実用期迎えたクライアント仮想化~PART04
技術進歩で性能や使い勝手の課題を解消


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PCと比べて遜色ない操作性~プロトコルや管理機能の技術進化が支える

 手元のプリンターで印刷できない、動画はカクカク、操作開始に面倒な手順が必要──。DaaSやVDIでは、シンクライアントにつきものだったこうした課題が解決されてきた。どう性能が向上したのか、どう使い勝手が改善されたのかを見ていく。

 技術進化によりVDIやDaaSの性能や使い勝手が向上している。以下では(1)レスポンス向上、(2)動画への対応、(3)使い勝手の向上、について見ていく。

(1) レスポンス向上~使用感はPCに肉薄

 VDIやDaaSでの画面表示や操作応答の性能は、通常のPCと遜色ないレベルまで向上している。これを支えるのが、画面転送プロトコルの進化だ。

 現在使われている画面転送プロトコルで主要なものは以下の3つである。Windowsが標準搭載する米マイクロソフトのRDP(Remote Desktop Proto-col)、米シトリックス・システムズのICA(Independent Computing Archi-tecture)、米ヴイエムウェアのPCoIP(PC-over-IP)だ。

 ICAはXenDestkop、PCoIPはVMware View 4といったデスクトップ仮想化ソフトの導入が条件になる。このうちPCoIPは「広帯域での利用に最適化されているため、多数の従業員が同時利用して帯域を確保しにくいオフィス環境では必ずしもパフォーマンスが出ない」(ワイズテクノロジーの松浦 淳日本法人代表)。そのため、オフィス利用ではRDPかICAを使用するのが一般的だ。

 仮想化に関する調査・研究やシステム構築を手がける日本仮想化技術が実験した結果(図4-1)を見ても、性能はPCに肉薄している。実験ではPCとデスクトップ仮想化環境(RDP、ICA)との性能を比較。Wordを使った文書の編集・閲覧や、PowerPointを使ったスライドの編集・閲覧など、オフィスでの一般的な利用方法では、PCと大きな性能差はない。

【図4-1】PCとデスクトップ仮想化(ICAとRDP 7.0)の性能比較。仮想PCのOSはWindows 7

 プロトコルだけに注目すると帯域使用量に顕著な差があり、ICAが圧倒的に低い。特に画像や写真が多いPower Point文書を閲覧・編集するときにはRDPの20分の1以下と、大きな差になった。「ICAを使えば、モバイルやADSLなど細い回線環境下でも比較的軽快に動作する」(日本仮想化技術の宮原 徹代表取締役兼CEO)。

(2) 動画への対応~端末のリソースでデコード

 プロトコルの技術進化により、シンクライアントで課題だった動画などのリッチコンテンツの再生もスムーズになった。これを実現しているのは、再生時にクライアント端末側のリソースを利用してデコードする技術だ。従来はサーバー側でデコードした動画をネットワークを介して転送する方式が主流だったため、回線帯域を十分に確保しなければスムーズに再生できなかった。

 ICAは、クライアント端末側でデコードして再生する仕組みを、XenDesktopの拡張機能群「HDX(High Definition eXperience)」に実装している。

 従来通りサーバー側でデコードする場合でも、ICA独自の画像圧縮技術によりスムーズな動画再生を実現する。圧縮による映像の劣化は「エンドユーザーは圧縮されたことが分からない程度」(日本仮想化技術の宮原氏)に抑えている。

 PCoIPはクライアント端末に専用ハードウェアを搭載することで、3次元CADなどの画面を高速かつ高精細に表示できる。他にも帯域の自動調整機能を持ち、回線の状態に応じて動的に画像や映像の解像度を変更できる。

 一方RDPは、サーバー側のGPUを仮想PCが直接操作できる機能など備えた「RemoteFX」という拡張機能をマイクロソフトが開発している。

 プロトコルではなく、クライアント端末側に導入するソフトの機能でローカルデコードを実現するアプローチを採るのが、ワイズテクノロジーだ。同社のシンクライアント端末向けOSの「WTOS」やWindows XP向けに提供する、端末の遠隔操作支援ソフトウェア群「Wyse TCX」に、この機能を実装。主にRDPとの併用を想定する。

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(記事提供: IT Leaders)
2010/10/19 06:00