に先駆けて設置しましたが、ここではすでにコミュニティサイトが開設され、ユーザー同士、あるいはユーザーとデルとの積極的な情報共有が行われています。

 eDellでは、さまざまな形でコミュニティが生まれることなるでしょう。まずはコミュニティサイトからスタートして、それをソリューション提供サイトへと進化させていくことで、ユーザーとの接点の広がりと、密度を高めたいと考えています。


――ところで、冒頭、理想像を掲げることが郡社長の手法だと言われましたね。郡社長が掲げるデルの理想像とはどんなものですか。

郡社長:3年から5年後には、デルが日本市場において、「信頼されるITアドバイザー」と呼ばれるようになりたい。それが理想像です。お客さまの社内でシステム、ソリューション案件が発生した段階で、あるいはなにか課題が発生した段階で、必ず、「デルに相談してみよう」と思っていただけるようになりたい。そのような企業に導くのが私の役割だと考えています。

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