企業価値は2億5000万ドル-不況のなか巨額の資金を調達するTwitter
Twitterがベンチャーキャピタルから2000万ドルを資金調達することに成功したという。連日、巨額赤字や大規模レイオフのニュースばかりが伝えられている最近では珍しい景気のよい話だ。時を同じくしてTwitterの訪問者数が「Digg」を上回ったというニュースもあり、Twitterの注目度は高まる一方である。しかし、Twitterが実際にどうやって収益を上げるのかには、多くの関係者やメディアが首をかしげている。
Twitterは、ユーザーが自分用ページに、140字以内の“つぶやき”を書いていくブログの一種で、「マイクロブログ」と呼ばれる新しいコミュニケーションサービスだ。友人を登録(「フォローする」という)して、友人のつぶやきをチェックし、コメントを付けることもできる。ブログよりも手軽でリアルタイム性やSNSの要素が高く、チャットほどの縛りや対面性はない。また、携帯電話からも投稿できる。常時オンラインの時代ならではのサービスである。
Twitterは2006年7月にサービスを開始した。すぐに技術リーダーやWeb 2.0世代の技術に敏感な若者たちがとびつき、いまでは有名セレブが参加していることでも知られる。
時の人であるBarack Obama米大統領もTwitterユーザーで、最もフォローされている人物だ(現時点で約21万6300人)。このほか、Britney Spearsのようなミュージシャンからスポーツ選手まで、多くの有名人がTwitterのページを持っている。たとえば、テニス全豪オープンの準々決勝で敗れたAndy Murray氏はその夜「つぶやき」を残し、ファンがそれに答えた。また、ニューヨーク・ハドソン川での飛行機不時着事件では投稿が急増した。HitWiseは1月20日、Twitterのアクセス数がDiggを上回ったと発表したが、この事件でアクセスが大きく増えたと分析している。
そのTwitterが、評価額2億5000万ドルの新規投資ラウンドを行う条件規定書を複数のベンチャーファンドと交わした、と1月26日付のTechCrunchが伝えた。投資資金は2000万ドルを超える見通しという。その後、TechCrunchは追加情報として、このベンチャーキャピタルはIVPであると伝えた。フォローしたAll Things Digitalも、これを確認している。
Twitterは過去2回の投資ラウンドで計2000万ドルを獲得している。昨年11月には、SNS大手のFacebookから5億ドルの買収提案を受け、これを拒否したといわれている。今回の資金調達の報道で脚光を浴びたTwitterだが、同時に、その企業価値、つまり同社のビジネスモデルに対する疑問が改めて取り上げられている。
Twitterは、Webで提供されるサービスによくあるように、利用も登録も無料だ。All Things Digitalは、「Twitterの収益はゼロに近い。だが、バーンレート(資金消失指標)が非常に低いから資金は必要ないのだ。Twitterは資金調達できるからしているにすぎない」とみている。
Search Engine Journalは、Twitterユーザーの45%が25歳~34歳と年齢層が非常に偏っている点に注目。まだビジネスモデルを見出していないかもしれないが、「若いプロフェッショナルが注目していることや、考えていることが集まる場所、というのが価値ではないか」と述べている。これを踏まえ、検索機能「Twitter Search」の収益化、GoogleやFacebookなど大手との提携があるのか、新しいサービスに拡大して大手と対抗するのか、などが今後の注目ポイントになると分析している。
一方、「TwitterはFacebookに買収されるべき」(All Things Digital)と主張する記事もある。評価額があまりに高額になってしまう前にエグジットプランが必要、というのがその理由だ。
ビジネスプランへの懸念の一方で、Twitterを礼賛する記事も増えている。Twitterに抜かれたDiggの創設者であるKevin Rose氏は、「Twitterで成功する10のポイント」という記事をTechCrunchに寄稿した。Rose氏はTwitterの出資者でもあり、Obama大統領に次いでフォローされている人気Twitterブロガーである。そのRose氏がTwitterの効果的な使い方を伝授するものだ。
また、個人のブログにとどまらない使われ方に注目が集まっている。インドの日刊紙The Hinduのオンライン版は、Twitterがガザ攻撃のプロパガンダとしてイスラエルで効果的に使われたことなどを挙げながら、容易さ、深さ、柔軟性などで宣伝活動の「メインストリームになること間違いなし」と太鼓判を押す。大きな潜在力を持っており、企業もTwitterを効果的に利用する必要があるとしている。
実際、ニュースサイトはTwitterでの配信を始めているし、Obama大統領や英国首相官邸など、為政者が活用する例も出ている。
何かを求めてTwitterに人が集まっていることは明らかだ。これが、いずれ大化けする――というのがTwitterに2億5000万ドルという評価を与えている。この漠然とした期待感は、eBayに買収される前のSkypeに少し似ているように思える。なお、当のTwitterは1月13日、自社ブログで、ビジネスを強化するために人材獲得の作業を開始したことを明らかにしている。